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第17話 知らないを知っていこう

 という訳で昼食を満足に食べ終えた後はコーチの言った通り──


「午後からは皆が考えて決めた砂時計陣形で戦ってもらう。だが、これはまだ未完成の陣形──やっていくうちに足りない何かが見えてくる。特に鈴花には負担がかかりやすいがトイによって噛み合い方も変わるはずだ今はシールドとグリフォンで耐久重視だが思い付いたらトイの変更は自由に行うように。それは皆も同じだ、サブユニットも思いついたら切り替えてよし!」

「りょ!」

「わかりました!」

「俺もフィールドに立ってUCIユニットを操作する。容赦なく陣形の隙を突いていくつもりだからよろしく」


 となるとウェーブ戦のAI挙動とは違ってより生きた動きを相手することになる。立ち位置を意識して攻めたり守ったりしないと……。

 この陣形は私達が考えて決めた新たな白華ワープリ部の始まりを示してる。いい加減な戦い方はできない。


「一人で五人分動かすのって相当な無茶よ? 訓練になるか怪しいわ」

「デスデス、まだUCIユニットの方が相手になるんじゃないですか?」


 コーチならやってのけないかと思ったけど、冷静に考えれば不可能に近い。いくら私達が未熟とはいえ慢心が過ぎるとは思う。

 初心者の鈴花ちゃんだけはピンと来てない顔をしてるけど、将棋みたいに交代しながら動かすんじゃなくて一人で五体をリアルタイムで操作するのは負担が大きい。

 AIによる自動行動があるとしても、相手は私達で五人が自由に動く。ゲームみたいに大元のルールで動いてるならともかく足の速さや判断力は大きく差が出てきて予想なんてできない。


「まぁ、無茶かどうかはやってみればわかる。早速始めようか。ちなみに俺はフィールドで操作するだけだから撃っても意味ないからな」


 冷静に淡々と言ってる。表情からしても舐めている感じはしない、訓練として有意義になると確信を持ってるとみて間違いなさそう。

 となると私が言うべきは──


「みんな! コーチもこう言ってることだし本気でやるよ! 陣形と連携を意識して試していこう!」

「わ、わかりました!」


 了解の返事を受けて戦闘開始!

 形成されたフィールドは山丘、森と比べると木々は少なくて見通しが良いけど、せり上がったに坂道や点々と存在する木や岩が障害物になっているフィールド。この時点でコーチの姿も見えてるしUCIユニットの大まかな位置も長く繋がってるような壁はほぼ無いから予想できる。


「まずは急いで前線に向かう!」

「了解! Let's goデス!」


 とにかく大事なのは中央の確保!

 障害物を盾にして身を隠しながら点繋ぎみたいに次の障害物へ素早く移動──こういう実戦だとコーチの練習が理にかなっているのが実感できる。移動した後に相手がいないか素早く周囲を確認。

 相手はダメージ覚悟で接近してきてる訳じゃなさそう、接敵せずに20m近くまで駆け上がることができた。セイラちゃんも無傷、約10m間隔で障害物の岩を盾にしながら中央を抑えることに成功。

 25m地点、つまりJの位置から先は通したらダメ。ここから先は押しつ押されつのシーソーゲーム。最初の関門を突破できて少しホッとする。

 皆の位置的には、大体K-4、8にセイラちゃんと私。鈴花ちゃんはO-6。向日葵ちゃんと菫ちゃんはR-3、9辺りに位置する形になる。

 障害物の配置は完全にランダムだから、セイラちゃんとは真横じゃないのがちょっとした不安要素。


「こうも障害物が少ないとリブラが撃ち落とされそうであまり役に立てないわね」

「岩の上から狙いましょうか?」

「待って、コーチのことだから対策バッチリしてると思う」

「相手の姿はまだ見えまセンネ……隠れて待ち構えてソウデス」


 骨伝導インカムを使って情報共有。音漏れの心配は無いけど声を出せば気付かれる可能性があるから注意は必要。

 前衛の私達は戦線の維持と状況整理が最初の仕事。ここが疎かだと後ろの皆にも迷惑がかかる。今は鈴花ちゃんがいて目が増えたようなもの。中心よりも外側に注意を向けることができる。

 ここから先はリブラの活躍を期待したい。上部はひらけた状態でドローントイは障害物無しに移動し放題だけど、逆に言えば隠れる場所が無くて狙われ放題、それに出せる速度もそこまで早くない、何より耐久力はスーツの四分の一位だったかな?


