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異世界で『魔法幼女』になりました  作者: 藤咲ユージ
第3章 旅する幼女
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廃村の中で

エクレールの雷撃で一掃されたかに見えるゴブリンの集団。

だがこれで終わった訳ではない。

ゴブリンの生き残りがいないか確認をしなければ。

丘の上から村を見下ろすと、ここまで焦げ臭いにおいが漂ってくる。

あんな所に行きたくはないが、これも仕事か。


後、ハンソンが「少数のゴブリンが出入りしていた」と言っていたように、森の中で狩りなどをしていて難を逃れたやつもいる筈だ。

そいつらを探し出して狩らねばならない。


はぁ、きっとこれからグロいものを見なければならないんだろうな。気が乗らないわー。

はぁ。あの村へ行くメンバーを決めなければ。


「エイラさん、ハンソンさん」


まだ呆然としている2人に声をかける。まだお仕事ありますよー。


「は、はい! あの、セシリア様、今のは一体」


エイラさんの声が震えている。まぁ驚くのも無理は無い。


「今のは彼女の魔法ですよ。あ、彼女には決して近付かないように。危険なので」


角が。

エクレールの方を見ながら警告する。


「あ、あの方も魔法使い様なのですか?」


震えながら尋ねてくるエイラさん。

ドラゴン幼女を「魔法使い」と呼んでいいのか分からないけど、それでいいか。


「ええ。それより村の中に生き残りがいないか確認が必要なので手伝ってください。もし生き残りがいたとしても私のゴーレムで一蹴できるので大丈夫ですよ」


ようやく我に返った他の村人達が興奮気味に何か言っているけど、廃村に行く人を早く決めて欲しいな。


エイラさんにはここに残ってシルヴィアとクレアを見ていてもらう。ネルスス村へ連絡に行くのは2人、廃村に向かうのは残り1人とハンソン、俺の計3人になった。

シュバルツ達はここに残ってもらうけど、エクレールはどうするかな?


「エクレールは残る? 一緒に行く?」


パチパチ。


しまった、この聞き方ではどっちか分からないわ。


「一緒に行く?」


パチパチ。


ではそういう事で。



2体の土ゴーレムとドラゴン幼女を伴って丘を下り、真っ黒な廃村へと向う。

焦げ臭いにおいと他にも何かの臭いが混ざっていて気分が悪くなりそう。

さっさと済ませて撤収したいわ。


村に近付くに連れて、破壊の跡がより明らかに分かるようになってきた。

村を囲っていた塀は跡形も無く、村の中もすっかり破壊され尽くされているように見える。まるで爆撃された跡のよう。

実際にそういう所を見た事はないけど。


「ハンソンさん、私は家屋の瓦礫の下を重点的に調べます。生き残りがいる可能性があるのはそういった所ではないかと思うので」

「はい、お手伝いします」


土ゴーレム達で手分けして瓦礫をひっくり返していけばすぐに終わるだろう。


「もう1人は?」

「彼にはゴブリンの体から魔石を取り出してもらおうかと」

「魔石?」

「ええ」


そういえば魔物は心臓の辺りに魔石を持っているんだったな。

売ればお金にはなるが、ここでその作業をするのか?


「ハンソンさん、ゴブリンの数は200前後という話だったのでは? 1人2人でする作業ではないでしょう?」


それに雷撃でズタズタにされて原形を留めていない物も多い。

多いというか、ほとんどそうじゃないか?

近くを見回してみても、バラバラ過ぎてゴブリンなのか単に雷撃で抉れてできた土くれなのか、瓦礫の一部なのか判別がつかないぞ? なにしろ全部真っ黒だから。


「そうですが、貴重な収入になるので」

「ゴブリンの魔石っていくらになるのですか?」

「1個銅貨5枚です」


1個1000円ぐらい? 割に合わないんじゃないの?

でも仮に200個回収できたとすれば20万か。それだと無視できない額になるな。

とはいえ、


「とりあえずここではゴブリンらしきものを集めて魔法袋に入れて、後で村に持ち帰って皆で作業すればいいのでは? 魔法袋はありますか?」


無ければ俺の魔法袋に入れてもいいが、全部入るかな?


