忍者軍団登場!でも、私は闘いません!
李達が忍者軍団を相手に激闘を繰り広げている頃、美琴はビルの裏口から外へ出て、近所にあるスーパーへと向かっていた。
理由はもちろん、スターに頼まれた買い物をするためである。
「皆さんが闘っている時に、わたしは買い物などをしていいのでしょうか……」
自問する美琴であったが、スター流の修行を開始して一か月かそこらの自分が闘いに赴いたところで足手纏いにしかならないだろうとも自覚していたので、買い物係としての役割をきちんと果たすことが自分に与えられた使命であると気を取り直して、少しでも速くスーパーへ辿り着きたい一心で、歩く速度を速めた。
だが、曲がり角に差し掛かったところで、忍者達が左右の塀から飛び出し、彼女の行く手を塞いできた。人数は六人であり、横一列に並んでいるので彼らをかいくぐる訳にもいかない。
だが、ここを超えなければスーパーに行くことはできないのだ。
彼女はマイバックを地に下ろし、格闘の構えをとった。
「申し訳ありませんが、そこを退いてくださいませんか」
「そうはいくか。俺達はお前がスターコンツェルンビルから出てくるのをこの目で見た。それは即ち、お前がスター流の者であるという何よりの証になる!」
「ビルから出てきたという理由だけでスター流の所属と考えるのは早計ではないでしょうか」
「では、その構えはなんだ?」
「えっと……これは、そのぅ……」
構えを指差され指摘された彼女は赤面し、狼狽える。
それを見た忍者軍団のリーダー格はホッケーマスクを取って髭面の素顔を露わにすると、ニイッと邪悪な笑みを零した。
「ボロが出たな。者共、殺れぃ!」
彼の号令により、美琴目がけて残りの四人が一斉に飛びかかっていく。
彼らは得物である槍の切っ先を突きつけ、彼女を一刺しにしてやろうと襲いかかる。
「闘いは好まないのですが、仕方がありません。これも修行と割り切りましょう」
「何をブツブツ言ってやがるッ!」
紫色の帯を締めた忍者が槍を突いてくるが、それを美琴は紙一重で避けると槍の柄を片手で掴んで、忍者ごと上空に持ち上げ、怪力にものを言わせて投げ飛ばす。
吹き飛ばされた忍者は五メートルほど吹き飛び尻餅をつくものの、すぐに起き上がって再度特攻を試みる。
他の忍者達も彼女を仕留めるべく、四方を取り囲んで、穂先を突き出す。
「ハッ!」
すんでの所で空中に跳躍した美琴は、四つの穂先の上に絶妙なバランス感覚で乗ると、そこから細い柄を足場にしてトンボを切って一人の黄色い帯を締めた忍者に近づき、彼の喉につま先蹴りを見舞った。
「ゲフォッ!」
喉に鋭い蹴りを食らった忍者は嘔吐物を吐き出し、槍を手放し失神した。
残る忍者はリーダーを合わせて五人。
「このアマッ」
青い腰帯の忍者が連続突きを見舞うが美琴はそれを上体反らしで全て躱すと、一気に間合いを詰めて寸勁を食らわせる。
後方へ吹き飛ばされた青忍者は電柱に背中を打ち付け、気絶。
続いて槍を見舞ってきた赤忍者の一撃を軽々と回避した美琴は倒立をして相手の首を自らの両足で挟み込み、強靱な脚力を利用して空中へ舞い上がらせると、自らも彼を追って跳躍。
落下していく最中にパイルドライバーに極め、忍者の脳天を思いきりコンクリの地面に衝突させた。
「グボフェ……」
その威力に忍者の仮面は粉々に砕け、額から血を噴き出して、がっくりと動かなくなる。
ここで美琴は手を下ろし。
「あなた方はこれで四人となりました。これ以上の争いは無益です。わたしが倒した彼らも気を失っているだけで、命に別状はないでしょう。身を引くなら今が良いかと思われます。どうしますか?」
すると忍者のリーダーは目を血走らせ。
「ふ、ふざけるな! 敵に情けをかけられるような屈辱を受けて、おめおめと引き下がれるか。そのような真似をすれば我らが幹部に粛清されるわッ!」
「わたしは自分の力を制御できません。
これ以上闘えばあなた方の命を奪ってしまうでしょう。それでも、あなた方は闘いますか?」
「上等だ。殺れるものなら殺ってみろ」
残る三人は帰還して上司に粛清されるという確実な死よりも不確定な力の美琴との戦闘を選んだ。
相手は華奢な少女である。
先の三名は油断しただけであり自分達が本気で挑めばこのような少女などものの数ではない。
彼らはそのように結論付け、今度は槍以外の多彩な武器で応戦しようと策を練った。
最初に動いたのは緑忍者だ。
彼は煙玉を地面に打ち付け、美琴の視界を煙で包み込む。
全方位が濃く白い煙で忍者の姿を見失い、視線を動かす美琴だったが、彼らの姿は見当たらない。
彼女は自らの胸に手を当てて、小さく息を吐き出した。
「よかったです。彼らはわたしを煙に巻いて逃げ出したのですね。
本当に良い選択をしてくださり、感謝します」
「甘いぜ、嬢ちゃん!」
「!?」
彼女が安堵した刹那、後方から声がした。
驚き振り返ろうとしたものの、完全に気を抜いていたこともあり、初動が遅くなってしまった。既に忍者は刀を振り上げている。腕で防ごうとするものの間に合わず、刀を受けてしまう。
切り裂かれた腕からは鮮血が噴き出し、激痛のあまり、彼女は空いた手で負傷箇所を抑える。
だが、それは彼女が両腕を封じられたのと同じ行為だった。
美琴は残る三方向からも殺気を感じ取ることができたものの、激痛で視界が霞み始めている。
流れ出る汗が、筋となって細い顎を伝って地面に滴り落ちる。
「嬢ちゃん。アンタはよくやったよ。だが調子に乗り過ぎて、油断し、俺達の罠に嵌ったと言う訳さ。まあ、切り刻んでソーセージにでもして食ってやるから安心しな」
そう語るリーダーの顔がぐにゃりと歪んだかと思うと、緑色の肌に尖った耳、額からは二本の鋭利な角の生えた異形へと変わってしまった。
「……ッ!?」
相手のあまりの変貌ぶりに目を見開き驚愕することしかできない美琴に異形の忍者は鍵爪の生えた緑の腕を伸ばし、彼女の細い首を掴む。そして徐々に力を加えていく。
「さぁて、何秒耐えられるかなぁ……?」




