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ギルドマスターの長い話 5

この小説の投稿を始めて1年が経ちました。今までこの小説を読んでくださった皆さん、ありがとうございます! 投稿1年を期にタイトルを変更しました。今後も頑張っていくので、どうぞよろしくお願いします!

「災害級」のドラゴンとか「マザー級」の蟹とか、てっきり強力な魔物を倒した件だと思ったのに予想外!


飛行型ヒュドラ? 確かに倒したけど、っていうかあれ倒したのノワールなんだけど、どういう事? 説明を求む!



「君も知っていると思うが、飛行型ヒュドラが持つ『飛空石』は」


「アウトォオオーーー!!」


思わず叫んでしまった!


こいつなんて事を! 事故! そう、これは事故なんです! 決して悪気は……ん? 


今、飛「空」石と言ったのか? 飛「行」ではなくて?

ならば、天空の何とか、とは無関係!

セーフ! セーフですよ皆さん!


「アウトとは?」


怪訝そうな顔のギルマス。こいつ、紛らわしい事言いやがって。


「ちょっと聞き間違えたみたい。ごめんね? 続けて?」


「……そうかね。飛空石は『飛空船』を建造する為には不可欠の物なのだが、その飛空石を王に献上する事で、シオリス領は5年間の税の減免を受ける事ができた。こうして領主は窮地を脱したのだ」


めでたし、めでたし。みたいな。

また、きわどい言葉があったけど……「飛空船」は大丈夫か。

えーと、話が終わったような……えっ?


「終わり? 意味がわからないんだけど」


「どの部分だろうか」


「全部だけど」


その説明で意味がわかるやつなんていねーよ。


「まず、『飛空石』とは?」


「ふむ、飛空石は今説明した通り『飛空船』の建造に必要な物だが、希少で滅多に出回らない。金を出せば買える、という物ではないのだ。王国は飛空船を2隻所有していて、3隻目が建造途中で飛空石が足りなくて未完成のままだったそうだ」


その「飛空石」とやらが飛行型ヒュドラの中にあった、という事自体知らなかったけど、それはともかく、


「領主が献上したおかげで建造が進むから、王が喜んだという話?」


「王が喜んだのは間違いないが、それが評価された訳ではない」


違うんかーい。


「じゃあ何?」


「飛行型ヒュドラは討伐が難しい魔物だ。ある意味ドラゴンより厄介だと言える」


「……そうだっけ?」


ノワールが倒したところは見ていないけど、わりとすぐに戻ってきたような?

倒すのに時間は掛かっていない筈。


「なぜ厄介なのかというと、ドラゴンはダメージを負ってもそう簡単に逃げたりはしないが、飛行型ヒュドラはダメージを負って命の危険を感じると逃げてしまう。それも体内の飛空石の力で、上級貴族の魔石獣でも追いつけない程の速度でだ」


「一旦逃げ始めると、倒すどころか追跡すら困難な魔物を倒さなければ得られない魔石を手に入れた力。それが評価されたのだ」


「手に入れた力? ……購買力?」


「そうではない。飛行型ヒュドラを倒せるだけの力、という意味だ」


呆れたような顔で訂正してくるが、呆れるのはこっちの方だぞ?


「倒したのノワールなんだけど。まさか、領主は王に自分の手柄だと言ったの?」


「いや、領主は『騎士団が壊滅して立て直す為の時間と金が必要なので、税の減免をしてほしい』と願い出ただけだ」


「それで何で「力」が評価されるの?」


逆じゃね?


「基本的に飛空石は飛行型ヒュドラを倒さなければ手に入らない。そして飛行型ヒュドラは今説明したように、強力かつ厄介な魔物だ。少なくとも平民のハンターに倒せるものではない。倒せるのは騎士か魔法使いだ」


「つまり、シオリスの領主が飛空石を入手できたのは『シオリスに飛行型ヒュドラを倒せる力があるから』だと思われたのだ」


「えぇー……」


「少なくとも王はそう思った。長年、王の期待に応えられなかったシオリスの領主が騎士団壊滅の報告などしたら、その場で粛清されてもおかしくなかったのだが、飛空石を献上した事で、『討伐が難しい飛行型ヒュドラを倒せるだけの力が残っているのなら、まだシオリスには見所がある。もう少し猶予を与えてもいい』と判断された」


