5,群馬県
2025年4月10日。
間田宗一(23歳)はとある飲み会に参加中であった。
会社の同僚や上司との飲み会だ。
最初は盛り上がりにかけるが、お酒が入ると皆テンションが2段階も3段階も上がる。
特に上司の方は大盛り上がり、同僚のやつは酒を飲まされて、ハラスメントになるギリギリと言ったところだろう。
女性にも積極的にウザ絡みをしているようだった。
間田はと言うと元々酒に強いという体でもないため控えめにチマチマ飲むのがいいと判断している。
上司の近くにいないのが幸いだ。
「間田さん、お酒苦手なんですか?」
「あ、はい、そんなに強くなかったので。
このぐらいがちょうどいいんです。
酔ったら何しちゃうか分かりませんし。」
話しかけてくれたのは先輩の女性、佐藤美奈だ。
「酔っても、私が介抱してあげるよ。」
間田の方を見て佐藤はニコッと笑う。
恋愛経験がない間田にもこれは分かる。
誘いだった。酔って何しても構わないという合図。
いわゆるチャンスだったのだ。
佐藤の長い髪はストレートで居酒屋のオレンジ色の証明に照らされて唯一白く光っている。
その光景は綺麗だった。
彼女の胸にある大きな2つのものに目がいかなければ、その光景に釘付けだったであろう。
しかし、男であれば逆らえぬ本能。
彼女の胸を直視してしまい、下半身が反応してしまうのが分かる。
佐藤はおそらくそれに気がついているだろう。
やり手だ。
いい雰囲気になりつつあり、このままいけば結ばれていたかもしれない。
結ばれなくとも幸せな夜を過ごせたことは確実と言っていいだろう。
しかし、佐藤がトイレに向かった時、酔っ払っていた上司もトイレに向かった。
その時は全く、不思議に思わなかったのだ。
上司が狙ってトイレに行ったことなんて考えもしないで。
酒が回ったことにより、利尿作用が働いたらしい。
間田もトイレに行くことにした。
しかし、トイレに着くなり、違和感がある。
女性の声が響いているのだ。
それも佐藤の声がした。
それと男の声が…女子トイレなのに。
扉を少し開けて中を見た。
上司が佐藤のことを襲っている。
上司は下半身を露出して、佐藤の方も無理やり脱がされたのだろう。
今にも始まる寸前と言ったところだ。
佐藤はこちらに気がついた。
涙目でこちらに訴えかけてくる。
「助けてくれ。」と。
だが、それができなかった。
怖くなってしまったのだ。
上司に逆らうことになるし、そんな状況で突っ込んで面倒事になるのが嫌だと感じてしまった。
そのまま扉を閉めてしまう。
用を足して自分の席につく。
もう何も飲む気も、食べる気も起きなくなってしまった。
さっきの行動の後悔、彼女が戻ってきた時、隣に座るという恐怖。
そんなことを考えていると彼女は戻ってきた。
上司もだ。
1試合が終わったらしい。
彼女の顔はものすごく不機嫌だった。
そのまま、間田の隣に座る。
佐藤は間田の方を向かない。話そうともしない。
あの時、助けていれば。
誰も来なかったのが奇跡だろう。
見つかれば処分を受ける。
いや、1人は行った…それなのに助けなかった。
幸せな夜が訪れるはずが、気まずくて、最悪な夜に変わってしまうのだった。
飲み会が終わり、間田は1人でショボショボ帰ることになる。
あの後、トイレはどうなっていたのだろうか。
佐藤は惨めにも、したくない相手にブツを入れられ、そのまま中で…
なんて考えてしまうのも嫌だし、そんな考えをしながら少し興奮を覚えてしまっている自分がさらに嫌だった。
全く充実しないまま自身のアパートに着く。
通路を通り、自分の家の扉の前まで来た。
鍵を差し込み、回そうとしたその時、隣の方から視線を感じることに気がつく。
振り向くと男が1人立っている。
真顔で立ち尽くす1人の男。
間田をジッと見つめて動かない。
パチッ…
パチッ…
瞬きをする。
男との距離がグンッと縮まってしまう。
間田の頭は理解が追いつかない。
瞬きを2回した間に近ずいたのか?
パチッ…
パチッ…
パチッ…
男はさらに近ずく。
家の中に入るということも忘れ、その場から走って逃げようとしたその時…
振り返ったはずなのに、その男が振り返った方向にいるのだ。
確認のためにもう一度先程見ていた方向を見る。
やはり男はそこに立っている。
唇をプルプルと痙攣させ、笑顔を作り出そうとしているような不気味さがあった。
「う、う、うわああああああ!」
叫び声を上げ、走り出そうとした。
パチッ…
パチッ…
瞬きをしてしまう。
男の顔が自身の顔の目の前にまで近ずく。
恐怖でさらに叫び声が増す。
その男の顔は狂気の笑みを纏い、間田を追い込んだ。
間田の眼球は飛び出し、そのままこと切れてしまった。
その後、隣人が騒ぎを聞きつけ、遺体を発見。
警察に通報するに至った。




