9 問答
「ちょーと騎士団長さん、終わりにするのは少しばかり早いんじゃねーか」
とデランドは釈然としない表情で抗議した。
「これ以上、やったら、二人とも怪我をするからね、エザトリー君は騎士団のエースだし、デランド君には先生をやってもらわないといけないんだからね、ほら、いつまでも寝てないで起きろ」
その掛け声で突っ伏していたエザトリーはザク、ザクという音を立てながら、起き上がり、体についた雪を払った。
「エザトリー君も危なかったね」
「危なくありません、ちゃんと、雪をクッションにして、む、き、ずですよ」
「それも、寸前ではないかね、一歩遅かったら、顔面が陥没していたね」
返す言葉もないようにエザトリーは黙り込んだ。
「それにしても、すごいですね」
そんな兄の様子を見ていられなかったのか、ユニスは天井を指差した先には、
「まるで、蛇みたいに木刀が真剣に絡みついたと思ったら、天井に飛ばしたんですから」
天井には突き刺さった真剣が、その言葉にデランドは笑顔、エザトリーは頬が引き攣り、騎士団長は賑やか顔へと変わった。
「何か変な事を言いましたか?」
「流石だぜ、俺の目に狂いはなかった」
「これは予想以上だね」
「お二方だけで納得しないでくださいよ」
「ユニス!」
ユニスが困惑しているとドンドンと近づいてきたエザトリーは肩をガシッと掴み
「今のが見えたんだな」
「見えましたが、それが何ですか」
「おま、それは、、、」
「エザトリー君落着きたまえ、ユニス君が困惑しているではないか」
興奮しているエザトリーが騎士団長に引き剝がされた。
「ユニス君実はこの勝負、君の資質を確かめるために行った物なんだ」
「そこからは俺が説明する」
デランドが前へと出てきた。
「ご主人様がたかが、2回見ただけで、俺の技を再現してみせた、そんなの普通はありえないんだぜ。直感したご主人様には武芸の才能がある。そこまでの話をそこの二人に話したんだが、いまいち信じてもらえなくてよ。提案したんだ。何も知らないご主人様の前で俺が技を使ってそれを見極める事が出来れば、本物の目を持っている事になるとその結果がこれだ」
ビシッとユニスをデランドが指さす。
「まあ、ユニス君の腕は何故か治癒魔法でもくっつかないことから、私達の知らない原理が働いている事も明らかだし、実際魔力ゼロのユニス君が強くなるにはその異世界の原理が必要だしね、まあ丁度よかったね」
問題は召喚の力が元で強くなるのは人心の恐怖を煽る事になる事だが、魔力がゼロになるという多大なデメリットがあるので相応の地位につけば納得させられるだろう。
「私はやはり反対です」
それまで騎士団長に羽交い締めにされていたエザトリーは振りほどくとユニスのプラプラ揺れている左袖を掴み
「ただでさえ、目指していた未来を失い、親に殺されかけ、左腕だってこんな、これ以上の不幸を背負えって言うんですか
そんな義理は妹にはない、今からでも他国に」
「兄さん」
激昂するエザトリーに対して、ユニスは冷静に
「兄さん、言ってくれましたよね。私には生きる価値があると、正直私自身はいまだに確信を持てません。下手すれば世界を滅亡できる力を持っているこの私に生きる意味があるのか、でも私は兄さんの言った事を嘘にしたくないのですだから」
ユニスは残った右手でエザトリーの手を握った。
「私が自信を得るために頑張る事を許してください」
と深々と頭を下げたのだった。