11話 1年2組のチート組 -1
くそったれなリアル世界の忙しさで執筆スピードが蟻な状態です。
コマ切れに投稿しても話が分かりづらくなるので、間隔をあけても長め長めに投稿したいと思います。
読んでくださってる読者さま、ご容赦くださいm(__)m
「おはよう、ございま、すっ!」
どすっ!
「ごほっー」
ぐっすり寝てるところへいきなり肘鉄を腹に落とされて、一瞬息が詰まってしまった。
息絶え絶えに目を開けると、そこには。
「よしもう一発いくか、だるまもやる?」
じつに楽しげな凛が肩をぐるぐるまわして、だるまがふいごのように鼻から火を吹いてるのが見えて、僕は寝たままながらあわてて両手を振りあげた。
「ちょ、待て待て! おまえは僕の幼なじみだよね!?」
「あら、起きた。そーね、あんたん家に顔パスで入れるくらいには幼なじみね」
「幼なじみだったらさ、「こら、起きなさい! べ、べつにあんたが遅刻しようが関係ないけど、あ、あんたのママに言われたから仕方なくだからね!」みたいなお約束みたいなのあるだろ!?」
「あんた、寝起き直後でよくそんな妄想を振りまわせるわね……」
そんなの知るか。こいつの、幼なじみフェチが見たら卒倒してしまいそうな、幼なじみじゃないっぷり、なんとかならないかな……
とか考えてると、顔に服を投げつけられる。
「これ、あんたの体操服。あんたのママに渡されたわ」
「……〜〜、だからなんなの、この幼なじみの持ち腐れ感は……!」
「それより!」
ラノベとリアルとの落差になげいてると、鼻先を凛に指でぐに、と押された。
「あんた、この期に及んで行かないつもりね!」
「まあ、そうだったけど……おまえが迎えにきてる時点で諦めてるよ」
「ウソつきなさい、じゃあなんでベッドから出ないのよ、早く出なさいっ!」
凛が毛布をひっぺがそうとしてくる、「だるまも手伝って!」と2人?がかりで……けどそれはマズい!
「ま、待て待て、分かった分かったから手を離して!」
「そんな虚言にダマされないわよ、よいしょぉっ!」
「うわぁっ!」
僕の抵抗もむなしく毛布がはがされた……けど……
「ふっふーん、あたしとだるまのツープラトンに勝てるなんておも……う……」
凛の、目をキラリとさせて勝ちほこった笑顔……が、瞬間冷凍する。
そりゃ当たり前だ。
――僕は、はだかで寝てたんだから。
「っきゃああぁぁぁっ!」
僕だけが好き勝手にできるはずの僕の部屋で、凛の叫び声が響きわたった――
※※
「やあ、おはよう! ……て、鹿屋くん、どうしたんだいそのほっぺ」
凛と通学路を歩いてると、後ろから声をかけてきたのはうちのクラスの学級副委員長である伊佐芹果だった。
超絶に爽やかなあいさつの直後に、僕の頬にくっきりとついた赤いもみじ型を見て、りりしく整えられた眉をきゅっと寄せた。
スポーツマンらしいショートカットに男子も見劣りしない長身と爽やかで凛々しい顔立ちの伊佐さんは、誰彼の区別なく話しかけてくるさっぱりとした性格だ――副委員長の役目を果たしてるとき以外は――。だから、ぼっちの僕にも偏見を持たずに話しかけてきたりする。
基本的に僕の苦手なタイプではあるけど、今日のいまこの時にかぎってだけは別で、僕がついさっき被害を受けた凛の暴挙を訴えようとすると、「ちょっと聞いてよ、いさりか!」と凛に先を越されてしまった。……のだけど。
ちなみに、いさりかは伊佐さんのアダ名で、凛と友だちだ。
「このバカね、あたしが朝起こしにいって毛布ひっぺはがしたら、こいつハダカで寝てやがったのよ! バカと思わない!? なんにも着てなかったのよ、そんなのありえなくない!?」
「あ、このバカ!」
後先考えずに口走る凛の口をあわてて押さえたけど……遅かった。
伊佐さんが、爽やかにニコリと笑った。
