助けたエルフ娘の
さっきまでは死体同然だったが今は生き生きとしているエルフ娘。
最初は大人の女性と思ったけど、こうして見ると少女と言った方が近いかな?
背が高くて胸が大きな美少女エルフ。
「ゴブリンに捕まってどれぐらいここにいたの?」
「たぶん、4、5日だと思います」
「えっ?」
そんなに!?
「その間ずっと飲まず食わずで?」
「いいえ、水は飲んでいました。私は魔法で少しだけ水を出せるので」
なぜか恥ずかしそうに答えるビアンカ。
「では食事を提供しましょう。食欲はありますか?」
「はいっ! お腹空いてます!」
元気に答えるビアンカ。
胃腸が弱っていたとしても魔法で治っているだろう。だが空腹は魔法で治すという訳にはいかないからな。
生存者がいた事を知らせたいんだが、ハンソン達が見当たらない。
近くにいないだけでなく、他の土ゴーレムの視界内にもいない。どこにいるんだ?
土ゴーレムを移動させる。
見つけた。村の端の方まで移動している。
精力的だな。ハンソンも戻っていて魔法袋の中にゴブリンの死体らしき物を入れている。
彼らにとっては最早ゴブリンではなくお金そのもの、なのかもしれない。
「落ち穂拾い」みたいなものか。
ビアンカを連れてハンソン達のいる所へ移動する。あー疲れたわー。(精神的に)
「ハンソンさん、生存者がいたので先に丘の上に戻りますね。瓦礫の下にゴブリンの生き残りはいませんでした。ゴーレムは残しておくので何かあったらゴーレムで対応しますね」
「えっ! 生存者ですか!?」
「ええ」
ビアンカを紹介する。
詳しい説明は後でいいだろう。5号機の肩にビアンカを座らせて丘の上に戻る。
救出した半裸の美少女エルフと角あり美幼女を乗せて颯爽と帰還する幼女! なら格好良いのだが、実際は瓦礫の掻き分けとゴブリンの死体の見過ぎで精神的に疲れ切っているヘロヘロ幼女である。少しも格好良くない。
「あの、セシリアさん」
「何でしょう?」
「そちらの女の子なんですが」
「エクレールですか?」
エクレールを見ているビアンカ。何か恐れているような感じ?
「凄い魔力を感じるのですが、人の子なのですか?」
「ん? えーと」
むしろ人の子ではないもの、にしか見えないんじゃないの?
それとも俺が知らないだけで、頭から大きな角を生やした子は珍しくないのだろうか?
とはいえ、この場は何と答えるべきか。
「この子はちょっと訳ありなので、詮索はしないでください」
「そ、そうなのですか、すみません」
「いえ」
何の説明にもなっていないが、別に構わないだろう。
それより、魔力って他人が感じ取れるものなのか。
いいな、俺も一度言ってみたい。
(何だこれは! 凄い魔力の奔流を感じるっ!)
とか。他人の魔力なんて一度も感じた事ないわ。
丘の上で居残り組と合流する。
「エイラさん、子供達を見ていてくれてありがとうございます」
クレアを受け取って抱っこひもの中に入れる。
「可愛らしい子達で一緒にいて嬉しかったです。……あの、こちらの方は?」
ビアンカを見て不思議そうな顔をするエイラさん。
「あの村でゴブリンに捕まっていたそうです」
「えっ!」
絶句するエイラさん。まぁ、驚くよね。俺も驚いたわー。
「よく無事で……本当に良かった」
「あ、ありがとうございます」
5号機から降りたビアンカを抱きしめて涙するエイラさん。
「私はビアンカといいます。ハンターです」
「そうですか、私はエイラです」
知り合いではないようだ。普通に挨拶をしている。
「エイラさん。彼女はしばらく食事を取れていなかったそうなので、ここで食事を提供するつもりです。ハンソンさん達の作業はまだ続くみたいなのでエイラさんもご一緒にどうですか?」
「いえ、私は大丈夫です。どうか彼女にお願いします。私は少し手伝ってきます」
「えっ?」
廃村の中は真っ黒で結構グロい光景だったけど、教えた方がいいかな?
「見た目キツいですよ? 女性はやめておいた方が……」
「大丈夫です。セシリア様、そしてエクレール様。本当にありがとうございました。おかげさまで村は救われました」
深々と頭を下げるエイラさん。
エクレールがパチパチと瞬きで返事をしたのだけれど、見えてなかったね。
救われたといっても、まだ森の中にゴブリンが残っている筈だけど。
丘を下っていくエイラさんを見送った後、食事の支度をする。
「シルヴィア、この人はビアンカさんだよ」
「はじめまして、ビアンカです」
「びあんか?」
「そう」
「びあんかちゃん!」
そこは「びーちゃん」じゃないんだね。
「どうしてはだかなの?」
「えっ?」
裸じゃないよ! 一応、布を巻いているし……裸みたいなものか。
「食事の後、服を作るよ」
「ふぅん?」
仕方ないね。
「あの、服というのは……」
「布があるので服を作ります」
「命を助けていただいた上に服までというのは……」
「気にしなくていいですよ」
子供の教育上必要なのだ。それに女性をいつまでも半裸の状態にしておくわけにはいかない。
食事は今朝のミルク粥にリザード肉の香草焼き、ベーコンサラダと果物もつける。たっぷり用意しよう。
「しーちゃん、ビアンカさんの食事が終わるまでもう少し待っていてね」
「わかった」
シルヴィアの事はシュバルツとノワールに任せて、ビアンカの食事が終わるまでに服を作らねば。
「どうぞ、ビアンカさん」
「ありがとうございます。美味しそうですね!」
土魔法でテーブルと椅子を作り、彼女に座ってもらう。
食事を始めたビアンカを見ながら服作りを始めるつもりだったのだが、
「これはもしかしてリザードですか? リザードの肉なんて久しぶり! 嬉しいです!」
「そうですか。お口に合ったのなら良かったです」
「凄く美味しいです! こんなに美味しいリゾットは食べた事がないです!」
「それはお粥です……気に入ってもらえてよかった。おかわりありますよ」
「ありがとうございます!」
「こんなにたくさんのベーコン、食べていいんですか? 夢みたいです!」
「たくさんあるので遠慮しなくていいですよ」
「果物は何個までですか? 1個ですか?」
「全部食べていいですよ」
「本当ですか! ありがとうございます!」
凄くたくさん食べる。それはいいのだが、
「こんなにたくさんのお肉を食べるのは久しぶりです!」
「おかわりしていいなんて最高です!」
今までどんな食事をしていたんだ? もちろんゴブリンに捕まる前の話だが。
そこはかとなく、何というか、貧乏か不幸の匂いがする。
「ビアンカさんってハンターなのでしょう? 今までどんな生活をしていたのですか?」
つい、聞いてしまった。それが間違いの元だった。




