わたし、サッカーボールじゃありません!
忍者の首を絞める力が強くなるにつれ、美琴の視界は霞んできた。
激痛に耐えながらも敵の腕を掴んで首から引き離そうとするものの、忍者の力は先ほどと比較しても倍以上に強くなっているだけでなく自分の腕は出血によるダメージで本来の半分の力も発揮することができないでいた。
忍者は彼女がもがき苦しむ様子を舌なめずりをして見ていたが、やがて仲間に告げた。
「者共、そろそろこの女を始末するとしようぜ」
「承知!」
彼らの返事を聞いた隊長はガラ空きの美琴の腹に膝蹴りを打ち込む。
「か……は……」
激痛で前のめりになって呻く彼女を肘打ちの追撃で地面に押し倒すと、背を踏みつけ、腹を蹴り上げる。
軽量の美琴が悶絶しながら転がると、彼女を待っていたのは銀色の帯を締めた忍者だ。
彼は容赦なく美琴の身体を蹴飛ばし、金色の帯を締めた忍者にパス。
飛んできた彼女を隊長に蹴り上げ、それを再び銀色の忍者に……という風に三人はトライアングルを描いて美琴の身体をまるでサッカーボールの如くに蹴って蹴って蹴りまくった。
美琴の服は傷つき、腕や足は紫色の打撲が出来る。
やがて狂気の遊びに飽きた忍者達は今度は彼女の服の胸倉を掴んで強引に立ち上がらせ、代わる代わる彼女の顔面を殴り始めた。
殴られる度に顔を歪め、苦痛のあまりに薄らと涙を浮かべる彼女の姿を嘲笑い、更に攻撃を続ける忍者達。殴打を幾度も受けたこともあってか、彼女は口が切れ、真っ赤な血がポタポタと血に落ちていく。
両腕と口の出血が酷く、その姿は痛々しさが漂うが、忍者達はいかに抵抗力を失った少女であろうとも、スター流の一員という理由だけで容赦なく彼女に打撃を与え続ける。
美琴は殴られながら彼らの考えを悟った。
恐らく彼らは自分が息絶えるまで攻撃を止めることは決してないのだと。
「もう、やめてください……」
カの鳴くような小さな声で訴えるとリーダーを除く忍者達は仮面の奥で笑い声を上げた。
「やめてくれ、だとさ」
「誰がお前の言うことなど聞くか。反撃したのはお前だろうが」
「お前が俺達の仲間を痛めつけているから、仕返しをしているのみ。文句を言われる筋合いはない」
忍者達の言葉の前に、美琴は首を垂れた。
彼らから攻撃を仕掛けてきたとはいえ、応戦し、結果的に彼らの仲間を叩きのしてしまった自分に弁解の余地はない。
ならば、彼らの仲間を傷つけてしまった償いに、彼らの気の済むまで殴られた方が良いのではないだろうか。そんな考えが頭を掠め、心身共に完全敗北しそうになった刹那。
「一対三なんて随分卑怯な真似をしてくれるじゃないか」
声がしたかと思うと、忍者達と美琴の間に何者かが割って入った。
オレンジ色の三つ編みに整った顔立ち、中国風の拳法着を身に纏ったその姿は――
「李さん!」
「助けにきたよ。美琴さん」
彼女はそう言って美琴を背で庇うと三人の忍者を睨む。
「君達には熱いお仕置きをしてあげなければならないようだ」
「女が一人加わった程度で我らに勝てるとでも?」
「私を舐めるなよ」
李は両の拳に炎を纏い、銀色の忍者に強烈な一撃を加えた。
「火炎拳!」
殴られた忍者は顔面の左半分が解け、仮面とその下の人の化けの皮の中から銀色の素肌をした鬼の形相が露わになった。