「なるほど。つまり2人は、鹿屋くんの家へ行って、部屋にも気兼ねなく入っていけるくらい仲が良い、ということだね」
「ふぐ……」
「このバカ……」
自分の失言がレッドカードクラスなことに気がついて、みるみる顔を赤くする凛にため息をつく。
「伊佐さん、今のなかったことにしといてくれる?」
「ふぐふぐ!」
口を押さえられたまま凛もコクコクとうなずく。
「あと、コイツにも説明したけど、裸で寝てたのはたまたまだからね」
昨日は、魔法を唱えられる限界を確認するために、魔法が空撃ちするまで使ってみたんだ――ステータスでMPが見れたらラクなのに――。おかげで上限を知ることはできたけど、エンジン焼けしたのか体からイヤな火照りがとれなくなって、仕方なくハダカで寝ることにしたんだ。それが、まさかほっぺたにこんな1発をくらうなんて……
とか心の中で愚痴ってると、伊佐さんが「なんだ、そんなこと!」と爽やかに笑った。
「大丈夫さ! 私もいつもハダカで寝てるしね!」
『…………』
「ハダカで寝ると開放感があって、とても気持ちいいんだ! 他にも……」
と、裸で寝ることのメリットを嬉しそうに語りはじめる伊佐さん。
「……おい、止めろよ。おまえの友だちでしょ……?」
「え、あたし? い、いさりか……ハダカで寝てるの?」
「うん、子どもの頃からずっとね!」
「お、女のコなんだから、あんまりおなか冷やしちゃダメだよ?」
「大丈夫、私のおなかは腹筋で鍛えられてるからね! そうだ、最近やっと割れてきたんだ、見てみる?」
『わぁぁっ!』
こんな公衆の面前で服をめくろうとするなぁ! なに考えてんだ、このスポーツ少女は!
かくして、僕と凛が伊佐さんをあわてて取りおさえるというシーンが公衆の面前で繰り広げられたわけだ。
「……君らはなにを考えてるんだ」
凛と2人がかりで伊佐さんの腹見せ欲求をなんとか押さえ込んでると、またしても背後から声をかけられた。
その声だけでそれがだれかすぐに分かったので、僕は伊佐さんからすぐさま離れると、
「じゃあ僕は先に行くから、また後で」
「待て鹿屋、お前はつくづく失礼なやつだな」
あからさまに不服そうな声。ああくそ、コイツもつくづくめんどくさいヤツだなぁ!
「僕なんぞになにかご用ですか? 学級委員長」
嫌味もこめてバカ丁寧な言葉遣いで振り返ると、そこにいたのは国府だった。くっそー、一番会いたくないヤツに会ってしまった。
国府がしかめっ面になる。
「別に用はない。ただ、人が話しかけてるのに無視するのが失礼だと言ってるんだ」
「あ、なんかしゃべってた? 気がつかなかったよ」
「ウソをつけ!」
「ちょっとあなたたち、会って早々にうるさいですわよ」
バカ国府と一触即発になりかけたタイミングで、絵に描いたようなお嬢さま口調で割りこんできたのは、同じクラスの霧島あうらだった。
まるで染めてるみたいな栗色の長い髪にウェーブをかけて、スレンダーで美人な霧島さんは、東之京先輩と同じタイプの人種だ。つまり、この人も財閥の娘だったりする。ただし、財閥といっても霧島財閥は経済規模で見ると東之京(財閥)に比べたら巨像の前の蟻、みたいなもので、まるで相手にならない。
ただ、その霧島さんがわざわざうちの学園を選んだ理由はそこにあるそうで、これは始業式の自己紹介のときに言ってたんだけど、「霧島一族の優位性を証明するため」だそうだ。
カンタンに言うと、『規模は違えど東之京財閥よりも霧島財閥のほうが優れてる、それを証明するために敵陣へ乗り込んできた――てとこだ。
まあ、ムスメ対決を制したイコール財閥対決を制した、なんてことになるわけないし、東之京先輩が生徒会長の座に就いた2年前の時点で、そんな対決は開戦する前から決してるんだけどね。本人が納得できないなら、ガンバれ! て感じだけど、メンドくさいのはその訳わかんない自信が、僕らクラスメートにも向けられてるところだ。
