シーソーゲーム
大日本帝国によるAL作戦の成功は太平洋の制海権を確固たるものにし、アメリカ合衆国を追い込む事になった。何せ太平洋の拠点は事実上消滅したのである。パールハーバーは大日本帝国による空襲で孤立している為に、アメリカ合衆国は本土西海岸沿岸部に押し込められる事になり、戦力的にもまだまだ充実していない為に太平洋では完全に守勢に回る事になっていた。だが大西洋側でも活躍は低調であり、アメリカ合衆国は持ち前の経済力を活かした戦時体制突入の大規模軍拡を最優先事項にする事にした。アメリカ合衆国にしてみれば経済力的に世界最大規模という自負があり、将来的な勝利を確信していた。
だが現時点でアメリカ合衆国が劣勢なのは代え難い事実であり、大日本帝国は次なる行動に移る事にした。それはイタリア王国救援であった。ヨーロッパ方面ではアメリカ合衆国の軍事援助を受けたフランス共和国とオランダ王国の侵攻が成功しており、ヨーロッパで残るはイタリア王国だけとなっていた。
1942年11月5日にフランス共和国とオランダ王国はイタリア王国侵攻を本格的に開始、大日本帝国がAL作戦を成功させた1943年3月20日の時点ではイタリア王国が防衛線として重視していた、アルプス山脈が突破されるのは時間の問題であった。大日本帝国海軍航空隊の第10・第11航空艦隊と大日本帝国陸軍航空隊の第3・第4飛行師団が、イタリア王国に駐留しフランス共和国・オランダ王国の侵攻に対して空襲を行っていたが問題は『補給』と『数』であった。
アメリカ合衆国によるトーチ作戦の成功によりアメリカ合衆国がイタリア王国への補給兵站線を妨害する事になってから大日本帝国は駐留する航空隊を任務別に振り分ける事にした。陸軍航空隊は引き続きイタリア王国北部に展開し、フランス陸軍航空隊の空襲を阻止する。海軍航空隊はナポリ近郊に展開し、アメリカ合衆国による通商破壊戦を阻止する事になった。そして更に連合艦隊の第6機動艦隊も地中海に向けて派遣した。第6機動艦隊は正規空母陸奥と正規空母大鷹級3隻を配備する艦隊であり、イタリア王国沿岸部の防衛には最適だった。
しかも海上保安庁も新編した第10護衛隊群をイタリア王国に派遣。イタリア王国の脆弱な海軍兵力に成り代わり、イタリア王国沿岸部の地中海を安定させる事になった。だがそれも完璧とまではいかなかった。アメリカ合衆国は新型潜水艦と軽空母を中心とした、小規模ながらも『ヒットエンドラン』を重視した通商破壊戦を展開したのである。
これにより如何な大日本帝国といえども優位を保つ事は難しく、『補給』という面に於いてより一層の困難を極める事になった。なまじ総数3200機という膨大な機数を派遣している事が、イタリア王国本土での補給を更に難しくしていたのである。補給兵站線を維持する為の護衛の補給兵站線を強化する必要が出て来た事が、困難さを引き上げていた。
その大日本帝国の苦慮をよそに、フランス共和国とオランダ王国はヨーロッパ全域を確保した事による経済力と人口を背景に、軍拡を続け大日本帝国の予想よりも多くの軍をイタリア王国侵攻に振り向けていたのである。その為に幾ら空襲で撃退しても絶え間なく押し寄せる侵攻に、アルプス山脈防衛線は決壊寸前だった。




