17場 青空
悠輝が静かに口を開く。
「……俺、 あなたを利用しようとしてた」
視線を落とす。
「探偵事務所を使って、いつか復讐できるかもしれないって。」
シオンは低く笑った。
「知ってたさ」
悠輝が顔を上げる。
「探偵だぜ?」
少し笑う。
「社員の素性くらい調べる」
悠輝は呆然とする。
シオンは真っ直ぐ悠輝を見つめた。
「悠輝」
静かな声。
「人は、 憎しみだけじゃ生きていけない。」
空を見上げる。
雨は止み始めていた。
「この広い空の下——」
「一人ぼっちだと思っていても、 誰かがお前を見てる。」
「お前と同じ痛みを抱えた人間が、 必ずいる」
そして、 優しく笑った。
「まずは…… 俺を思い出せ。」
そう言って、 悠輝の頭をくしゃりと撫でる。
「うわっ」
悠輝が顔をしかめた。
「せっかくセットしたのに!」
シオンが笑う。
「私もずっと1人だと思ってた。」
悠輝は目を見開く。
瑠奈は続ける。
「でも、違った。」
シオンを見る。
「ちゃんと見つけてくれる人がいた。」
シオンが続ける。
「小学生の頃、母をなくして沈みがちな俺を
父は田舎に連れて行った。そこで出会ったんだ。同じ境遇の、女の子に。」
瑠奈を見つめる。
「俺はその娘に歌を教えた。
次の日も会う約束をしていたのに、急に帰る事になって。でも、ずっとその子の事が気になっていた。…まさか出会えるなんて。」
静かな沈黙。
やがて瑠奈が、あの歌を口ずさむ
悠輝が小さく笑う
シオンもふっと笑う
そして自然に、三人の歌声が重なっていく
君は一人じゃない
僕も一緒だ
風が吹き抜ける
シオンは2人の頭を、ポンと軽く叩いた。
「…子供か」
「ちょっ、髪」
悠輝が抗議する。
瑠奈が笑う。
「先輩。俺、探偵続けていいですか?」
「お前は、相棒だろ」
シオンは空を見上げた。
厚い雲は消え、青空が広がっている。
「…雨、上がったな。」
見上げた空には——
どこまでも青い空が、 広がっていた——。




