人類は玩具ですわ!ムース=パスティス登場です!
ムース=パスティスは空中を浮遊しながら、次々に撃ち込まれる砲弾を躱し、拳や蹴りで戦闘機を追撃していった。
地上に落下し爆発音を上げる機体に彼女は微笑した。
下から撃ち込まれる砲弾は弾を掴んで投げ返すことで対処し、戦車を破壊していく。
陸と空の兵器を使用しても彼女の身体には傷一つ負わせることはできない。
一方の自分達は攻防で被害が増していくばかり。形勢は不利だ。
するとムースがふわりと愛用の白い日傘を使って地上へと降り立った。
長い桃色の髪が風に靡き、整った顔立ちを見せる。
彼女は着ているコルセットの裾を掴んで丁寧に会釈をすると口を開く。
「皆様、わたくしの遊び相手になってくださり、嬉しく思います。
これから皆様の悲鳴を聞き、赤い血を浴びると考えますと、興奮が止まりませんわ。
それでは、始めましょう。わたくしの可愛い玩具達」
彼女は満面の笑みで折りたたんだ白い傘の切っ先を向け、そこから黄色のエネルギー弾を発射した。
機関銃の如く撃ち込まれたそれは、戦車を吹き飛ばし、シールドで防御した警官隊達を大きく後退させる。
ムースは素早く彼らの背後に回ると、能力で生成した大鎌を振り上げ、彼らの首を一振りで刈り取っていく。
胴体から分離された首がゴロンと地面に転がり、胴体は血飛沫をあげて倒れ伏す。
流れ出る血は地面を赤く染め上げ、その様子を見た彼女はにっこりと微笑む。
「断末魔は聞けませんでしたが、良い鮮血を見せていただきましたわ。では、次はどうしましょうか」
鎌を消し、今度は鞭を虚空から出現させる。
「ヒッ……」
凄惨な光景に恐れをなした一人の警官が、使命を放棄し逃走する。
だが、これほどの光景を見せつけられたら誰だって自分の命を優先するであろう。
彼の行為は人間であれば当然のことだった。
しかしムースはその場から動かずに、鞭を伸ばして彼の首に巻き付け、そのまま引きずって自分の足元へ連れ戻す。
鞭を解き、腰を抜かした男にムースは微笑を浮かべて優しい手つきで頭を撫でる。
「怖がらなくてもいいですわよ。あなたには楽しいゲームに付き合ってもらうだけですわ」
「楽しいゲーム?」
「ダイナマイトゲームですわ!」
ウィンクを一つして指を鳴らすと、男の身体は堅くロープで巻き付けられ、隙間からはダイナマイトが入れられる。
ムースは懐から取り出したマッチに火を付け、ダイナマイトの導火線に次々と火を付けていく。
「導火線に火を付けましたから、それを消してくださいな。
早く消さないとあなたの身体は跡形もなく消えてしまいますわ」
「た、助けてくれぇ!」
「助かりたいのでしたら、そこの井戸に飛び込むといいですわよ。ダイナマイトが爆発するのが先か、あなたが火を消すのが先か、どちらが勝つのか見ものですわね」
彼女が指を差した先には古井戸があった。
男は自由の利く両足でなんとか立ち上がると、無我夢中で井戸へと駆ける。
「死にたくない。死にたくないよぉ!」
涙を浮かべ必死の形相で走る男。どうにか井戸に辿り着き、火を消そうと中へと飛び込もうと中を覗くと、そこには水は無かった。
「そんな。どうして! 嘘だ、嘘だ! 嘘だあああッ!」
困惑し青ざめた顔で自らの身体を見ると、ダイナマイトの導火線は既に燃え尽きようとしていた。
「嫌だああああ! 助けてくれえええええッ!」
その言葉を最後に大爆発が起き、男は水の無い井戸ごと跡形もなく消滅した。
それを見たムースは満面の笑みをつくり。
「綺麗な花火ですわ。やはり定期的に人を花火にして目の保養をしませんと、芸術を見る目がなくなってしまいますわね」
彼女は既に息絶えた警官たちの身体をヒールで踏みつけつつ、スキップしながらその場を去る。
「今日は暑いですから、冷たいアイスでも食べちゃいましょう。その後に、この街を火の海に変えてキャンプファイアーの代わりにして差し上げますわ」
バレエを舞うかのような軽やかな回転をし、アイス屋へと足を進めるムース。
すると、彼女の前に一人の男が現れた。
金髪に碧眼、茶色い三つ揃えのスーツを着こなした紳士、スターだ。
ムースは彼の姿を見るなり丁寧な会釈をして。
「スター様、ご機嫌ようですわ。こうして会うのも久しぶりのことですわね」
「そうだね」
「それで、わたくしに何か用事でもあるのですか」
「君に伝えたいことがあってね。明日の朝、わたしの弟子が君の前に現れ、勝負を申し込むだろう。だから、その時までは人を殺めないで欲しいんだ」
「何故ですの?」
小首を傾げるムースにスターはにっこりと微笑み。
「弱い者いじめをするよりも、強い相手と闘った方が君としても痛めつけ甲斐があるんじゃないかと思ってね。
どうかな、わたしの提案、受け入れて貰えるかね」
彼女は顎に手を当て、ほんの少し考えた後、小さく頷く。
「わかりましたわ。本当はここを火の海にする予定でしたけれども、あなたのお弟子さんが来ると言うのでしたら、その条件を飲んで差し上げますわ」
「ありがとう」
「ところでスター様。そのお弟子さんの中に、あの方は含まれているのですか」
「あの方……ああ、彼のことね。もちろんだよ」
「まあ嬉しい! あの方と雌雄を決することができるかと思うと心が躍りますわ!」
手を組み、キラキラと目を輝かせるムースにスターは踵を返し、手を振った。
「それじゃあわたしはこれで失礼するよ。明日をお楽しみに」
彼はその場で姿を消し、ムースだけが残された。
彼女は口元に微かな笑みを浮かべ、呟く。
「不動様。今度こそあなたを破壊して差し上げますわよ」




