李さん大活躍!わたしは買い物係……ですか!?
今回は戦闘シーンがありますので三人称で執筆しています。
千人対四人。普通に考えればどうあがいても勝ち目のない闘いである。
そのため美琴はスターに意見を唱えたものの、彼は美琴に「敵を倒すついでに夕飯の買い物を」と言って札束を渡すと瞬間移動で消えてしまった。
ジャドウや不動によると他のスター流メンバーも支部から応援に来ることはできないという。
たった四人だけでこの街を守り切らなければならない。
美琴が自分に押し付けられた責任を感じる中、ジャドウが口を開いた。
「小娘よ。敵の殲滅は吾輩達でやる。お前さんはスター様から言いつけられた買い物でもしておけ」
「でも、三人だけで大丈夫なのでしょうか。わたしにも何かお力になれることが――」
「お前さんの力を借りずとも、我らは歴戦たるスター流の戦士。
雑兵など瞬く間に全滅してご覧に入れよう」
彼はマントを翻し、先陣を切って歩き出す。その後に続く李と不動。
一人会長室に残された美琴はスターから預かった札束を握りしめ、呆然とした表情で彼らを見送ることしかできない。
エレベーターを降り、ビルの出入り口付近に来た時、ジャドウが李に言った。
「李よ。お前さんにプレゼントがある」
「プレゼント、ですか?」
「左様。今日のカード占いの結果だ」
彼が李の手に渡したものは一枚のカードだった。
表面を見せているので、結果は裏返さないとわからない。
ジャドウは占いが得意であり、特に彼のカード占いは外れたことが一度も無いものだった。
彼は基本的にスターの運勢しか占わない為、こうして他人に占いの結果を渡すことなど滅多にないことだった。
それだけに何かあると勘ぐった李だが、運勢はカードを見て見なければわからない。カードを捲り、そこに記されていたイラストを見た李は、その一瞬で彼が何を言わんとしているのかを察した。
「……なるほど」
「今日の占いの結果は服の胸ポケットにでも入れて記念に大事に残しておくといい」
「……そうしますよ」
彼女は何処か影のある笑みを浮かべて胸ポケットにカードを入れ、二人と共にビルを出た。
既にビルの周囲は多数の忍者達に取り囲まれていた。
彼らを倒さんと真っ先に動いたのは李だ。
近くにいる忍者の一人を裏拳で昏倒させ、続いて襲い掛かってきた忍者には腹に蹴りを撃ちこむ。
そして服の袖からヌンチャクを取り出し、振り回すことによって出口付近の忍者達を次々に蹴散らしていく。
だが、忍者達はいくら倒してもまるでアリの大軍のように無限に押し寄せてくる。
接近戦では有利な李も忍者達が雨霰と投げつけてくる槍の投擲の前には弾き落とすだけでやっとの状態だ。他の二人は動く気配を見せないので自分一人でこの難局を乗り切るしかない。
かくなる上は発動するしかない。
李は掌に氣を集中させ火の玉を作り出すと、それを忍者達目がけて投げつけた。
真っ赤に燃え盛る火の玉が地面に落ちると大爆発を引き起こし、彼らは跡形もなく消え去った。
「な、なんだコイツ!?」
「今、火の玉を出したぞ!」
怯む彼らに李はニッと笑顔を見せ。
「私の能力は炎を自由自在に操ることなんだよ。秘儀・火炎弾!」
地面を蹴って宙に舞い上がった李は、そ両の掌から次々に火の玉を敵に撃ち込んでいく。
上空から投げつけられる火の玉は戦闘機が銃撃しているようなもので飛行する術を持たない雑兵達は手も足も出ずに倒されていく。李の闘いの様子を観察していた不動はジャドウに呟いた。
「接近戦に加え、空中での攻撃も中々のもの。あの未熟だった李もここまでの戦士に成長したとはな」
「お前の節穴の目からすれば、そのような評価が妥当なのだろうが、吾輩に言わせれば奴の戦法はまだまだ未熟」
