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創造のSILVER  作者: 雪野
プロローグ
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1/80

Orphan File

 この世界は、未来を諦めた。


 大量破壊兵器。暴走した自律兵器。制御不能になった創造物たち。人類が積み上げてきた“創造”は、ついに自分たちを滅ぼす側へと傾いた。創造が破壊を生む──その事実を突きつけられたとき、人類は“未来を作ること”そのものを恐れるようになった。



 ――いま必要なのは創造ではなく、復興と維持だ。



 こうして世界は、前へ進むことをやめた。

 文明はゆっくりと硬直し、誰も未来を描こうとしない。描けない。ただ、壊れないように、今をつなぎとめているだけだ。




 そんな世界で――自分は一体、何を創ってしまったのだろう。




 その問いが胸の奥で鈍く響いた瞬間、 視界が、現在へと引き戻される。



 銀髪の彼女の頬を、涙がひとつ、静かに伝い落ちた。

 だが、涙が滲むのは左目だけだった。そう、設計されている。


 反対の右目は、虹彩の代わりに薄い金属板が静かに回転し、光を受けて細い線が淡く走った。そのわずかな瞬きだけで、“人間の目ではない”ことが分かる。それでも──彼女の表情は、痛いほど人間らしかった。


 自分は、その瞳をただ見つめていた。


 何か言わなくては。


 そう思うのに、喉がひどく乾いて、言葉が出てこない。


 足元には、無数の「骸」が散らばっていた。金属片、引き千切られた配線、黒く焦げた基板。それはまるで機械の臓物を床にぶちまけたような、無惨な光景だった。断線したケーブルの先端が、断末魔のような火花を散らしては消える。鼻を突く焦げた匂いが、重く大気に澱んでいた。



「…………何をつくつくったの……?」



 彼女の震える声。 怒りとも悲しみともつかないその震えが、胸の奥に刺さる。


 自分はようやく口を開いた。



「……わからない」



 紡ぎ出した言葉は、自分でも驚くほど弱く、頼りなかった。 まるで、自分自身の輪郭さえも揺らいでしまったかのように。


 頬を、熱い何かが伝う。

 それが自分自身の流した涙だと気づくまでに、わずかな時間を要した。


 彼女は、崩れるように抱きしめてきた。


「……お願いだから……置いていかないで」


 その声は、世界の終わりを拒むように強かった。腕が必死に自分をつなぎとめようとしている。


 自分はそのとき、何と答えたのだろう。

 彼女をひとりにしたくない。その気持ちだけは、確かに胸にあったのに。


 なのに──


 この記憶が、一体誰のものなのか。


 今の自分には、もうわからない。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

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