シーソーゲーム3
山本総理兼海相に尋ねられた小澤連合艦隊司令長官は、イタリア王国救援に派遣する海軍兵力について説明を始めた。現状イタリア王国には正規空母陸奥と正規空母大鷹級3隻を配備する第6機動艦隊が派遣されており、更には海上保安庁も新編した第10護衛隊群を派遣しイタリア王国の脆弱な海軍兵力に成り代わり、イタリア王国沿岸部の地中海を安定させていた。
そこに第4機動艦隊と第5機動艦隊を更に派遣すると、小澤司令長官は語ったのである。第4機動艦隊は正規空母赤城級2隻と正規空母蒼龍級2隻が配備、第5機動艦隊は正規空母長門と正規空母大鷹級3隻を配備する艦隊であった。これにより大日本帝国海軍連合艦隊は現有兵力の半分に及ぶ機動艦隊を、イタリア王国救援為に派遣する事になったのである。
その点を小澤連合艦隊司令長官は考慮し、何ら太平洋の防衛体制に支障は無い事を説明し始めた。太平洋に残る第1機動艦隊〜第3機動艦隊の戦力だけでもアメリカ合衆国海軍太平洋艦隊を圧倒し、更には各地に展開する航空隊もその戦力は強大だと語った。
更には開戦直後に策定した戦時艦船急速建造計画での艦艇も、正規空母雲龍級と装甲空母大鳳級以外は建造が完了しており、その雲龍級と大鳳級も建造ペースが順調で予定よりも早く竣工出来るとも語った。これにより大日本帝国海軍連合艦隊は史上類をみない規模の戦力を誇る事になり、アメリカ合衆国との戦いを遂行するのに十分な戦力になると説明した。
それを聞いた閣僚達は安堵していたが小澤連合艦隊司令長官は、大日本帝国が行う事はアメリカ合衆国はその更に上回る規模で戦力増強を行っている、と断言した。第一次世界大戦を上回る規模の総力戦であり、その軍拡ペースは大日本帝国史上初のものだがそれ以上にアメリカ合衆国は軍拡を行っているのである。
その為にも次なるアメリカ合衆国との戦いは、大日本帝国の優位性を維持する為にも重要であり、負ける訳にはいかない戦いになるのである。その事を考えるとイタリア王国への援軍派遣は、戦力の分散シーソーゲームのようなものになる為に避けたかったが、ヨーロッパ大陸で唯一残る重要な同盟国である為に支援は必要不可欠だった。
更には拡大した連合国各国に軍事援助を行い戦闘能力を向上させる必要もあり、大日本帝国は一瞬たりとも休む暇無く対応していかなければならなかった。
全ては強大なアメリカ合衆国と、ヨーロッパを事実上制圧したフランス共和国・オランダ王国に勝利する為であった。




