第2次地中海海戦4
アメリカ合衆国海軍第34任務部隊司令官ヒューイット中将が見つめる中、大日本帝国海軍航空隊の彗星艦上爆撃機隊は次々と急降下爆撃を開始した。その急降下爆撃は恐ろしい速さであり、更にその機体が投下した爆弾は途轍もなく巨大だった。今回の1943年4月24日の海戦は大日本帝国海軍とアメリカ合衆国海軍にとっては、1942年1月20日のトラック島沖海戦以来であった。その海戦で大日本帝国海軍は自らの航空兵力に自信を持ち、アメリカ合衆国海軍は航空兵力の拡充に全力をあげる事になった。
そんな中で日米両海軍は新型機を投入する事に成功し、今回の戦いで激突した。だがその機体性能差は隔絶していた。ヒューイット司令官が見つめる投下された爆弾は、巨大過ぎた。必死に各艦は対空戦を行っていたが高角砲や対空砲の密度は、大日本帝国海軍に比べて甘かった。その為に彗星艦上爆撃機隊は数機が被弾し、黒煙をあげただけで撃墜する事は出来なかった。
それに比べて彗星艦上爆撃機隊が投下した1トン爆弾は次々と命中し、第34任務部隊の外縁部に位置する駆逐艦や軽巡洋艦は轟沈していった。何せ高空から投下された1トン爆弾である。重力を味方にし、その破壊力は圧倒的だった。爆炎が収まると駆逐艦は消滅していた。
航空兵力を重視する大日本帝国海軍だけあり空母に対しても攻撃が行われ、正規空母エセックス級や軽空母インディペンデンス級にも次々と1トン爆弾が命中した。正規空母エセックス級ヨークタウン・イントレピッド、軽空母インディペンデンス級インディペンデンス・プリンストンが彗星艦上爆撃機隊の急降下爆撃により轟沈した。その攻撃にヒューイット司令官は呆気に取られた。急降下爆撃の命中率は非常に高く、次々と艦艇が轟沈していったのである。
命中せずに至近弾となった物もあったが1トン爆弾の急降下爆撃である為に、大破に近い被害を受けていた。そしてそれは超弩級戦艦アイオワ級ウィスコンシンが轟沈するという衝撃を与えていた。ウィスコンシンには8発もの1トン爆弾が命中し、竜骨はその破壊力に耐え切れず巨大な船体は大爆発を起こしたのである。そして彗星艦上爆撃機隊の攻撃が終わると同時に、高度を下げて雷撃態勢に入った天山艦上攻撃機隊が雷撃を敢行した。
アメリカ合衆国海軍第34任務部隊は艦隊の両側から雷撃を受ける事になり、ヒューイット司令官は回避行動を取るように命じようとしたがそれは各艦長に任せる事にした。
そして各艦長は必死の回避行動をとったが、なんと言っても雷撃本数が多過ぎた。その為に回避する事が出来ずに、次々と被雷する艦艇が続出した。しかも練度不足により衝突事故まで発生していた。そうこうしている間に大日本帝国海軍航空隊は攻撃を終えて引き揚げていった。
被害状況を確認させるヒューイット司令官だが、ようやく出撃させた攻撃隊からの連絡が無いことに気付いた。参謀達に確認させたが、攻撃開始の連絡が入ってから一切通信が途絶していた。その後から完全に通信が無いのは信じ難い事に、攻撃隊が全滅している証でもあった。
ヒューイット司令官は絶望感に包まれながら、作戦中止を命令し撤退を決断した。




