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外の世界は

厄介者扱い! ひどいと思います。



さて、外の様子についてなのだが、2号機を通して並列思考を使って見ていたけど、ちょっと見過ごせないものがあるんですけど。


カフェスペースでシルヴィアとビアンカがかき氷を食べている。

それはいいのだが、なぜかヘレンも一緒に食べている。ヘレンよ、それは当然自分の金なんだろうな? 

お前に奢ってやるなんて一言も言ってないぞ?


「聞いているのかしら?」


「もちろん聞いている」


俺にどうしろというのか。

俺よりはるかに金を持っているやつに奢るなんて絶対にありえない。絶対にだ!


「あなたはどうするつもりなのかしら?」


それは相手次第なのでは?


「こちらからどうこうできる事ではないような……というか、まるでエクレールと契約を結んだ事が悪いみたいな言い草だけど、ジュディだってスクロールを持ってきて、それは契約しろという事なんでしょう? それを厄介者などと!」


ひどいと思います!


「悪いとは言っていないわ。それに従魔契約を結ぶ事は必要な事だったわ。流れ的に」


流れって。そういえば、


「『従魔達にも話を聞いてもらう』って言ってたけど、なぜ? 戦争に利用されるかもしれないという話を聞かせる為?」


「それはそれほど重要な話ではないわ」


「いや超重要でしょう!?」


「あなたにとってはそうでしょうけど、従魔達にとっては重要な話ではない筈よ。従魔達に聞いて欲しい事はまだ話していないわ」


まだ話していない事があるのか! いつまで続くんだ?


「その話を先にしておきましょうか。あなた達の主が人の理不尽な憎悪に晒されるかもしれないという話よ」


シュバルツ達の方を見ながら話すジュディ。何か怖い事言い出した!


「どういう事?」


「一つは、今回のドラゴン討伐の失敗で多くの死者が出たのだけど、その事で同じドラゴンを従魔に持ったあなたに対して恨みを持つ者が出てくる可能性があるという事よ」


「全く意味が分からないんですけど? 全然関係ないでしょう!?」


同じじゃないだろ! 人違い、いやドラゴン違いだ!


「関係は無いけれど、ドラゴンに大切な、愛する家族を殺されてしまった人達が、同じ『ドラゴン』だという理由で、あなた達に対して怒りや恨みの感情をぶつける可能性があるわ。家族を失った人達が皆冷静で理性的な行動を取るとは限らないのよ」


「それもう逆恨みですらなく、ただの八つ当たりじゃん!?」


「そうよ。そういう貴族がいるかもしれないと覚えておいて欲しいの。今後あなたは貴族達と接する可能性が高いから注意してね」


「注意って、どうしろと」


「従魔達は主の指示が無い限り、人を襲わないという事になっているけど」


シュバルツ達に向かって話しかけているが、何? その言い方?


「もし貴族から理不尽な理由で攻撃されても、この主は『殺してしまうかもしれない』という理由で攻撃の指示を出せないかもしれないわ。その時は、構わないからその貴族に反撃をすればいい。セシリアの指示を待つのではなく自分達で判断するの」


「おい、勝手に決めるな」


「別にこれは決定や指図といったものではないわ。ただの助言よ」


それのどこが「ただの助言」なんだよ。ん?


「一つ? 他にもあるの?」


「もう一つはほとんど同じ事だけど、そのドラゴン戦であなたがいなかったという事に恨みを持つ者が現れる可能性もあるわ。どうしてその場にいてくれなかったのかと、あなたがいれば自分の家族は死なずに済んだのかもしれないと」


「それはもはや言いがかりというものでしょう!? 何で文句を言われないといけないのさ!? 私は騎士団の一員ではないし、貴族の仲間ですらないのに!」


「その通りだけど、さっきも言ったでしょう? 皆が冷静で理性的とは限らないと。あなたは人生において一度も遭遇した事はないの? そういう理屈の通らない、理不尽な言動や行動をする人に」


