第2次地中海海戦3
日米双方共に敵艦隊を発見したタイミングは、同じであった。大日本帝国海軍連合艦隊第4機動艦隊から放たれた、九八式艦上偵察機はアメリカ合衆国海軍大西洋艦隊第34任務部隊を捕捉すると即座にその位置を連絡した。その連絡は第4機動艦隊の前方に展開する零式艦上早期警戒機を中継して、第4機動艦隊旗艦正規空母赤城に伝えられた。それを聞いた第4機動艦隊司令長官角田覚治中将は、即座に全空母に対して発艦命令を出した。
だがそのタイミングでアメリカ合衆国海軍第34任務部隊が放った、F4Uコルセアを零式艦上早期警戒機が捕捉したのである。角田司令長官はアメリカ合衆国海軍もこれで気付いたと判断し、通信を阻止する為に艦隊上空で直掩任務に就いていたジェット戦闘機烈風に対して撃墜命令を出した。それを受けて即座に撃墜に向かったジェット戦闘機烈風だが、撃墜するより先にF4Uコルセアは通信を終えてしまったのである。
そして九八式艦上偵察機からはアメリカ合衆国海軍第34任務部隊の各空母から、続々と発艦作業が開始されたと連絡が入った。これを聞いた角田司令長官は、同じタイミングで攻撃を行う事になってしまうと判断した。だがアメリカ合衆国海軍は何としても撃退しなければならない為に、蒸気カタパルトによる発艦は続けられた。
『同じタイミングで艦載機を発艦させる事になった日米両海軍だが、攻撃を開始する事になったのは大日本帝国海軍連合艦隊第4艦隊の艦載機であった。総数450機の内艦隊直掩用のジェット戦闘機烈風やその他機体を除く、合計300機がアメリカ合衆国海軍第34任務部隊に襲い掛かった。
アメリカ合衆国海軍第34任務部隊も艦隊直掩用のF6Fヘルキャットは、果敢にも迎撃を開始したがそれらは完全に陣風艦上戦闘機に阻止される事になった。高度8500メートルの高空から飛来した大日本帝国海軍航空隊に対して、必死に上昇を続けるF6Fヘルキャット隊であったが陣風艦上戦闘機隊は降下を開始すると、各機は両翼に装備する50キロ噴進弾14発を斉射したのである。
ただのロケット弾だと思っていたF6Fヘルキャット隊は射線から機体を逸らしただけで、すれ違おうとした。だが大日本帝国海軍航空隊の放ったロケット弾はすれ違いざまの真横で次々と爆発したのである。昨年のアルプス山脈攻防戦で実戦投入された近接信管装備の噴進弾が、大量生産体制により全機に配備する事が可能になった成果だった。これによりF6Fヘルキャット隊は編隊の80パーセントを一気に失うという悲劇に見舞われ、編隊は大混乱に陥ってしまった。何せ飛行隊長や小隊長も大多数が撃墜され、指揮系統もマヒ状態となった。
その混乱状態のF6Fヘルキャット隊に陣風艦上戦闘機隊は情け容赦無く接近すると、25ミリ機関砲2門や13ミリ機銃6門を駆使して次々と叩き落としていったのである。技術力の差と練度の差が如実に表れた悲劇であった。艦隊上空の制空権を一瞬にして失ったアメリカ合衆国海軍第34任務部隊は、茫然自失となった。ここまで一方的に撃墜されるとは思っていなかったからである。
第34任務部隊旗艦正規空母エセックスの艦橋でそれを見ていたヒューイット司令官は、全艦に対空戦を命令した。だがそこに大日本帝国海軍航空隊の彗星艦上爆擊機隊による、急降下爆撃が始まったのである。』
小森菜子著
『帝国の聖戦』より一部抜粋




