カイザーさんの出した条件です!
HNΩさんとの激闘が終わったわたし達はカイザーさんの家に行き、彼にどうしてここに来たのか経緯を説明しました。
彼はわたし達の話を聞いてもじっと黙ったままでしたが、やがて重い口を開きました。
「君達のことも、スター流が危機に陥っていることもわかった。だが、スター様からの命令とはいえ、私がこの地を離れることはできそうにもない」
「どうしてですの!?」
ムースさんがテーブルから身を乗り出して訊ねます。
彼女にとっては首に取り付けられた爆弾を解除してもらうことと、減刑を約束されているのですから任務が達成できなければずっとこのままで生きていかなくてはなりません。
それはわたしにとっても彼女自身にとっても辛いことです。
ですが、ここは落ち着いてカイザーさんの言い分を聞いてみることにしましょう。
「私としても君達に協力したいが、不動とジャドウが私の復帰を認めてくれないだろう。
彼らが言うには『お前は長く最前線で闘いすぎた。地球を守り、この星のために尽くした半生を送ったのだから、そろそろ引退して穏やかな余生を過ごして欲しい』とのことだ」
「それでカイザーさんは人里離れたこの家で生活しているのですね」
彼は頷き。
「ここなら敵が襲ってくることも無く穏やかに過ごせる。
しかし、彼らの折角の申し出を受け、穏やかな生活を過ごしつつあっても、私の身体は人々の危機を見過ごすことができないでいる。
地域を限定して闘ってはいるものの、それを彼らに知られたら叱られるだろうな」
カイザーさんは自嘲的に笑い、コーヒーを一口飲みました。
コーヒーカップは普通サイズなのですが、彼の巨大な手と比べますと、まるでおちょこぐらいの大きさしかなく、自然と笑みがこぼれそうになります。
ですが、彼は本当にこれでいいのでしょうか。
現に私達がいる居間でさえ、彼は窮屈そうな思いをしています。
レストランで儲けたお金は大半を恵まれない子供達に使用したので資産が無いとのことですが、長年に渡り世界の平和のために活躍してきた方がこれほど生活しづらい環境にいるのは、あまりにも不憫です。
「カイザーさん。無理を承知で訊ねます。もう一度、スター流本部に戻っていただけませんか?
そうすれば窮屈さともさよならできます。それに、ムースさんを救うことにもなります。ジャドウさんや不動さんはわたしが説得しますから、どうかお願いします!」
「わたくしからもお願いしますわ。自分のためではなく、美琴様のために」
何ということでしょう。
ムースさんがわたしと一緒に頭を下げました。
彼女はいつも高慢で物事を頼む際にも、さも当然と言った態度でしており、頭を下げることなどありませんでした。
その理由がわたしのためにというのも他人の気持ちに共感できるようになった心情の変化とも受け取れますし。最も、「美琴様のために」をやたらと強調していたのが気にかかりますが。
彼は腕組をして暫し考え込んでいましたが、やがて立ち上がり。
「君達の熱意に敬意を表し、スター流に赴いてみよう。復帰はその後に考えようかと思う」
「ありがとうございます!」
「但し、一つだけ条件がある。
それは、君達が先ほど出会った少女のことを決して口外しないことだ」




