緊急閣議6
山本総理兼海相が招集した緊急閣議の議題は、タイ王国・オーストリア・ニュージーランド・トルコ・イランの連合国への加盟承認は当然ながら、更に踏み込んで軍事援助についてもであった。山本総理兼海相と東條陸相は緊急閣議に先立ち、会談を行っていた。その中で連合国参加の国が増える事は、大日本帝国としても非常に有り難いという点で一致していたのである。何せ大日本帝国は選抜徴兵制により熟練工や家督相続者は徴兵対象外にしていたおり、その為に男女同権で徴兵を行っていたがそもそもの数を抑制していた。そんな状況でアメリカ合衆国とフランス・オランダとの戦争を行う為に、参戦国が増えるのは兵力増強という点では非常に有意義であった。
中華民国への軍事援助がその好例であり、大量の装備を提供した事により中華民国軍は飛躍的に強化されていたのである。その為に大日本帝国が立案中の次期作戦は中華民国との共同作戦として計画されており、大日本帝国の負担軽減に役立っていた。そうした事から山本総理兼海相と東條陸相は戦争遂行の為にも軍事援助が効果的だと判断し、緊急閣議での提案は事実上山本総理兼海相と東條陸相の共同という事になっていた。
山本総理兼海相と東條陸相はこの軍事援助提案に、賀屋大蔵大臣がどのような反応をするのか半ば他人事のように楽しみにしていた。これまでの大規模な軍事援助提案に賀屋大蔵大臣は大日本帝国財政を預かる者として、必死な表情をしながら対応してきた。時に諦めた表情をしていたが財政責任者として、必死であるのは山本総理兼海相と東條陸相も理解出来ている為に感謝はしていた。そんな中で再びの大規模軍事援助である為に、どんな反応をするか期待していたが今回の賀屋大蔵大臣は表情を変えること無く、淡々と頷き予算編成を行うと語っただけだった。
期待外れの反応に山本総理兼海相と東條陸相は顔を見合わせ、東條陸相が代表し賀屋大蔵大臣に財政負担としては大丈夫なのか尋ねた。それに対して賀屋大蔵大臣は帝国改革法案による一連の構造改革で試算では税収の大幅拡大が見込め、中東の油田開発でも有望な油田が見つかり開発が順調で、大日本帝国の財政に何ら影響は出ないと断言したのである。ただ中華民国が四カ国首脳会談で資源の等価交換を表明したように、今回の国々にも同じような提案をしてみるのは各種軍需企業の生産量拡大に役立つのではないか、と付け加えた。
それに岸商工大臣は賛同し、資源供給先が増えるのは戦争遂行の為には重要だと力説した。それは確かに意義あるとして、山本総理兼海相や他の閣僚達も賛同した。そして連合国加盟と軍事援助を閣議決定し、帝国議会に送付される事になったのである。