「確かエイラがいつも魔法袋を持ち歩いている筈です。ちょっと聞いてきます」


ハンソンは作業をしていた村人に声をかけると丘へ向かって走って行った。

残った村人は引き続き魔石を取り出す作業をするらしい。

まぁいいか。瓦礫をどかす時には近くに人がいない方がやり易い。


瓦礫というよりは真っ黒に炭化した別の何かになっている物をゴーレムで取り除きながら確認作業を続ける。


エクレールはいつもはシルヴィアがいる所、俺の前に座っているのだが、目の前にある角が凄い気になるわ。

エクレールがうっかり空を見上げでもしたら、後ろにいる俺が大惨事! になるのだが。

頼むよ? 本当に! 動かないでね!



複数のゴーレムの視覚を通して真っ黒い物を見て、(あぁ、これは柱の一部だな)とか(これはきっとゴブリンの足だな)と判別しながら進める作業は実に憂鬱だな。もっと大雑把でいいか。

とにかく生き残りがいなければいいんだ。胴体のような大き目の塊だけ除けておけばいい。


グロいゴブリンの死体にうんざりしながら瓦礫と死体を分けていく。

後でハンソン達が回収し易いようにしておこう。


ゴーレムでわしゃわしゃと掻き分けていく。




家屋の瓦礫の下は大体確認できたかな? 後は大き目の瓦礫の塊がある所だけだ。

元は村長宅とか、あるいは村の集会所跡かな?

他は衝撃で瓦礫が吹き飛ばされてしまっている所も多いのに、ここだけ破壊具合が小さいな?

瓦礫を掻き分けていく。


周辺から始めて、最後に残った建屋の中心だったと思われる辺りまで進んだ所で、大きなサイズの死体を見つけた。

ゴブリンにしては随分大きい……これ、ゴブリンじゃないぞ? 人じゃないか?


ヤバい! まさか人がいたのか!? 急いで5号機から降りて死体に近付く。


横になった姿勢で倒れている姿は人のように見える。体型からすると大人の女性のようだ。

真っ黒で、当然生きている筈も無い。


「あああ、あちゃー」


変な声が出てしまった。まさかゴブリンの集団の中に人がいるとは思わなかった!

どうしよう? いやもうどうしようもないわ。ああぁ……


人がいるなんて予想外だった。ゴブリン達に捕まっていたのか!

……ん? おかしくないか? ハンソン達は何も言ってなかったぞ?

村の人ではないのか? 捕まっていた事に気が付かなかった、そんな事があるのか?


何か違和感が……もう一度よく見てみる。

真っ黒だがどこか違う。何が違うんだ?

何というか、「炭化」という感じとは違うような?

ゴブリン達の死体とはやや違う感じが……


ピクッ。


ん? 今、耳が動いたような……


ピクピク。


動いた! 今耳が動いた! まさか!? まだ生きているのか!?


「おいっ、生きているのか!?」


女性の両肩を持って揺さぶる。何だ、この耳? やけに大きいな?

いや今はそんな事どうでもいいわ、まだ生きているのならエクスヒールで……


パチッ。


女性が目を開いた! えっ? 意識があるのか? この状態で?


女性は俺に気が付くとはっきりと俺を見て口を開いた。


「あ……ど、う……も」

「えっ?」

「た、たす、け、たた」

「あ、ああ」


意識があるのならまずはヒールで様子を見よう。


「ヒール!」


ぽやん。


治っただろうか? 手応えが今一だったような。


「あ、ありがとう、な、なおった……?」

「うーん」


どうだろう?


「ヒール!」


ぽやん。


どうだ?


「あ、ありがとうございます」


さっきよりはしっかりした口調で話しながら立とうとする女性。

無理するなよ、大丈夫か?


女性は生まれたての子鹿みたいに足をプルプルさせている。

大丈夫じゃなかった! まだ足りない!


「ヒール!」


ぽやん。


また光った。まだ足りなかったんだな。もう1回いっとこう。


「ヒール!」


光らない。

3回も必要なんて重傷だな。当たり前か。最初絶対死んでいると思ったからな。


「ありがとうございます。小さな魔法使いさん。助かりました」

「いえ。私はセシリア。間に合って良かったです」

「申し遅れました。私はアウラの森のエルフ、ビアンカです」


「エルフ」!

そうか、この耳はエルフの耳か!