なにかにつけ「自分は庶民と違う」アピールをしてくるのだ。班分けをしても「この班はわたくしにふさわしくない」、授業で当てられたら「そんな問題、わたくしが答えるまでもない」。学級委員長を決めるときも、たぶんなりたがるだろうとクラス全員が霧島さんらを推薦したら、「学級委員長はクラスの一番、ですわよね。わたくしはそんなランキングの外にいる特別な存在ですのよ、浅ましい順位争いに参加する気はありませんわ」。
扱いにくいというレベルを超えてるよね。それでたとえば成績学年1位とかならまだ納得のしようもあるけど、前の試験じゃ6位という甲乙の判断つけがたい結果だからなぁ。……そういえば、貼り出された成績順位表を堂々と折りたたんで捨てるという事件を起こしたっけ。
ちなみに、霧島さんが学級委員長を蹴ったあとに、「では、僕しかいないでしょう」と手を挙げたのがここにいるバカ国府だ。
コイツはコイツで、始業式の自己紹介で「持ち前の自己向上心で……」とか言ってたけど、蓋を開けてみれば自己向上心どころか自己顕示欲むき出しなヤツだ。
学級委員長を買って出たのも、先生へアピールしたいがためただその一点で、僕が国府をバカ扱いするのはまさにそこなんだ。
自己顕示欲をちゃんとオブラートに包んだら自己向上心に見せかけられるのに、言葉や行動でボロボロとボロを出す。「これをちゃんと運んでもらわないと、俺が先生に言われるから」「へえ、そんな良いことしたのか。俺のクラスの評価も上がるね!」など、例をあげるともうキリがない。
クラスのみんながこいつと話すのも、『偽善も善の一つ』ていうその一言に尽きるだろうね。
ちなみに、霧島さんが国府と一緒に登校してるのをよく見かけるけど、それは国府が霧島さんに取り入ろうとしてるだけのこと。まあ、国府らしい浅はかな考えだし、霧島さんにはそこまでするほどの権力はないと思うけどね。
「まったく、わたくしのクラスにいる以上はそれ相応の振る舞いをしてほしいですわ」
「まったくその通りだ。おい聞いているのか鹿屋」
「国府、おまえにも言ってるのですわよ」
「え、俺にもですか!?」
ずいぶんとくだらないコントをしてくれるなぁ。ていうか、どんだけ腰低いんだよバカ国府は。ただの1高校生が財閥にへりくだったところで、インセンティブ与えるほど相手もヒマじゃないだろ。
くそ、僕は独りで学校を行き帰りするのが好きなのに、なんでこんな大人数に巻き込まれてんだ。
みんなががやがやしてるうちに先に学校行ってしまえ、なんて考えたその瞬間――
「あ!」
ある重大なことに気がついて、僕はおもわず大きな声を出してしまった。そして、これもおもわず目の前にいるクラスメートたちを見渡してしまった。
僕のそんな行動に全員が驚き、黙って。
そして、僕の視線の意味にそれぞれが気づいてく。
「……もしかして、全員、そうなのか?」
国府がつぶやいた言葉に、だれも答えない。僕も答えない。
けど、答えないのが答えだった。
つまり、ここにいる5人があの一件でチートスキルを手に入れた人間で、同じクラスということは同じチームになってしまうわけだ。
マジですか……。
凛と伊佐さんはまだ良いよ。なんでバカ国府と霧島さんなんだ。チームを組みたくないヤツと、チームを組むのに難のあるヤツがいるなんて、最悪だ。
――あ、この場合は僕自身もそうか。
そのことを、バカ国府のあからさまにこちらを非難してくる視線が語ってる。
霧島さんにいたっては、「最悪ですわ。わたくしにふさわしくないチーム編成ですわ」と自分のことをまるで棚にあげたことを堂々と発言してる。
……あれ?
