日英伊中四カ国首脳会談
1942年10月1日、大日本帝国帝都東京帝国ホテルにて、日英伊中四カ国首脳会談が開催された。まさに史上初の出来事であった。山本総理兼海相、チャーチル首相、ムッソリーニ統領、蒋介石国家主席の4人が一堂に会する様は圧巻であった。帝国ホテル周辺は戦時中という事もあり、東條陸相が直々に指揮を取りながら陸軍部隊・憲兵隊が中心になり、警視庁と特別高等警察まで動員して警備にあたっていた。その規模は大規模であり陸軍は戦車師団も投入し、国鉄主要駅をはじめとして大通りの要所要所に配備していたのである。日中首脳会談よりも更に大規模な警備であるが、何せ4カ国もの首脳が集まるのだ。開催国としては当然の警備であり、東京都民は暫くの不自由を我慢するしかなかった。
『大日本帝国で開催された日英伊中四カ国首脳会談は、歴史的なものになった。私はこの執筆活動を行うにあたり国立国会図書館に赴き、当時の各新聞一面を見る事にした。そこには山本総理兼海相、チャーチル首相、ムッソリーニ統領、蒋介石国家主席の4人が並んでの写真が一面を飾っていたのである。まさに歴史的な写真だった。この首脳会談により四カ国は大日本帝国を中心に一致団結して、戦争を戦い抜く事になったのである。ここからは首脳会談の詳細について説明する。
日英伊中四カ国首脳会談は開催国である山本総理兼海相の挨拶から始まった。この首脳会談はアメリカ合衆国・フランス・オランダに断固とした決意で立ち向かう事を表明し、一瞬の連合国として一致団結する事が重要だと訴えた。そこで現在中華民国とは大日本帝国しか軍事同盟を結んでいないが、その中華民国を大日本帝国・大英帝国・イタリア王国の三国同盟に加える事を提案した。その提案にチャーチル首相は即座に賛成し、ムッソリーニ統領も今回の来日に際して国王陛下と議会から汎ゆる条約締結の全権委任を受けていると語り中華民国を加えた軍事同盟に賛成した。3カ国が賛成した事に蒋介石国家主席は感謝の言葉を述べ、中華民国は全力で同盟国に協力すると語った。4カ国の中で中華民国のみが共和国で蒋介石国家主席がそのまま国家元首であった。その為に大日本帝国・大英帝国・イタリア王国の立憲君主国に比して、条約締結の権限を蒋介石国家主席が有していたからこそ即断で可能な返答であったのである。
軍事同盟締結に目処が付くと、山本総理兼海相は今回の首脳会談に向けて構想してきた憲章を提示した。[太平洋憲章]と名付けられた憲章は4 カ国がこの戦争に於いて、アメリカ合衆国・フランス・オランダに断固とした決意で戦う事を明確にしていたものとなっていた。そして戦後の平和な世界に向けての相互の原則と希望、そしてアメリカ合衆国・フランス・オランダが敗北した後に行う政策についても明記されていたのである。山本総理兼海相は大西洋憲章の基本的な目的は、アメリカ合衆国・フランス・オランダの侵略を認めない事と、戦後の平和に於ける世界秩序に焦点を当てる事だと語ったのである。太平洋憲章について詳しく記すと、以下のようになる。
太平洋憲章
第1項・アメリカ合衆国、フランス、オランダによる侵略を断固として許さず、力による現状変更を認めない。
第2項・全ての国家と国民ひいてはその民族人種に於ける優位性を断固として認めず、人種差別を人類共通認識として禁止する。
第3項・全ての国家と国民は自由と平等を保障される。
第4項・戦後に於いては自由貿易を基本とし国際貿易に関しては、勝敗敗者問わず平等な条件で市場開放が行われる。
第5項・全ての国家と国民はよりよい経済・社会状況を確保する事が認められ、それを実現する為に世界的に協力する。
第6項・第4項と第5項を実現する為に、全ての国家は海洋の自由を確保し保障する。
第7項・恒久平和を追求する為に戦後は国際連盟に代わる新しい国際機関を創設し、全ての国家がそれに加盟する。
以上が太平洋憲章の内容であった。これを提示されたチャーチル首相・ムッソリーニ統領・蒋介石国家主席は、この太平洋憲章に全面的に賛成した。そして山本総理兼海相はこの太平洋憲章を基礎として[連合国共同宣言]を提示した。この連合国共同宣言により大日本帝国・大英帝国・イタリア王国・中華民国の四カ国を連合国の主要国として、今後の戦争に於ける中心的役割りを担う事にした。宣言文では、[生命、自由、独立、信教の自由を守り、自国のみならず他国においても人権と正義を守るためには、敵に対する完全な勝利が不可欠であり、世界を服従させようとする野蛮で残忍な勢力との共通の闘争に現在従事している。]とし[完全なる勝利]とは、アメリカ合衆国・フランス・オランダの[無条件降伏]と定義した。この宣言では、署名国が太平洋憲章を守る事、アメリカ合衆国・フランス・オランダとの戦いに各国が持てる全ての物的・人的資源を投入する事、アメリカ合衆国・フランス・オランダと個別の和平交渉を行わないことが宣言されたのである。これにもチャーチル首相・ムッソリーニ統領・蒋介石国家主席は全面的に賛成し、首脳会談終了後に調印する事が決定されたのである。』
小森菜子著
『帝國の聖戦回顧録』より抜粋




