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異世界で『魔法幼女』になりました  作者: 藤咲ユージ
第3章 旅する幼女
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セカンドブラック!

ナディナ村を出てマーヴィンの町へ向かう。


例によって森の中へ突っ込んでいく狼。

まぁ、売り物になりそうな獣を狩るのはいいんだけど、なかなか町に着かないな。

今度は2頭の豹のような獣だった。

こいつらは高い木の上と地上を交互に移動しながら襲ってくる。

とりあえず、狼と土ゴーレムで相手しながら石弾を試してみよう。

ライフル射撃をイメージする。

前のような弾を作ってから撃ち出すのではなく、土の中から直接撃つイメージ。

上手くいくかな?


「ストーンブレット!」(ストーンバレットから改名)


ビシュッ!


土から直接撃ち出された弾は、狙い通り木の枝に乗っていた豹モドキの頭部に命中する。


ドサッ!


枝の上から落ちてくる豹モドキ。狙撃っぽい! もう1頭も同じく狙撃!


ビシュッ!


2頭目も問題無く倒す事ができた。


イメージはライフル射撃なんだけど、実際は弾の弾道が直線じゃないし、狙った所に必ず当たるのでむしろ誘導ミサイルとでも言うべきか?

動いている相手に対する攻撃としては使えるが、単発というのが難点だ。


相手が単独ならいいが多数だとたぶん追い付かないし、「重ね掛け」をしても弾数が増えない。なぜなのか。


豹モドキの血抜きをしながら考える。

今まではほとんどの相手が単独だったから問題無かったが、数が多くなった場合は苦しくなるかもしれない。

黒のゴーレムはもの凄く強いが、相手が多数の場合は手が回らないという可能性も考慮すべきだろう。


土魔法は相手の動きが止まっている時はいいが、数が多いと対応できない可能性は高い。

狼も土ゴーレムも同時に多数を相手にする事はできないし。


つまり、現在のパーティメンバーは近接(前衛)ばかりなので、面制圧ができる、いわゆる範囲攻撃が可能な魔法使いが1人欲しい、という事だ。


「新しいメンバーが必要ではないだろうか? 後衛の魔法使いとか」


現在のメンバーに話しかけてみる。

まぁ、返事は無いけれど、問題意識を共有するって大事だと思うんだよね。



今度は黒のゴーレムがどこかへ行こうとしている。獲物を見つけたのか?

後をついていくと、そこには「黒色の魔物」がいた。

魔物……だよな?


背が高くて脚が長い。

人の形に似ているが、脚が4本あって腕は無い。

大きさは黒のゴーレムの2倍ぐらい。硬質な感じで、黒のゴーレムと同じ深い漆黒の……あれ、これヤバくね?

これ、「黒いゴーレム」っぽいんだけど!


そのゴーレム? の目は赤く光っている!

黒のゴーレムも目が赤い!


ゆっくりと歩み寄る両者。

と思ったら、黒いゴーレムっぽいやつが猛然と突っ込んできた!

超速い! 弾丸のようだ!


黒のゴーレムは低い姿勢で待ち構えている。

そしていきなりのパイルバンカー!!


ドシュッ!


射出される凶悪な黒い杭。ぶっ飛ばされる魔物!


「えっ?」


ぶっ飛ばされる? 刺さらないのか?

派手に突き飛ばされてゴロゴロ転がっていた魔物は平然と立ち上がる!

マジかよ! 効いてないのか!?


魔物に突っ込んでいく黒のゴーレム。こちらも速い!

待ち構えていた魔物はその長い脚を大きく振り上げて、


ドシュッ!


右脚で上から突き刺すように黒のゴーレムの頭に踏み込んだ!

脚の先端が鋭利な刃物、いや、ツルハシのように見える。

もしかするとあれは脚ではなく腕なのか?


ガシッ!


両腕を交差させて防ぐ黒のゴーレム。

ギリギリと凄い力で拮抗しているように見える。


ドカッ!


空いている左脚? で斜め上から横蹴りのようなキックを使う魔物!

蹴り飛ばされる黒のゴーレム!


ゴロゴロゴロゴロ!