「って、陣形の位置に障害物的なのないんだけど~!?」

「焦らずシールドよ。って妙に物が少ない気がするわ」


 鈴花ちゃんの小声の叫び。少し振り返って見ると確かに不自然に鈴花ちゃん周りの障害物が少ないような……まさか、もしかしなくてもコーチ計ったな!?

 フィールドを用意したのはコーチなんだから、地形を完全に把握しててもおかしくない。陣形を意識すると不利な状況に陥る罠を仕込んでいてもおかしくない。


「あれ……なんかウチめっちゃ目立ってない……?」


 この予想は多分間違ってない。陣形を意識し続けたら完全に位置がバレ続ける。

 シールドを構えていても安心はできない。でも囮として機能してくれている面もある。正面から突撃してくるなら前衛組(私達)で挟撃すれば──

 何て考えていたらボシュッって嫌な音が聞こえる。この音はバズーカ!?

 聞こえると否が応でも緊張が走っちゃう。喰らえば一撃でダウンは免れない砲弾が岩の向こうから放物線を描くように私達の頭上を通り抜けていってっ──!


「砲撃! 鈴花ちゃん狙いだよ!」

「えっ──うわっ!? あっぶな~!?」


 頭が冷えるぐらいに狙いすました砲撃!

 地面に直撃するとパンパンに膨らんだ風船に詰まった小麦粉が弾けるかのようにUCIの煙霧が広がる。

 鈴花ちゃんはギリギリ右方向に転がるように回避してくれたけど、直撃してたらシールドを破壊してダウンまで持っていかれてたかも!?


「ワッツ!? 急に攻めてきました!?」

「え!?」


 さらに別方向から追加攻撃!?

 それもセイラちゃんの左側から!? でも今使ってる岩を90度回り込めば身を隠せ──ダメだ! 相手が正面陣取ってる! 移動したら撃ち抜かれる──ここは私がシールドで防がないと!

 この流れって今の砲撃でできた僅かな隙を突いたってこと? 

 連携が取れすぎてる!

 え──さらに右からも!?

 左、正面、右の前衛三人の攻撃陣形!? いや、バズーカ持ちが見えない、まさか四人!? いや、中衛から撃ってきた!?

 シールド展開してマシンガンの連射を何とか防ぐ──けど……!


「ラ、ランカ近いデス、動きづらいデス!?」

「ごめん! でも、移動したらダウンしちゃう!」


 岩と私の間にセイラちゃんを挟み込む形になっちゃった! すぐに動きたいけど、相手は順番にマシンガンで動き止めてくるし、それに二ヵ所60度ぐらい別方向から撃ってくるから迂闊に動いたら打ち抜かれちゃう!


「やっば! アイツ回り込もうとしてる! ウチがどうにかする!」


 鈴花ちゃんが最初に左から攻めて来たのに対応するために急いでこっちに近づいて来てくれる──でも、相手も狙いをすぐに鈴花ちゃんに切り替えて連射してくる。右から左へ撫でるように……鈴花ちゃんも盾で防御と足で回避を組み合わせて──あれ、こっちに近づいて来てる?

 まさか、この状況ってなんだかまとめられてる!?


「あっ」「アッ」「えっ?」


 ボシュって音が聞こえた、その瞬間に悪寒が全身を駆け巡ってほんの少し先の未来がはっきりと見えて、答え合わせのように放物線を描いた弾頭が私達三人が集まってる位置に落ちてきて──


「──五対ゼロ、まだまだだったな」

「酷いですコーチ! 完全有利な状況で戦うだなんて!」


 一気に三人がやられた時点で勝負は完全についちゃった。

 後は全軍突撃で二人はひき潰された感じで終わってしまった。当然私は不平を口にするけどコーチは冷静な表情のままで。


「陣形を知られた程度でここまでやられるならやられる側が悪い。大会に参加するチームは陣形を知られていることなんて当たり前だ。その上で機能するように錬度を高めている。今日決まった陣形が最初から全て上手く行くことなんて稀だ」