ないとは言わないが。

ジュディ自身がそういう目にあった事があるんじゃないのか? 貴族や、あるいはハンター相手に。


「そのドラゴン戦が起きていた時に、私はこのシオリスにはいなかった筈だけど」


「でも、私達が討伐した時にはいたでしょう? 同じドラゴンで、しかもあなたがいてくれたおかげで1人も死者が出なかったわ。それも、いずれ貴族達が知る事になるわ」


「えー……」


何て言えばいいんだ、それは。


「貴族を敵に回すような事をしていいの?」


「よくはないけれど、あなたは貴族の『嫌がらせ』程度でも死んでしまいかねないわ。相手は『魔法使い』なのよ? 魔法使いは1人でも恐るべき力を持つ存在なの。あなたはその辺りの認識が薄いようだけど」


「えー……」


関わらなければいいというだけの事なのに、それができないというのか。

いや、ジュディがそう言っているというだけで、それはまだ『確実に起こる未来』ではない筈だ。


「一応覚えておきます……」


「では話を戻すわね。ドラゴンと従魔の契約を結ぶ、というのは避けられない事だったわ。あなたにもそれは分かっているでしょう?」


「ドラゴン自身が仲間になる事を望んでいるのに、それを拒絶すれば何が起きるか分からないし、実際には拒絶できたとも思えないわ。ならば契約を結んでドラゴンとの信頼関係を構築する事が最善でしょう?」


「その結果としてあなたが重要視、あるいは危険視されるのは仕方のない事だわ。その事をあなたが理解しているのか、そして今後、どうするつもりなのかを教えて欲しいのよ」


「理解というか、知る事はできたというべきか」


でも、ジュディの話だけで判断するというのも危険だ。言っている事が全て本当で正しい事だと、どうやって確認すればいい?

たぶん唯一の正解は「貴族に聞く」だろう。

貴族の話なのだから、貴族に聞く事が最も信頼性が高いと言える。


だが、関わりたくないのに自分から貴族の世界に首を突っ込むとか冗談ではない。

そうなると、現状でできる事は限られている。


「さっきも言ったように相手次第かな。実際にはまだ何も起きていないし、最初から構えるというか、喧嘩腰になる事もないし。だからといって全て相手の言いなりになる、という事でも無いでしょう?」


「平民の場合はそんな選択肢自体、存在しないのだけど、あなたの場合はそれも『あり』なのかもしれないわね」


うっすらと笑うジュディ。もしかして、それは褒めているのか?


「憶測や仮定、可能性の話が多く含まれているから、事前に行動の方針を決めるのは難しいというのは理解できるわ。あなたの場合、行き当たりばったりでよく考えないで行動しているように見える事もあるのだけど」


コメントしない。しないぞ。


「こういうのはどうだろう? もう面倒だから逃げてしまう、というのは?」


「どこへ逃げるというの? 国の外かしら? 国の外にも他の国があって、そこにも貴族はいるのよ?」


「大勢いるの?」


「正確な数は分からないわ。貴族は自分達の事を何でも話してくれるという訳ではないし、外国なら尚更よ。でも大勢いるのでしょうね。この国はどちらかというと小さい方なのよ。周辺にはより大きな国があるし、当然貴族の数もより多い、らしいわ」


「らしいんだ」


「私が直接数えたり、調べた訳ではないから」


「なるほど」




「話は後一つよ」


「まだあるの?」


「あなたは子供達の母親の遺体を保管しているけど、それは何の為?」


「本当に何でも知っているな……」


隠密さんは仕事熱心だ。何でも見て報告しているのか。


「何でも、ではないわ。知っている事だけよ」


そのセリフは! ……いやセーフ。微妙に違うし。

そもそもここは異世界。関係ないね。


「それなら子供達が母親の死を理解できるようになるまで、お別れができる日まで保管している、という事も知っているのでは?」


「ええ。私はあなたの事を知っているからそれを『理解』する事ができるわ。でもあなたを知らない人達があなたが治癒魔法使いだと知った場合、こう理解するかもしれないわ。『彼女は蘇生魔法が可能なのでは?』あるいは『蘇生魔法を試す為に遺体を確保しているのでは?』と」


「蘇生魔法?」


「ええ、死者を蘇らせる魔法、治癒魔法だけが可能な奇跡」


「蘇生なんてできないんですけど」


試そうと思った事すらないぞ?


「できないという事をどうやって証明するの? 奇跡を期待する人達に、どうやってそれを理解させるの?」


「蘇生なんてできないし、そんなつもりで遺体を保管しているのではない!」


「ふぁあ? あぁあ、うあぁああ」


しまった、つい大声を! クレアが驚いて泣いてしまった!