「5人?」
僕はまたもおもわずつぶやく。
裏体育祭のホームページには、各クラスにチートスキル保有者が例外なく6人いる、と書いてた。てことは、うちのクラスにはあと1人いるはずだけど。もう学校に行ってる、とか?
「……あれ? あそこにいるの、開聞さんじゃない?」
僕たちの背後を背伸びして覗きこんだ凛につられて僕らも振り返ると、そこには。
「…………」
通りのけっこう先にある電柱の陰に、うちのクラスの開聞帆が隠れるように立っていた。撲らの視線が集まると、目にかぶさるくらいに長い前髪に隠れた顔が、「ひっ」と声をあげた。
……今の反応だけでお気づきだと思うけど。
開聞さんは、うちのクラスにおける、いわゆるいじめられっ子だ。……いや、ニュアンスがちょっと違うかな。だれもいじめてはしてない。ただし、無視はしてる。だれにも興味を持たれてないから、いつも孤立してる。
――こいつは、たぶんだれも友達にならない。
始業式の自己紹介で、隣の席のやつにも聞こえないくらいの声でしゃべってるのを見て、たぶんクラスの全員が思ったんじゃないかな。
そして、その翌日にはそのことが現実になった。
だれも話しかけない。周りの席のやつらが思い思いに人間関係を再構築してくなか、1人でぽつんと席に座ったまま、話しかけられるのを怖がってるみたいにずっとうつむいて。
周りからしたら、意味もなく怖がられるんだから、そりゃ気分も悪くなるよ。んで、「話しかけられたくないんならそうしますよー」という暗黙の了解的なものができあがって、それが今日にまで至るわけだ。
――言っとくけど。
僕と開聞さんを同じにしないでね。
僕は、僕が周りに興味なくて、周りをテキトーにあしらったんだ。なにが楽しくて楽しくもない話にあわせなくちゃいけないんだよ。
だから、話しかけてきたやつも早々に離れてったけど、それでいい。僕がそう望んだんだから。
開聞さんは、周りとのコミュニケーションを怖がってるだけ。ぼっちになってるのとぼっちになってしまってるのとを同じにされると、こっちがはた迷惑だ。
「おはよう、開聞さん!」
「やあ開聞さん、こっちに来なよ。私たちと一緒に行こう」
凛や伊佐さんが開聞さんへ声をかけるなか――さすがコミュの達人――、僕はこの時点でもううんざりしてた。
この健全な2人はまあいいよ。それを除く僕を入れた4人はなに?
他人に興味のないコミュ障――僕。
自分だけが特別と思ってるコミュ障――霧島さん。
自分だけが良ければそれで良いコミュ障――バカ国府。
他人が怖いコミュ障――開聞さん。
…………。
終わってんじゃん!
チーム戦て言われてんのに、6人中4人がコミュ障!?
しかも、僕とたぶん開聞さんはまだいいよ、コミュ障を自覚してるもん。霧島さんはコミュ障の自覚がない。バカ国府にいたっては自分を健全だと思ってる。
…………。
詰んでんじゃん!
なにこれ、こんなチームに僕のチートスキルで貢献しろって?
……いや違う!
そもそもこれはなんの話なんだよ、裏体育祭も含めて!
異世界行って変わったチートスキルで世界を席巻したり、リアル世界の知識駆使して知能チートしたりするのが異世界転移じゃないの? ラノベでそう習いましたけど! せっかくチートスキル手に入れたのに、なんで異世界無双どころかリアル世界で学校の行事に巻き込まれて、したくもない団体行事で組みたくもない連中に僕のチートスキルを使わなきゃいけないの!?
…………帰ろ。




