10 正邪
その後もなんやかんやとかなり、大分、大幅に、エザトリーはごねたがユニスの意思だけは尊重してくれた。
(もう二度と、自分を傷つけないと約束はさせられたが、、、、)
「さて、それではこれからの目標を決めようかね」
と騎士団長はパンっと両手を叩いた。
「今日から一か月後にパラセ国立学校の入校試験が始まる。ユニス君筆記試験については問題ないかね」
「はい、普段から教育は受けていて、国立という事で油断はできませんが、修正は十分に間に合います」
もちろん他の学校も存在するが、(本来ならユニスも極々一般的な貴族学校へ入学するはずだった)この国で一番を目指すためにはまずは6大貴族の誰かは必ず入学するパラセ国立学校の入学は最低条件なのである。フォウンタイン家のご息女として生をうけたユニスとっては勉学に関しては完璧ではあるが、、
「問題は君には今一切の魔力がないという事だね」
「はい、そうですね、悩みの種です」
最初にして最大の問題、ユニスはデランドの契約の維持に莫大な魔力が必要なため基礎である身体強化の魔術すら使用不可となっているのだ。
「だから、世界を混乱させた召喚士の魔力量は異常だったと想像されるわけだね。それはともかく、実地試験は魔力があるという事が大前提なわけだね。今のユニス君はまるで羽を毟られた鳥のようだ」
「こいつを処分して、ユニスを解放させたい所なんですが」
エザトリーが苛立ちを抑えきれないようにデランドを睨みつける。
その魔力にするように空気がピキピキと冷えていく。
「そいつは無理な相談だ、ご主人様と俺は繋がりすぎる程繋がってしまっているんでね。俺が死ねばご主人様も死ぬ逆もしかりだが、運命共同体となってしまっているわけだぜ、そこでだ」
デランドは木刀を本当にきれいに構えた。それだけで冷えた空気が切り裂かれる。
「ご主人様に武芸を教えるぜ。」
「それがデランドが使っていた技術なのね、でも魔力ゼロの私にも出来るでしょうか」
「問題はねーですよ。そもそも、魔力を一切使っていませんからね。」
「「「は」」」
その時三人の気持ちは一つになった
何を言っているんだと
「おい、お前の魔力が我々に感じ取れないのは魔術を身体強化のみに絞り、敵の攻撃が衝突する刹那だけ魔力を消費しているんじゃないのか」
「そんな事してねーよ、この世界に来て初めてだよ、手から水だの氷だの出すビックリ人間に会うのはよー、俺がやったのはあくまで技術、魔力なんてインチキは使ってねーよ、それで」
いかにも馬鹿にしてますという表情から一転、デランドはユニスへ礼儀正しく向き直った。
「安心してください。試験の対人戦闘においてその場の常識の壊れる音が聞こえるでしょうから」
とバカ丁寧にデランドはお辞儀をした。