「うぅ……反論できない──」


 このまま良い流れに乗っていければと思ったけどこうも封じられるなんて……


「今回の戦いも録画してある。何がいけなかったのかどうすればよかったのか皆で考えてみよう」

「情けない結果を晒して恥ずかしいデース……」

「ウチ逃げてただけで終わった」


 真上から録画されていた映像を見ている相手も味方もどんな風に動いているのかよくわかる。コーチは前衛三、中衛一、後衛一、矢印みたいな陣形で戦っていたんだ。

 私達もちゃんと砂時計型で……うん、何というか綺麗すぎる気がする、形にこだわりすぎてるぐらいに。


「最初のバズーカが着弾したところで一気に流れが持っていかれたわね。設定されたトイはうちで使ってたバハムートね」

「正解だ、では何故俺は撃ったと思う?」

「ハイハーイ! 位置が分かってたからっしょ! コーチは陣形知ってたからそこを狙いすまして撃った!」

「半分正解、正確な位置情報についてはユニットの視覚とレーダーでしか感知していない。陣形から大まかにここにいると踏んで撃っただけだ」

「それと上部がひらいてたから山なりに飛ぶバズーカは撃ちやすかったってのもあるでしょ?」

「鈴花ちゃんが体勢を崩して大きく私側に移動したことで孤立したセイラちゃんを狙った。他二体の前衛も一気に出てきて確実に仕留める動きをしてた。私が正面二体の攻撃を受け止める形。この時陣形はこんな感じになってた」


 後衛の二人は大きく移動してない。でも、私とセイラちゃんが重なる状態で実質一人にまとめられたようなもの。

 コーチ側はバハムート持ちがH-6にいて、前衛一体がL-2辺りから攻めてきて、J-6、8で残りの二体は待機していて、私が庇いに行ったタイミングで攻撃してきた。


「じゃあ最初の砲撃はウチを動かすことを目的としてた? もしもセイラ先輩側に動いていたら状況は変わった?」

「そうだな。盾持ちとアタッカーが近くにいると連携されて攻めづらい。おそらく、攻めたとしてもセイラは鈴花の後ろへ移動する、この岩に留まることはしなかっただろう。逆に孤立した蘭香に対してはシールド持ちだから迂闊に攻めにくい。右から回りこんで攻めようにも八重さんが上がってきたら十字砲火の形に合いかねない」

「タシカニ」


 両手をチョキにしてセイラちゃんは答える。


「でもあの砲撃見たらウチ右に避けるしか思い浮かばなかったんだよね、弾が若干左側に寄って……え、まさかそこまで計算してやってたん!?」

「正解だ、セイラを孤立させてダウンを狙った」

「うっわ、完全に策にはまってるじゃん!? え、じゃあ撃たれた時点でウチ達もう負けが決まってたってことなん?」

「流石にそれはないと言いたいけど……」


 自信が無い……コーチの頭の中ではどこまで計画通りだったのか分からないけど、完全に掌上で踊らされてた。あり得る戦闘パターンを全部予想されてたと言っても驚かない。

 なにより、UCIユニット程度であしらえるぐらいの実力しか私達には無いってことなのかな?


「戦いの流れは俺が制したと言えるが防ぐ手段はいくらでもあった。何だと思う?」

「あったん……?」

「あったんデスカネ?」

「おいおい、あるに決まっているだろう……教えるのは簡単だが対策は自分達で想像し思いついてこそ意味がある。何でもいいから言葉にしてみるんだ」


 私はあの状況で何ができたんだろう? 仮に前に出たとしても相手は後ろに下がり距離を取りつつ横に隠れたもう一体で打ち抜いて来たと思う。

 何だろうと悩んでいると、おどおどと手を上げる一人。


「もしかしなくても……わたし、ですよね……?」

「どうしてそう思うんだい?」

「わたしが高いところから前を見ていたら、倒せなかったとしても動き難かったと思うんです」

「でもそれだと向日葵が目立ち過ぎて的になってたでしょ」

「いえ、そうじゃないんです。射程距離がありますから仮に見つかっていても届かないんです……最初の砲撃の後、セイラさんに攻め込む一体をわたしが撃てれば勝ちの流れを掴んでいたかもしれません」


 確かにその流れはあるかも!