「ごめんね、くーちゃん」


何とかあやす。

ゆっくり揺すっていたらすぐに泣き止んでくれた。偉いぞ、クレア。

泣き止んだクレアの顔を見る。


「……そんなつもりではなかった」


「『そんなつもりではなかった』という事を、全ての人が理解して受け入れてくれるかしら? 誰もが理性的で、あなたの事を知っている訳ではないのよ」


「遺体を保管していると知られなければいいだけでは?」


「でもマーヴィンのハンターギルドの人間は知っているわ。そして、あなたの事が少しでも知られれば、あなたのこれまでの行動についても調べられる事になるわ。こことは違って、マーヴィンのハンターギルドにはあなたについて口を噤む理由も必要も無いのよ?」


「聞かれれば、あなたが女性の遺体を持っている事を話すでしょうね」


「……それも、まだ何か起きている訳ではないという話の一部でしょう?」


「そうね」



「最後にもう一つ、話をしましょう」


「何かな?」


「あなたは方角というものを知っているかしら?」


また急に話が飛んだ。


「当然知っている。東西南北の事でしょう?」


「そうね。太陽が東から昇って西へ沈む。知っているのね?」


「もちろん」


何でそんな話を?


「では昼頃に太陽がある方角は?」


「南でしょう?」


「『あなたの世界』ではそうなのかもしれないけど、この世界では『北』よ」


「は?」


「北よ」


「はぁあ!?」


「あなたは前に町の中で北へ行こうとして、南へ行って迷子になった事があるでしょう? 覚えていないの?」


そういえばそういう事があった。

太陽の位置を見て方角を確認した筈なのに、間違えて迷った。


「覚えている」


「それはあなたが太陽のある方角を南だと思ったからでしょう? 実際は北なのに」


「昔、世界の反対側から来たという人がいて、その人があなたと同じ間違いをした事があったの。その人の世界では太陽は昼頃南の方角にあるそうよ」


ここは「南半球」なのか? 迂闊だった。

地球でも南半球へ行けば反対になるのに、思い込みで理解しているつもりになっていた。


「人は『知らない』という自覚があれば、それを知ろうとする事もあるでしょうけど、知っているつもりだとその事に疑問を持ったり、改めて調べようとはしないでしょうね。だって『知っている』のだから」


「そして自分が『知らない』という事に気が付かないと、調べようとすらしないでしょうね。『知らない』事自体に気付いていないのだから」


耳が痛いぜ。

だとすると、分かっているつもりで実際には分かっていない事がたくさんある、という可能性はあるな。今更だがここは異世界なんだ。


……本当に、今更だな。

俺はまだ本当の意味で分かってはいなかった。

貴重な助言だ。


「教えてくれてありがとう」


ジュディにはいろいろと教えてもらっているな。どこまで正しいのかはともかく。


「どういたしまして」


「ジュディにはいつも世話になっているから、何かお礼をしたい気持ちがあるよ」


「そう? なら一ついいかしら?」


「何かな?」


「あなた、リザードをたくさん狩ったでしょう? この辺りではリザードはあまり出回らなくて、食べる機会が中々無いのよ」


隠密さんは本当に仕事熱心だねー。何か差し入れした方がいいかな?


「分かった。今度リザード料理を用意してジュディを招待するよ」


「楽しみだわ」


にっこりと笑うジュディ。そうだ、あと少し、


「ジュディ」


「何かしら」


「あと一つ、いや二つ教えて欲しい事がある」


「何かしら」


「このシオリスには何人の貴族がいる? それとこの国の貴族の数も知りたい」


「正確な数は分からないわ。ギルマスが調べた限りでは、シオリス領にいる貴族は約1000人で、この国の貴族の数は約3万人、騎士は約5000人らしいわ」


「教えてくれてありがとう」


「どういたしまして」


正確な人数ではないとしても、話半分だとしても「たくさん」だな。

まったく、外はハードな世界だぜ。

知らない事が、まだたくさんあるようだ。

関わらずに済むのなら、知らなくても何の不都合も無いのだが。


ステータス。



セシリア


Lv 6


HP 60/60

MP 104/120


土魔法 Lv 5

水魔法 Lv 3

治癒魔法 Lv 3


スキルポイント 6


従魔 シュバルツ

従魔 ノワール

従魔 エクレール



足りていない。


レベルはもちろん、仲間の数も。


「数は力」か。全くだよな。

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