「5年間の税の減免というのは、『少なくとも5年は粛清はしない』という王の意思を示している。そして『王に納税しない』とその分魔力を節約できる。浮いた魔力と本来王に納めるべき税の分を領地立て直しの為に使えるという訳だ。領民の負担も軽減されるし、良い事尽くめだな」


なる……ほど。土地の使用料(税金)自体は減らないが「納税代行手数料」分が減るのか。しかし、


「王は領主にその『力』について、少しも問い質さなかったの?」


疑問に思わないのか? それ。


「王にその点について問われた領主は、『シオリスには新しい力が育っている』と答えたそうだ」


新しい力?


「それ、私達の事? 私達は領主の部下でも何でもないんだけど!」


「部下とは言っていない。『新しい力』だ。君達はこれまでのシオリス領の戦力ではなかった。そして君が成長途中なのは間違いないのだから、別に嘘ではない」


「おい」


「王宮には『看破』のスキルを持つ者がいるから嘘をついてもすぐに見破られるが、逆に嘘を言わなければ疑われる事もない」


何じゃそら。そんなんありか!? 

「嘘を言わない」じゃなくて「本当の事を言ってない」だろうが!

汚いさすが大人汚い……


「勝手に戦力として当てにされても困るんだけど!」


「領主が君に依頼したのは『開拓』の仕事だ。『戦力として当てにしている』とは言われていないだろう?」


「それは……そうだけど」


抗議してみたが、全くの無駄だった。ぐぬぬ。


いまいち納得がいかないが……確かに「飛空石」に関しては売った物をどう使おうとそれは買い手の自由であるのだから、俺がどうこう言う訳にはいかない。

しかし、ギルマスの話にはいくつも引っ掛かる点があるな。



「飛行型と陸上型では買取価格が白金貨10枚も違っていたけど、この差額ってもしかして飛空石の値段なの?」


「そうだ」


スゲーな、飛空石。石1つで10億か。


「私はその飛空石を見てないんだけど、ちなみに色は何色?」


「青色だ」


ギリギリを攻めていくスタイル……! いや、偶然の一致だ。そうに違いない。


「風属性だから青なのだが……何か不審な点でもあったかね?」


「いえ全く」


風属性なら仕方ないね。



「他にもいろいろ質問があるのだけど、聞いてもいいかな?」


「いいとも。私に答えられる事であれば何でも答えよう」


なぜか底冷えのするような目で俺を見るギルマス。

それが「何でも答えよう」という人間の顔か?

まぁいい、では答えてもらおうじゃないか。教えて? ギルマス!



「『礎』についてなんだけど、礎の力というのは『浄化』と『魔力注入』だけ?」


「神授の魔導具」などという大層な代物なのに、できる事がそれだけなのか?

他にも何かありそうなんだけど。


「『世界の再構築』だ。私は礎の力について知る立場にはないし、『本当の事』を知っているのはたぶん王と領主だけだと思うが、推測でよければ話す事はできる。聞きたいかね?」


「うーむ……一応聞かせてもらおうかな」


「礎には雨を降らせたり気温を下げてひどい干ばつが起きないようにしたり、嵐を弱めたりといった、ある程度天候を変えて自然に干渉する力があるようだ」


「気象制御!?」


「あぁ。この国ではあまりひどい自然災害は起きないが、他の国では起きている。王や領主が明言した事は無いのだが、恐らくそういう力があるのだろう」


「明言しない理由は?」


「さて?」


知らんのかい。

気象制御はいかにも「神の力」という感じで凄いけど、自分達が気候を安定させていると言えば権威を高められるだろうに、なぜ言わないんだろうな?


「他には領内の危険な魔物の存在を感知できるという力があるらしい。君がマザー級の大蟹を倒した時、私は偶然領主の元にいたのだが、領主は『セシリアのおかげで魔力を節約する事ができた』と随分喜んでいた」


ふぅん……別に領主の為にやった事ではないが……節約? おかしいな?