 戦局をイメージしてみる──向日葵ちゃんがどっしり構えて岩の上で狙っていたとしたら確かに目立ってはいたけど、撃たれたら終わりって言う警戒心も与えられてた。

 有効射程内に入ろうと思っても私達が壁になって近づけない。


「全部が南京さんのせいとはありえないが、射程距離という観点は大正解だ。スナイパーライフルで狙われているという印象があるだけで相手は非常に動きにくくなる」

「向日葵ちゃんが勝敗を左右することが多いってこと?」

「実際、長距離トイが活躍できるかどうかでバトルの展開は大きく左右される。俺がバズーカでかき乱したようにな」

「っでそのヒマチーを守る役目もあるのがウチってことね」

「それも正解。どうしても敵愾心(ヘイト)を高めるからこそ仲間との連携が重要になる」

「あたしも何にもしてなかったのが大きいわ。ひらけたフィールドでリブラが役に立たないと思って留まってた、ペガサス持ってるんだから前に出てさえいれば蘭香の空いた位置にまで上がっていれば前衛の一体はどうにかできたかもしれないのに……!」

「確かにバトルに積極的に参加していなければいないも同義だ。例え距離があったとしても踏み込んだらやられるって圧を与えられるかどうかで相手の進行を抑えることができる」


 負けた試合なんてあまり見たくないけど、解説されると勉強になる。自分の良くなかった部分が浮き彫りになって改善すべき点がこうも見つかるなんて。

 岡目八目とはよく言ったものだよ。


「いいか? 君達は陣形をこれが良いと本能で選んでいる。もっと活かす方法はいくらでもある! バトルの常識とかは関係ない、思いついたのを何でも試すんだ! 自分達ならこれが最高に回せるって言うのを見せてくれ!」

「「「「「はい!」」」」」


 ここからの練習は陣形を意識することを大前提にして本当にもう何でも試した。

 向日葵ちゃんが目立ってもいいからとにかく狙い易い位置で周囲を見張る。その向日葵ちゃんを保護するために最外をリブラの探索範囲内に収めて配置する。この形になるだけでコーチ側の動きは悪くなった気がする。けど、スナイパートイに隠れながら近づかれたら探索範囲外から打ち抜かれる危険性もあった。

 それと私もあえて庇いに向かわないこともやったりした。セイラちゃんがピンチになったら急いで相手の射線を防ぐように動いていたけど、陣形が大きく崩れること菫ちゃんの前がフリーになる危険性もある。

 セイラちゃんを狙っている相手を射撃で狙う。これは意外と効果的で当たればダウンに持っていける。これに気付くのに何回かセイラちゃんに犠牲になってもらっちゃった。

 鈴花ちゃんも中央でどっしり構えることを意識してくれていて、下がらざるを得ないセイラちゃんをサポートする形で戦ってくれた。

 手応えの有る無し、成功失敗、全てを自分の糧にしていくように練習を重ねていきました。


「17時か──よし! 今日の練習は以上だクールダウンをしっかり行うように!」

「何だか今日は本当に疲れたぁ~練習時間が多いだけじゃないよ絶対……それにお腹も減ってきたぁ」

「途中でコーチのパン貰ってたのに?」

「うぅ……燃費が悪くて申し訳ない」


 中休憩に貰ったけどそのエネルギーもまさか使い切っちゃうなんて……うぅ、油断したらお腹が鳴りそう……こうなる可能性も考えてお昼沢山食べたんだけどなぁ。

 三時頃にもう一回ちゃんと食べた方がいいのかな? こんなにお腹空くんだから太る心配は無いと思うけど……。


「明日は完全休暇。練習だったり激しく体を動かすのは禁止、前にも言ったが身体をしっかり休めるのも大事な練習になる。いいか、とにかく睡眠をしっかりとるように経験値を体に定着させるのは睡眠だ。それに疲労をしっかり落し次の練習に挑むことで自分の成長を実感できる。今までと違ってハードな練習をしているんだから必ずこの忠告を守るように」


 真剣な表情で念には念を入れて注意してもう本当に運動なんてするなって言ってるような圧を感じる。せっかくの日曜日、今日休んで明日元気になったら運動しちゃいそうだけど……ここは大人しく従おう。


「ヘイ! ストロンガーの散歩はしてもいいデスカ?」

「ワンちゃんか?」

「そうデース! ワタシの大事な家族で毎日の散歩が日課デース! やらないとさびしがりマス!」

「夜更かしせずちゃんと休むなら構わない。そういう日常も大切にするのも重要だからな。ちなみに犬種は?」


 コーチがどういうわけか興味を引いたみたいで、セイラちゃんはそれに気を良くしたのかスクホを開いて画面を見せた。


「ポメラニアンデス! ちなみにこんな姿です」

「あら可愛い、白くてふっくらしててオモチみたい」


 ちなみに愛称はストローちゃん。たまにかわいい写真を送ってくれるしグループチャットにも投稿してる。白華ワープリ部のグループにある画像は半分以上ストローちゃんで埋められている。