「根拠を言え」
「飛行術に加え能力を発動しての攻撃は体内のエネルギー消費を加速させる愚かな組み合わせだ。それが分からぬ奴でもあるまいに。現に奴の空中攻撃時間はあと三〇秒も残っておるまい」
空中を飛びながら攻撃を続けていた李は、ジャドウに言われるまでもなく自らの火炎弾の威力が衰えていくのを感じていた。掌の火は次第に小さくなり、やがて、全く炎が出なくなってしまった。
空中飛行も限界を迎えたのか、速度と高度が落ち始めてきた。
それを見逃すほど敵は甘くはなく、隙の生まれた彼女に一人の忍者が日本刀を手に跳躍し、空中戦を挑んできた。
逆さまに落下しながら敵の攻撃の軌道を見切り、手刀や蹴りを食らわせるものの、相手は鎖帷子を付け防御力を増しているのでダメージが通りにくい。
「ヒャアッ!」
奇声を発し繰り出された刀の一撃は李の服を掠め、拳法着の肩部分を露出させてしまう。
幸いなことに素肌に直撃しなかったものの、二撃目はどうなるかはわからない。
身を翻し地面に着地し、忍者と間合いをとる李。
弧を描くようにその場を動き相手の出方を待つ。
だが、李はこの時、無意識のうちに忘れていた。この戦闘は一対一などではないことを。
風を切る音が聞こえたかと思うと、次の瞬間、彼女の脇腹に激痛が走った。
後方に待機していた忍者の放った銃弾が脇腹を掠めたのだ。
赤い拳法着が脇腹から滲み出る血により更に赤く染まる。
李は額から冷や汗を流しながらも、前方の敵の開いた口に鉄拳をブチ込んで、相手の頭部を貫いて瞬殺。素早く拳を引き抜き、返す刀で後方の敵に拳圧でもって反撃した。
李の正拳突きから放たれる衝撃波を受けた忍者は背後にあったコーヒー店の窓ガラスもろとも粉砕される。
「……これがスター流の力だよ」
得意気に語るものの、李は腹部への負傷と度重なる能力の使用によってその体力は確実に限界に近づいていた。
傷口を抑えることにより負傷箇所を修復するものの、一対多数の闘いは李の華奢な身体に少しずつダメージを蓄積していく。
スター流のメンバーは修行により鍛えているので全員が総じて攻撃に対する耐久力が非常に高い。
加えて常人離れした人体の回復力を有している。
その特性のおかげでダメージはかなり軽減できはするものの、負傷を完全に治癒することはできないので自分でも気づかないうちにダメージを蓄積させていることがあるのだ。
李は手数の多い攻撃型の戦士である。
素早い攻撃で相手の反撃を許さない戦法を用いるが、反面、体力切れが早いという欠点を持っていた。
不動はその猛禽類の如く鋭い目でもって、彼女の負傷度がどの程度のものか見極める。
「あの状態で古傷を攻められたなら、李は危険だ。そろそろ俺が出る頃だろう」
一歩前に足を踏み出す不動にジャドウが不敵な含み笑いをした。
「何が可笑しい」
「別に大した事では無い。奴がどうなろうと戦局は変わらぬ。あのような小娘など捨てておこうが息絶えようが何も変わらんよ」
「俺は仲間を見捨てられるほど非情に徹した覚えはない」
「下らん。大した実力も無い若造が半端な能力を得て出しゃばるからあのような結果を招くのだ。李のような愚か者など、救う価値はない」
「お前はそれでもスター流の一員か!」
眉間に皺を寄せ、鋭い目つきで睨む不動だが、ジャドウはどこ吹く風でズボンのポケットに忍ばせた洋酒の瓶を取り出し、グビリと一飲み。
「仲間や友情など反吐が出る。全く、お前とカイザーは同じ穴の狢だ。李を助けて無様に返り討ちに遭いたいのであれば、好きにするがいい。吾輩は酒でも飲みながら高見の見物をさせてもらう」
「好きにしろ。俺も好きにさせてもらう!」
不動はジャドウに吐き捨てると、李の元へ超高速で向かっていった。