「その言い方だと、『魔力があれば大蟹を倒せる』と言っているように聞こえるんだけど、気のせいかな? 騎士団はまだ形になっていないんじゃなかった?」


「恐らく倒せたのではないか? 騎士の力ではなく、『礎の力』もしくは何らかの魔法具によって」


おい、それは聞き捨てならねー話だぞ?


「礎にそんな力が? だったら……」


「勿論、これも推測に過ぎない。だが、仮にも礎は「神の力」の一部なのだから、単に魔物の存在を感知するだけではなく、その魔物を倒す力があってもおかしくはあるまい?」


「じゃあ何で使わなかった? それに、ドラゴンの時も……」


「礎の力を使う為には魔力が必要なのだ。そして今は魔力が不足しているという話は知っているだろう? ドラゴンの時? 魔力不足で使えなかったか、あるいは『使ったが魔力不足で十分には力を発揮できなかった』のかもしれない」


これは参考に……なるのか?


「貴族は子供の頃から他人に自らの内面を簡単に悟られるな、という教育を受けている。それゆえ表情や態度からその心情を窺い知る事は容易ではない」


いきなり何を話しだしているんだ、こいつ?


「急に何の話?」


「だが、領主とは友人としてそれなりに長い付き合いがあるので、多少はその内面を知る事ができると思っている。そんな私からは、領主が『君達』を全く恐れていないように見える」


「……ほほぅ」


「ドラゴン、そして何より『黒のゴーレム』は貴族にとっては『死』そのものと言っていい程の恐るべき存在の筈なのに、なぜなのか。その理由は?」


「君達と敵対する気が無いからか? それとも貴族として取り込むつもりだから? だが、最も簡単な理由は君達よりも強い力、すなわち『神の力』を行使できるから、ではないだろうか?」


「……魔力さえあればいつでも倒せると言いたいの? それは『警告』なのか? それとも……」


「ただの推測だ。そう言っただろう? 君が開拓事業に協力して、そのうえ魔物の討伐を続ければ、その分貴族達には魔力の余裕ができるだろう。将来は魔力不足が解消されているかもしれない。その時どうなるか、君は考えているかね?」


「魔力が不足している今は君に『配慮』する貴族達も、その不足が解消された時はどうなるか……配慮し続けるだろうか?」


「今度は脅迫か?」


「強いて言えば、忠告だ」


「用済み」になる可能性か? それ自体は一向に構わないが、魔力が充実した時の領主サイドの「戦力」は気になるな。

 

それにしても、言いたい事はわからなくもないが……

両手を重ねた上に顎を載せて話すいつものポーズをしているのでギルマスの表情はよく見えないが、こいつ、大丈夫か?

ギルマスが言っていい内容とも思えないのだが。推測? 本当に?



「領主の力は礎の力によっている、という解釈で合っているの?」


「間違いではないだろうな」


「その力、領主の礎は王の礎の一部だという話しだったけど、それはつまり、領主の礎は王の礎の下位に当たるという意味?」


「あぁ。領主からそういう話を聞いた事がある」


「おかしくない? それで何でアルビオンの領主は反逆を? 勝ち目なんかないんじゃないの?」


「『何で』が反逆の理由という意味なら答えは知らない。私が知らないだけで貴族達は知っているのかもしれないが。だが手段という意味なら、知っている。それは『別の』神の力だ」


「別?」


「人では神の力には到底抗えない。神の力に対抗できるのは、それもまた神の力だ。『ユニークスキル』君も持っているだろう? アルビオンの領主は神より与えられたそのユニークスキルをもって王に反逆を企てたのだ」


ユニークスキル……スキルポイント。



スキルポイント 8



勿論、土魔法のレベルアップに使うつもりだが、それは後でやるとして。


「スキルポイント」はポイントを使って魔法やスキルのレベルを上げる、という力だけど……そうだよな? 反逆に使える力、なんてものは……もし、何か他の力があったとしてもそれはわからない。ステータスにはマニュアルなんてついてないからな。



「そのユニークスキルがどんなものだったのか、わかっているの?」


「看破のスキルで判明したその力は『神に願いを叶えてもらえる』というものだった」


「……はぁあああああ? 何じゃそらぁあああ!?」

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