おまけ
―迷子の理由―
「ところで、なんでこんなに遅くなったんですか?いつもいるような所は皆さんに探してもらったのに見つからなかったですし」
「あのね?庭園の奥の温室で蓮ちゃんに花束を作るのを手伝ってもらってたんだけど、終わったときに蓮ちゃんお仕事の時間が迫ってたの!すっごく心配してくれたんだけど、なんとかなるかなぁってひとりで帰って来ちゃって…途中で転びそうになって、転んだら花束がダメになっちゃうからってそっちを気を付けるようにしたら道に迷っちゃったぁ」
「そして、散歩がてら旧校舎の周りを探索しておった儂が凪殿を見つけ、こちらまで届けさせてもろうたわけじゃ」
「…旧校舎って正反対じゃないですか…」
凪は優秀ですが、同系統のことは同時進行で出来でも、違うふたつのことを同時に行うことは出来ません
書類という枠であれば、作成と添削、報告書と会計のまとめなどがいっぺんに出来るわけです
しかしコーヒー飲みながらやれば必ずこぼし、不要なものの破棄をすれば必要なデータも飛ばし、片付けながら仕事をすれば今できあがった書類すら行方不明になります
だから手を繋いでいないと数秒で迷子になるんです
迷子防止用のGPS付き携帯はオカンにより速攻でお取り寄せされたようです
―後日―
「おや?なにやら贈り物が?」
ゆったりとした休日を過ごすオカンの元へ沢山の贈り物が届いたようです
オカンの誕生日を知らなかった親しい友人や後輩、親衛隊などがこぞって贈ったというのはすべてのメッセージカードを開けるまでオカンは気付かないでしょう
「珍しいですね!青色のカーネーション!ああ、きっと夏希君ですね」
一番上に積まれていた鮮やかな青色のカーネーションは、希少価値が高く、花の価値を知る人には大層喜ばれる品物だそうです
花言葉は永遠の幸福
凪が作った花束とは少し離れたところに飾られ、一部はしおりを作るのに使われたんだとか
そのほかの贈り物はエプロンだったり、圧力鍋だったり、食器セットやティーセットに高性能保存容器セット、有名菓子や珍味だったりとおおよそ男子高校生が貰うものではありませんでしたが、オカンは嬉々として料理を作り、贈り物のお礼を言いながらお裾分けに行ったそうです
―さらに後日―
「あれぇ?こんなお皿あった?」
寝ぼけ眼を擦りながら起きてきて、オカンに洗顔を促された凪は食卓に並んだ美味しそうな朝食よりも、その朝食が盛られている皿に興味を持ったようです
いえ、朝食にも突っ込むべきだと思います
「この間頂いた誕生日プレゼントの中にありましてね…折角だから使わせていただこうかと」
朗らかに語るオカン、もとい悠斗は特に悪意があるわけもありません
「そっかぁ!可愛いよね!美味しそう!いただきまーす!」
「はい、召し上がれ」
なんでキッズプレートとお子さまマグがオカンの誕生日プレゼントに贈られてくるのか
なんで違和感なくそのキッズプレートに商品のようなお子様ランチを作れるのか…いえ、朝食ですが
お子さまマグを両手で持って中に注がれているオレンジジュースを飲み、白とピンクと黄色のウサギさんの柄のナイフ・フォーク・スプーンを使って食べている凪は嬉しそうです
「美味しーい!」
「あ!これ使ってくださいね」
ケチャップが落ちそうになったのをティッシュで拭き、取り出されたのはフォークやナイフと同じウサギさんの食べこぼしエプロン…
完全に幼児の食事セットですね
ここは腐っても男子校!高等部の寮!
見た目が幼子だからとそれに合わせる必要は全くないはずですが、オカンと息子は気付いていません
―後輩達の会話―
迷子の凪を届けた後のお話
「のう、朝霧?ちぃと聞いても良いかの?」
「うん?何だ周防?」
「先程凪殿と悠斗殿の前で親衛隊として話をしておったが、悠斗殿はご自分の親衛隊を認識されとらんのではなかったかのう?」
「あー、悠斗先輩は容姿的に優れているとか、あの慈しみの行動がいろんな人の心を奪っているという自覚がないからなぁ…親衛隊は俺のモノだという認識なんだ」
「親衛隊の隊長に名をあげておるのにか?」
「説明してもからかわれてると思っているみたいでな…会長から承認してもらってるから本人の意思確認をしていなくても隊の申請許可は下りたし、俺と副隊長が入隊と定期監査で怪しい奴は報告してるから実害に至ったことはない」
「ほぉ…流石は生徒会長親衛隊とともにすべての親衛隊の中でも秩序と親衛対象への評価が最も高いと詠われとるものだのう」
「そりゃどうも…周防も大変だなぁ?あの不良どもを束ねてるんだろ?」
「いんや、なに…儂がやっておるのは微々たることじゃ…殆どを押し付けて悠々やっておるんじゃからな」
後輩達は役持ちが多いようです
知らぬはオカンのみ