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短編 節分のお手伝い!でも虎柄ビキニは恥ずかしいですっ!

「まさか不動様に限って風邪を引くなんて。馬鹿は風邪を引かないという諺が日本にありますのに」


「往生させるぞガキ。まさかこの俺が北極でホッキョクグマと戯れた程度で風邪を引くとは」


不動仁王は手を握り締めるが掴むのは虚空ばかり。


不動仁王は風邪を引き、ベッドで美琴とムースに看病をしてもらっていた。


美琴が不動の口から体温計を取ってそこに記された数字を見て驚愕した。


「42度!凄い熱ですよ!」


「普通の人間ならあの世行きですわね。わたくしとしましては不動様には永遠に天国に移住してもらった方が玩具たちとのお遊びが楽しくなりますのに」


片目を瞑りながらムースが嫌味を口にすると、美琴が悲しそうな顔をして。


「ムースさん、そんなことを言っては不動さんが可哀想ですよ」


「ま、まあ美琴様がそうおっしゃるのでしたら軽口は控えめにして差し上げますけど」


美琴に窘められ、ムースは素直に応じた。


不動は息を荒くして少しだけ上体を起こそうとするが、力及ばず再び倒れる。


美琴は彼に寄り添うと、毛布をかぶせる。


「ちゃんと寝ていない風邪の治りが遅くなってしまいますよ」


「ダメだ。ガキ共が俺を待っているのだ。俺がいなければ今年の節分はどうなる?」


この日は節分。不動は鬼の役を引き受け、子供達から豆を受けるのが毎年の恒例行事になっていた。しかし彼は高熱であるし風邪を子供達に移すわけにもいかず無念さだけが募っていく。


「保育園のガキ共が俺を待っているのだ」


不動の懸命な様子を見た美琴は真剣な顔をして。


「それでしたら今年は不動さんの代わりにわたしたちが鬼の役を務めてみせます!」


「わたし達って・・・・・・美琴様、まさかわたくしもカウントしていますの!?」


「はい」


満面の笑顔で頷く美琴にムースは口の中でブツブツと文句を転がしながらも承諾し、こうして今年の保育園にはふたりの鬼が現れることになった。


更衣室。衣装に着替えたふたりは全身鏡の前に立つと恥ずかしさで赤面した。


彼女達は虎柄のビキニに棍棒を持った姿で立っていたからだ。


「さすがにこの衣装は大胆過ぎますね・・・・・・」


「全くですわ。わたくしがどうしてここまで肌を見せないといけないのですの!」


口では不満を言いながらも、内面では幸福に包まれていた。


ああ、水辺ではないとはいえ、不本意であったとしても美琴様の麗しい水着姿をこの目に焼き付けることができるなんて光栄の至りですわ。


これは不動様に感謝してぜひとも風邪が全快したら丸焼きにして差し上げませんと。


「ムースさん、どうかされましたか?顔が赤いですよ」


「美琴様!いえ、なんでもございませんわ!ちょっと熱いので赤くなっただけですわよ」


「そうですか」


鈍感な美琴にムースはほっと胸を撫でおろす。


そして更衣室からふたりは子供達の待っている戦場へと飛び出していった。


「鬼は外―!福は内―!」


お馴染みのフレーズを口にしながら容赦なく美琴とムースに豆を投げつける。


まるで機関銃のように四方八方から飛んでくる豆の攻撃を棍棒で防ぎながら、美琴はムースに耳打ちをする。


「ムースさん。子供達に絶対に怒ってはいけませんよ」


「わかっていますわよ」


口では応じるもののムースは歯をギリギリと噛みしめ、まさに般若の形相だ。


そして美琴の顔面に豆が直撃した瞬間、ムースの怒りが噴き出した。


「玩具の分際でよくも美琴様の顔に豆を投げつけてくださいましたわね。この借りは百倍にして返して差し上げますわよ!」


ムースは能力を解放して風船の棍棒を本物に作り替え、怒りに任せて振るう。


大きく弧を描いて振るわれた棍棒は壁に亀裂を走らせる。


突然の事態に子供達の顔が蒼白となる中、ムースは棍棒を振り上げ、本気で叩きのめそうとする。


このままでは楽しいはずの節分が台無しになってしまう。


美琴はすぐさまムースの棍棒を受け止め、膠着状態に入る。



「ムースさん、落ち着いてください!」


「しかし玩具達は美琴様の顔に!」


「良いのです。今日の私は悪役の鬼として来ているのですから。鬼が攻撃されるのは節分として当然ですよ」


美琴の優しさに冷静さを取り戻したムースは再び気合を入れ直し、こほんと咳払い。


「ちょっと取り乱してしまいましたが、今は大丈夫ですわ。さあ、子供達、私に豆を投げつけるのですわ!」


ムースは棍棒を投げ捨て手を大きく広げてノーガードの体勢に入る。


子供達の恰好の的となった彼女はこれでもかとばかりに豆を投げつけられるが怯まない。


「わたくしが盾となることで美琴様が守られるのなら、このくらい・・・・・・っ!」


「ムースさん、カッコイイですよ!」


「美琴様がわたくしにお褒めの言葉を!こんな豆など何発でも耐えられますわよ!」




美琴の勘違いで一層に活躍したムースの頑張りで豆まきは大成功で幕を閉じるのだった。

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