「さっすがコーチ、わかってマスネ~! ソウデス! このカワイサをコーチにもおすそ分けシマスネ! 連絡先交換シマショー!」

「あ、ちょっと待ってウチも連絡先交換する! 抜け駆けは厳禁っしょ!」

「あっ……そういえば私もしてなかった! それに鈴花ちゃんともしないと!」


 完全に忘れてた! 覚悟聞かれたりポジション変更だったり新入部員もあって記憶から抜け落ちてた。最悪短い付き合いかもしれないけど密に連絡取ることになりそうだもんね。


「そうだな、連絡先の交換……どうやるんだっけ? 最近全くしてないからやり方忘れてしまってな」

「最後に交換したのって何時頃なん?」

「確か……大学入って……四年の頃にやった記憶がある」

「じゃあ二、三年は増えてないってことね。大人になると交換する機会って減るのかしらね?」


 そんなに連絡先って増えないものなのかな? 確かに学年が上がると疎遠になって連絡しなくなる子もいるけど友達もできて交換する機会には恵まれる。 

 とりあえずスクホを開いて画面を展開。コーチに見せつけるように大きめに開く。


「あれ、ラン部長のスクホって新型?」

「確かに……最近CMで見るsPhone7じゃないか?」

「ふっふっふ……! 二人共気付きましたか! 菫ちゃんは気付かなかったことによく気付いてくれました!」

「いや、面倒な反応しそうだったからあえて言わなかっただけよ。これ見よがしに見せられて気付かない訳ないでしょ」

「それはそれで酷い! とにかく高等部昇格祝いに買ってくれたんですよsPhone7を! コーチの旧型とは性能が段違いですよ」

「確か十万軽く越える代物だけどよく買ってくれたな……俺のは五年以上前の代物だから流石に性能差エグイことになってるな。UCIモニターの解像度は頭打ちに近いとはいえ処理機能はどこまで上がるんだろうな」


 新型巻物型電子機器(スクロールフォン)、sPhoneシリーズ!

 高性能かつ高画質、本体の長さはシャーペンとそんなに変わらないけどちょっと太め。巻物を開くみたいにUCI製画面を宙に精製。UCI精製装置とつなげれば大昔にあった3Dプリンターみたいにどこでも自由にUCIの物体を作り上げることも可能!

 もちろん資格は必要だけど、とーぜん私は持ってる!


「これとUCIエネルギーさえあればどこにいても何でも生み出すことができますよ!」

「ほう、じゃあ最近何か作ったのか?」

「…………」


 何も作ってない──!


「こほん、そんなことよりも交換を始めましょう。まずは連絡先のアプリを開いてください」

「ここだな」

「次は『+』のところ押してください」

「なるほど」

「『新規追加』を押して」

「よし」

「『近くの人と』を押して」

「ここで……おっ通信状態になった」

「この状態で同じ状態の人の端末を近づけますと」


 私の画面だと「鉢谷達也」「野茨鈴花」「セイラ・アキレーア」の連絡先を追加しますか? って出てくる。


「チェック欄をポチポチして追加する人を選んで「完了」をタップしてOK! 互いにチェックしてると登録されるよ」

「おお! 一気に三人も増えた!」


 二人も追加されて、セイラちゃんは更新されたけど前と情報変わってなかったら特に意味はないけどね。


「菫ちゃんと向日葵ちゃんは交換しない?」

「私はいいわ、いくら蘭香のおじさんとはいえ無条件で信用はできないし」

「ちょ、ちょっと遠慮しておきます……」


 向日葵ちゃんは男の人が苦手だって言うから仕方ないけど、菫ちゃんはどうしてだろう? 嫌っていうより本当に興味が無いみたい。


「強制するもんでもないからな」

「でもグループチャットにはコーチも許可するからね」

「それは問題ないわ」

「は、はい」

「コーチーは使い方わかってる?」

「もちろん知らない! 昔は使ったような気もするけどここ数年はさっぱりだな」

「やっぱり! ラン部長、アプリは『リング』ですよね?」

「そうだよ。アドレスはこれだよ」

「りょです」


 画面にQRコードを表示させる。コーチは急いでアプリのインストールをして登録してQRコードを読み込んで申請が来たから「許可」をして。


「これで俺もSNSの波に乗れたということか……」


 コーチのしみじみとした顔を見ると、ワープリで私達相手になんだかんだで全勝していた人とは思えない。人間味って言い方は失礼だけど普通の人なんだなぁって安心する。

本作を読んでいただきありがとうございます!

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