そしてビアンカ? 今は「白い」所が全く無いけど、それは仕方ないよね。

あ、白目はあるね! 瞳の色は緑。あとは真っ黒。


怪我が治ったのなら次はこの真っ黒な汚れを綺麗にしてあげたいのだが。

でもその前に服を何とかしないと。


この人、裸なんだよね。

服はほとんど炭化して失われてしまっているんだけど、洗浄魔法を使ったら丸見えになってしまう。

今もそうなんだけど、真っ黒だからよく分からないだけで。


だけど大人用の服なんて持ってないし……仕方ない。

魔法袋から布を取り出す。これをバスタオルみたいに体に巻いてもらおう。


「今から体を綺麗にする魔法を使います。害は無いので安心してください」

「はい」


しゅわしゅわしゅわ。


綺麗になった。ビアンカは肌の色が白いなー。これなら確かに「ビアンカ」だね。


しっかし、よく生きていたなぁ、この人。

雷撃を受けていなかったのか? いや、だったらこんなに真っ黒にはなっていないだろう? よく分からないな。

とりあえず、布を巻いてもらうか。


何か「風呂上り」みたいになっている。仕方ないけど。

それに髪が……ん? なぜ髪があるんだ?

綺麗な金髪だが、雷撃を受けているならチリチリになっているか、あるいは無くなっていてもおかしくないんじゃないのか?


「ビアンカさん、どうしてこの村にいたのか教えてもらってもいいですか?」

「はい。森の中でゴブリンに捕まってしまってこの村まで運ばれてきたんです」

「運ぶ? 何の為に?」

「食べる為だと思います。ゴブリンは何でも食べますから」


そうだった。ゴブリンは雑食性だったな。


「えーと、森の中で1人で行動していたのですか?」

「はい。私はハンターなので、獲物を探していたんです」


そうなのか。あまりハンターという感じはしないが。

どこかのお姫様、みたいな雰囲気があるわ。


「獲物を探している時にゴブリンを見つけて、最初の3体はすぐに倒したんですが、次々にゴブリンが現れて、逃げようと思っていたら網を何枚も掛けられて……」

「網? 網って、あの魚を取るアレ?」

「そうです。最初はナイフで切っていたんですが、ゴブリンの攻撃でナイフを落としてしまって、手でいっぱい引き千切ったんですけどそのうち身動きが取れなくなって、網ごとこの村まで引き摺られてきたんです」


ゴブリンって随分頭がいいんだな。

武器を使えるのだからそういう知恵が回ってもおかしくは無いか。


「網なんてどこから調達したんだろう……」

「この村からじゃないですか? ちょっと離れた所ですが大きな湖があるので」


その湖で村人が漁をしていたというのか? しかし、


「ここ、廃村みたいだけど」

「どこかに残っていたのでは?」


そうかも。


「網の中で抵抗し続けていたら倉庫みたいな所に入れられて、何とか網を全部引き千切って出た後に倉庫の壁を殴って壊そうとしたんですけど、壁が凄く頑丈で全然壊せなくて」


壁を殴って壊そうという発想が凄いけど、魔力強化ができるハンターなのか?


「ビアンカさんは魔力強化ができる?」

「はい、魔力防御ができます。網の中にいた時もゴブリン達の槍や斧の攻撃を全部撥ね返してやりました!」


得意げに語るビアンカ。でもナイフは落としてしまっているし、結局捕まって逃げられなかったんだよね。

しかし、ここは倉庫なのか? もう正確な判断は不可能だけど。


「たぶんここは魔法で壁を強化していたんだと思います。そうでなければ私の拳で破壊できた筈です! 力には自信あるんです!」


にっこり笑うビアンカ。力自慢のエルフって何となくイメージと違うような。


彼女は頑丈な壁に守られていたから、エクレールの雷撃の中でも生き延びる事ができた、という事なのかな?


「倉庫に閉じ込められて、それで?」

「私に食事を与えずに弱らせて、抵抗できなくなったところで食べるつもりだったんだと思います。助けていただいて本当に感謝しています」


両腕を胸の前で交差させて、おそらく感謝の意味を持つ仕草なんだろうけど、そういう事を聞きたかった訳じゃないんだけど、まぁいいか。

どうして助かったのかというのはあまり重要じゃないな。


重要なのは「助かった」と言う事実だ。




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