とあるオカルト雑誌の記事
怪奇! レコードショップ黎音堂の謎
その店でレコードを買った者は呪われる。
諸君は、そんな噂のあったレコードショップを知っているだろうか。
本誌を愛読するような熱心なオカルトファンなら、ピンとくるかもしれない。
そう。レコードショップ黎音堂だ。
高円寺の一角に佇むこの店は、東京都二十三区内の中でも本誌がAランクに位置付ける危険な心霊スポットである。
もともとは1988年に開業した個人経営のレコードショップだった。初代の店主は松下佳純氏。70年代から80年代にかけての洋楽ロックを中心に扱い、全盛期は多くのロックファンで賑わっていたという。
だが、20XX年に二代目店主・瀬崎康郎氏が跡を継ぐと様相が変わる。
レコードを探している最中に、不気味な音を聴いた。
レコードを買った客が失踪した。
あるいはおかしくなった。
そんな噂が流れるようになったのだ。
真偽のほどはさだかではない。だが、実際に瀬崎氏は20XX年、原因不明の失踪を遂げている。
店主を失った黎音堂は閉店。現在では外観を残すのみとなった。
今でもオカルトファンたちの間では、
「誰もいないはずの店内から音楽が聞こえてくる」
「音に誘われ中に入ってしまうと、二度と出られない」
といった逸話がまことしやかに囁かれている。
黎音堂は本当に呪われた場所なのだろうか?
瀬崎氏は、なぜ失踪してしまったのだろうか?
本誌編集部では、瀬崎氏が失踪の直前に若い女性バイトを雇っていたという情報を掴んでいる。その女性にたどり着くことができれば謎の解明にも近づくと思われるが、名前も行方も、現時点でわかっていることは何ひとつない。
もしこの記事を読んでいる読者諸君に心当たりのある方がいたら、ぜひ編集部まで情報をお寄せいただきたい。編集部はこれからも、熱心な読者のために様々なオカルト情報をお届けしていく所存だ。
なお、本記事を読んだからといって、くれぐれも興味本位で黎音堂を訪れないように。あそこは本当に危険な場所だ。瀬崎氏が失踪しているのは事実なのだから。その原因が未だにわからない以上――そして、今でも怪しい噂の絶えない場所である以上――件の場所に近づくのは賢明な行為とは言えないだろう。
月刊オカルトミステリー 20XX年●月号 記/●●●●