凄い勢いで回転していたのに、やはり平然と立ち上がる。

どうなってるの? タフ過ぎないか? 両者とも!


ドッカンドッカンガシガシズガン!!


重々しい打撃音を響かせながら両者の過激なバトルは続く。


黒のゴーレムを支援してやりたいが、動きが速過ぎて攻撃が当たる気がしない。

もっとも「黒の魔物」なら魔法は効かないんだよな。


お互い魔法は使っていない。

魔物は魔法が使えないのか、それとも使っても無駄だと分かっているのか。



ズガン! ドスゥ! ゴロゴロゴロ。

ドガッ! ゴスゥ! ガキン!


随分長い時間、戦っている。

これ、キリがないんじゃないの?

ど突き合い、蹴り合っているが、どちらも相手に有効なダメージを与える事ができていないように見える。

ゴーレムにバテるとかあるんだろうか。


ドガァアン!


一段と派手な音がして黒のゴーレムがすぐ近くまで飛ばされてきた!

おい大丈夫か!?


普通に起き上がっている。平気そう。本当にキリがないよね。


「なぁ、支援してもいい?」


もしかしたら一騎打ちのつもりかもしれないので一応聞いてみる。

黒のゴーレムはこちらを見ているが、否定的な雰囲気は感じない。


試してみよう。ダメなら後は黒のゴーレムに任せればいい。


「あいつの動きを止めてくれる?」


黒のゴーレムは魔物に向かって猛然と突っ込んでいくと、その脚を掴んでぐるぐる回転させて地面に叩きつけると、更に大きな木に向けて投げつけた!


ドガッ!


魔物は木にぶち当たって跳ね返り、地面の上を転がって止まる。

動きが止まった! 今だ!!


魔物の下の地面に穴を開ける。

スッと音も無く、深さ1mの穴が開く。

魔物に直接魔法をかけた訳ではないので上手くいった。

更に重ね掛け。深さを2倍。

魔物の姿が穴の中に消える。


更に重ね掛け。4m、8m、16m。


重ね掛けをしながら同時に上から「解除」していく。

解除すると、穴を開けた時に消えた土が元に戻る。音も無く、静かに。


1m、2m、4m、8m。

上から順々に解除していく。土が埋まっていく。

更に重ね掛け。

32m、64m、128m。


魔物が落ちていくのが分かる。


更に解除と重ね掛けを繰り返す。

16m、32m、64m、128mを解除。


更に深く!

256m、512m、1024m!


そして最後の1024mを解除する。


地面を見つめる。何の音もしない。振動も無い。


地味な魔法だ。


今、魔物の上にあるのはただの土だ。あるいは粘土や礫、岩盤など。

魔法による物ではない。ただそこにあった物を元に戻しただけ。

「黒の魔物」が無効化できる物ではない。

単に重いだけだ。大して有効ではないのかもしれないな。


黒のゴーレムを見る。

黒のゴーレムも地面を見ていた。


「どうだろう? こんな感じでいいかな?」


俺を見る目は青かった。いいらしい。


「じゃあ、この場を離れようか」


あいつが地表まで戻ってくるかもしれないが、その間に逃げておこう。

森の中でもある程度は距離を稼ぐ事ができるだろう。


さっさと立ち去る事にする。

土魔法は地味だけど、役に立つな。



あの魔物が追ってきた場合、マーヴィンの町へ向かっていたら魔物を町へトレインという洒落にならない事になってしまう。

しばらくの間森の中を適当に動いて様子見だ。


中々町に行けないなぁ。



戦闘のあった場所から距離をとりつつ町からも離れる方向へ移動して3日目。

そろそろいいかな?

魔物の姿もないし、町へ行こうかな?


