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信じられません!不動さん、敗北の過去!!

スターさんがいなくなった今、わたしと不動さんの二人でムースさんを止めなくてはなりません。


それにはまず、敵を知ることから始まります。


敵の情報を集めることで、対処できることもあるからです。


「不動さん。あなたがムースさんについて知っていることを全て教えていただけませんか」


「知ったところで、半人前のお前如きに止められるような相手ではない」


「そうだったとしても、今はわたしと不動さんしかいないのですから、力を合わせるのが最善の策だと思います」


「それも一理ある。それでは、万が一のために、お前に知っていることを教えてやるとしよう」


不動さんは真っ二つに割れたソファの片方に腰を下ろして、話始めます。


「ムースは貴族の末裔でな。

自分以外の者を全て断末魔や鮮血で自分を楽しませる玩具としか思っていない。

奴の冷酷無慈悲さは筋金入りで、良心など欠片も持ち合わせていない根っからの極悪人だ。

奴は拷問器具を無から生成する能力の持ち主で、能力を使って無差別に拷問をし、多くの者を惨殺した。

警察や軍隊でも歯が立たず、遂には俺とジャドウが動くことになった。

奴が住居としていた古城に突入し、一気に往生させる予定だった。だが、俺の身体に異変が起きた」


「異変?」


「奴と対峙した途端に、全身の力が急激に弱体化したのだ。今でも理由はわからん」


「それで、どうなったんですか!?」


「俺は奴に文字通り玩具にされた。

マシンガン付きの傘で蜂の巣にされ、殴られ蹴られ、鞭で打たれ……完全敗北を喫した」


不動さんが敗北した。彼からその言葉を聞いたわたしは心底驚きました。


肉体を極限まで鍛え、敗北とは無縁に思える不動さんにも敗北の歴史があるなど、今まで考えたことさえありませんでした。不動さんは背中を丸め、先ほどよりも少し声を小さくして話を続けます。


「惨めだった。無力だった。

これまで最強だと信じ、自分より強い者などこの世に存在するはずがないと信じ切っていた俺が、身の丈の半分ほどしかないガキに翻弄される。

今まで行ってきた修行は何だったのかと、正直言って心が折れそうになったよ」


「それで、ムースさんは……」


「奴はジャドウが捕らえた。それもごくあっさりとな。

手柄は彼のものとなり、俺の敗北はジャドウが言わなかったことで無かったことにされたが。

よりによってジャドウがいないこの状況下で奴が現れるとは、想定外だった」


わたしは彼にかける言葉が見つかりませんでした。


必死で努力して最強とも言える強さを手にした彼が、初めて味わう挫折と屈辱。


積み重ねてきた努力が否定され、敵に完敗を喫した瞬間、おそらく彼の心の中で何かが音を立てて崩れたかもしれません。


ですが、彼はその後もぐれることなく、方法は過激であろうとも人々の平和を守るために自分にできることを精一杯がんばろうとしている。


何と立派なことでしょう。


わたしが同じ立場なら、きっと心が折れて立ち直れないと思います。

わたしは後ろから彼の眼前に歩み寄りました。


当時のトラウマを思い出したのか、彼はソファの上で体育座りをして小刻みに身体を震わせています。

そんな彼をわたしは優しく抱きしめ、言いました。


「不動さん、ありがとうございます。

あなたのお話のおかげで、多くのことがわかりました。今日はもう、休みましょう」


「……それがいいだろうな」


彼はそっとわたしの身体を離し、部屋を出て行きました。


誰もいなくなった部屋で、ムースさんの攻略を考えます。


先ほどのテレビの映像から見るに彼女の身体能力はスター流の門下生と同等の力を持つと見ていいでしょう。


彼女が生まれつきの能力者が後天的に得たものかは不明ですが、仮に後者であるならば、スターさんが激しく動揺していたのも理由がつきます。


仮にスターさんと彼女の間に何らかの関わりがあって、スターさんが彼女の本性を見抜けず超人キャンディーを渡し、武術を指導していた場合、スターさんは彼女を強化し大規模な大量虐殺の間接的な協力者となるわけですから、動揺するのも頷けます。


それに彼女は見た目はとても可憐でしたので、女の子を好むスターさんならあり得ない話ではなさそうです。


彼女がどのようにして拷問を好むようになったかは謎ですが、少なくとも人に対する拷問を三度のご飯よりも好むことは間違いないようです。


それなら、彼女を攻略できるかもしれません。


少々荒い方法かもしれませんが、試してみる価値はありそうです。


この方法は実際にムースさんに会うまでは頭の中に閉まっておくことにしましょう。


明日は忙しくなりそうですから、今日は早めに眠ることにしましょう。


ですが、毛布をかぶってもわたしは中々眠りに就くことができませんでした。


ムースさんにより無残に殺されていく罪のない人々の姿が頭に浮かぶ度に、胸が苦しくなります。


できることなら、今すぐにでも彼女を止めに行きたいのです。


ですが、それには不動さんの心身の回復を待たなくてはなりません。


一人では成しえないことですから、彼の協力はどうしても必要なのです。


みなさんはスター流のことをヒーロー団体なのに何を手間取っているのだと苛立ちを感じるでしょう。


ですが、その怒りはわたしにぶつけてください。


スターさんや不動さんは何も悪くないのですから。


ムースさんの残酷な行為に苦しんでいるみなさん、もう少しだけ待っていてください。


必ず、私達は彼女を止めてみせます。

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