そんな事を思いつつ、地面に開けた穴の中で眠り、朝、目が覚めて穴の中から外を見ると目の前に黒くて長い脚があった。


目線を上げると、


「来てやったぜ」


と言わんばかりの様子で、穴のすぐ傍で待ち構えていた黒い魔物と目が合った。


また、これか。


高い位置から見下ろしてくる青い目。間近でみるとやはり「ゴーレム」に見えるな。

とりあえず、穴から出て挨拶をする。


「おはよう」


魔物は返事をしない。

まぁ、誰も返事はしないけど。でも挨拶は大事。


どうにもならないよね、これ。


傍にいる黒のゴーレムも静かな青い目で俺達を見ている。

とりあえず、朝食にしよう。だがその前に。


あちこち汚れていて、どこかくすんで見える「黒いゴーレム」。

うん、まぁ、地下1kmの土の中から戻ってきたらそりゃ汚れるよね。


まず、自分と狼に洗浄の魔法をかける。


しゅわしゅわしゅわ。


黒のゴーレムにも掛ける。


しゅわしゅわしゅわ。


そして黒いゴーレムに話しかける。


「これは綺麗にする魔法で攻撃ではないよ。かけてもいいかな?」


青い目に変化は無い。たぶんいいのだろう。


しゅわしゅわしゅわ。


綺麗になった。美しい黒。


さて、朝食にするか。



今朝の朝食はヤギンの乳とチーズ、パンにバターを塗って野菜と焼いたベーコンを挟んで食べる。

美味しいねー。

狼もベーコンと野菜をたくさん食べている。


一応黒いゴーレムにも勧めてみたが食べなかった。

やっぱりゴーレムは食べないんだねー。

朝食の間、黒いゴーレムは大人しくしていた。


朝食を終えて、さぁ、どうしよう?

こいつの用事は何かな?

リターンマッチか? そんな感じはしないけど。


まさか俺を相手にしたい訳ではないだろうな?

絶対に無理ですよ? 一撃で終わっちゃうから!


こいつを連れて町へ行く訳にはいかないと思うんだけど、ついて来る気かな?

野営地を片付けて出発する。

やはりついて来る。


どうしたものかなー。


黒いゴーレムがついて来るので、仕方なく更に森の中を適当に歩く。


当然獣達が襲ってくるが、黒のゴーレムが「新入りにいいところを見せたい先輩」みたいな感じで張り切って倒していく。


ズギャン!


黒いゴーレムも「やる気溢れる新人」みたいに積極的に獣を倒していく。


ドシュツ!


長い脚を持ち上げて、そのまま獣の体に振り下ろす。

一撃である。

こいつも強いなー。

黒のゴーレムと互角に渡り合うのだから当然だけど。


そして黒いゴーレムも収納魔法を使う。

黒のゴーレムが血抜きをした後の獣を魔法で収納しているのを見て、黒いゴーレムもちゃんと血抜きが終わるのを待ってから、倒した獣を自分で収納していく。


そんな感じなので幼女の出番は全く無い。後ろから見てるだけー。

前にもこういうのあったよね。

血抜き作業だけする。



更に3日ほど同じような事をしながら森の中をうろうろする。


黒いゴーレムに不穏な動きは見られない。俺達に馴染んでいるように見える。

「黒のゴーレム」と「黒いゴーレム」、紛らわしいので黒いゴーレムを「足長」と呼ぶ事にする。

「脚長」だと何かしっくりこないので。



たまに採取をする。

木に登って枝になっている果実を取っていると、足長も登ってきて、前の脚か腕かよく分からない部分を使ってより高い所の果実を取ってくれる。

手伝ってくれてありがとう。

長く伸びるなぁ。やはり腕なのか?

ゴーレムって木に登る事ができるんだな。重さはどうなっているのか……


ボール遊びもしてみた。土の球で懲りたので、市場でサッカーボールみたいな物を買っておいたのだ。

何かの獣の皮でできていて、表面に模様がある。公式試合球みたいなアレ。

元の獣の模様だと言ってたけど、本当かな? リボンみたいな模様なんだけど。

どこかで見た事あるわー。


お値段は銀貨1枚と銅貨10枚。価格も公式球並み。


黒のゴーレムと土ゴーレム、幼女の3者でお手本を見せる。巧みなパスワーク!

足長にも混ざってもらう。

すぐにコツを掴む足長。センスあるねー。世界を狙えるんじゃない?


大丈夫そうかな?


いつまでも森にいられないし、一度マーヴィンの町に行ってみるか。

大きな町ならハンターギルドもあるんじゃないかな?

そこで相談してみよう。そうしよう。


俺達は町に向かう事にした。




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