表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
335/340

SOS

「そういうこと!まあこれもほぼ推測だけどねー!」


緑川はあっけらかんと言い放つ。


「確かに不確定ではあるが、もしそのジェットオレンジとやらが怪人会に潜入している、ないし嫌々付き合わされていた場合。こちらの仲間に引き入れることができるんじゃないか?」


ウリュウが言うので、私は頭を悩ませた。

多々良が怪人会に潜入している……?なんだか引っかかるな。


私は焔との模擬戦前、多々良が言っていたことを思い出す。


『俺も……何度も塗り替えようとしたんすよ。救おうとしたものを取り溢して、それでも諦めずに泥の中であがいて……でも、ね?所詮、無駄な足掻きっすよ。』


あいつには『仲間を助けに怪人会に入った』というより、そうだな……まるで……


『助けようとして自分まで闇に取り込まれた』みたいな投げやりさを感じる。


諦めと、劣等感と、苛立ち。

多々良の真っ黒な瞳は、そんな感情を孕んでいたように思う。


灰原さんも難しい顔をしながら

「多々良橙也とは以前話しましたが……かなり怪人会に染まっていて、嫌な奴という印象が強いです。俺に能力まで見せて、脅して……きて……」

そう、言いかける。


見せて……脅してきた……?


「!」


「え、なになに2人とも!そこだけで何かに気付いた感じ出すのやめてくんない!?」


「……なるほど、僕も今理解した。ユウヤ、灰原透の能力はミカゲくんから共有あったよな?なんだったか覚えてる?」


「えーっと……確か見た相手の能力をコピーできて……あっ!」


「そう。俺の能力は既に怪人会全体に共有されています。なのにまだ幹部になるかも分からない俺に、ただ能力を『見せてきた』。

まるでコピーしろと言わんばかりの行動です。」


「迂闊だな……リリア以上に。」


「そういえば……多々良、私に『連絡しろ』ってメモみたいなの渡してきたのよ。あ!あった、これ!」


私は鞄を漁ると、ポケットからくしゃくしゃになった紙を取り出した。


「リリアちゃんを舐め腐ってた可能性もあるけど?普通敵に連絡先なんか教えないよねぇ、バレたら怒られそうだし。」


緑川が苦笑しながら言う。

妙だ……「多々良橙也」の行動は、あまりにも迂闊すぎる。


それで言えば、緑川に情報を盗まれたことだってそうだ。


「……ねえ、緑川?その情報を抜いた時の具体的な流れを教えて。」


「えー……目を覚ましたら、部屋の物が動いてるのに気づいてー、店員に憑依して監視カメラを確認。あいつが僕の個室に入ってたからそのまま声掛けした後バックヤードに呼び出し……憑依して、情報ゲッツ!」


聞けば聞くほどおかしい。

多々良を若葉さんの言う緑川を付け狙っていた人間だと仮定して。


長い間バレずに監視できていたなら、緑川の能力にも何かしらの予想がつくはず。

でも多々良は人目のない場所で緑川と一緒になることを選んだ。


ミカゲさんや若葉さん、緑川を尾行できる程の人間がどうしてそんなミスを……?


「まるで……情報を抜いて下さいとでも言いたげなムーブだな。」


ウリュウが緑川の話を聞いて、そう口にする。


「もしかして……助けを求めてる……?」


私の口から不意に零れた言葉に、全員がぴくりと反応する。


「多々良と話した時、思ったんだ。あいつはチームメイトを助けに怪人会に潜入してる、っていうより……助けようとしたけどダメでした、もうお手上げですって感じだったの。

私にメッセージを渡したのも、灰原さんに能力を見せたのも、緑川に情報を抜かれたのも。『敢えて』だったら……どうする?」


仮説を立てると、緑川とウリュウは顔を見合わせ、灰原さんは小さく唸っていた。


「……確かめてみるか、『多々良橙也』の真意を。」


灰原さんは、少し迷ってからそう口にする。


「できるの?灰原君。君はコズミックブルーの救出が目的で僕たちを頼ったんだよね。態々タスクを増やすことはない。これは遠慮じゃないよ、ブルーの救助を確実にしたいから言っている。」


ウリュウは、厳しい態度で釘を刺す。


「んだねー、ジェットオレンジが助けを求めててもそうじゃなくても?ブラックホール団や灰原君が助けてやる義理ってないからさ。」


緑川も、少し真面目なトーンでウリュウに続いた。


「……いえ、助けてやろうとまでは思ってませんよ。彼に言われたことも、ちょっとだけ根に持ってるしね。」


言いながら灰原さんは拳を握る。

あれだけ指輪だらけだった手には、もう何の装飾も付けられていなかった。


「あくまで俺のやることは多々良の真意を確かめることだけ。俺と違い、多々良は怪人会に席を置いている。黄瀬ゆかりの襲撃は6月30日から7月2日になりました。もし今から3日間の内に多々良との話し合いが上手く行けば……!」


「ゆかり襲撃の妨害も、凛太郎の救出もやりやすいわね!」


「なるほど、ちゃんと考えあってのことなら応援しよう。……ヒーローたちには変更された予定日を共有するのは……やめた方がいいか。」


ウリュウは宙を見つめながらそう呟く。


「どうして?コズミック7の皆には教えた方が……」


「今回の件でエリヤちゃんはきっとヒーローたちに予定を悟られないよう警戒してる。ヒーローたちがいつ休みを取ったとか、前以上に確認するだろうねぇ!襲われる本人が休みなんて取っちゃったらそれこそ大変、何で次の日程もバレたんだってパニック起こすよ〜?」


「そんなことになったらまず疑われるのは俺か凛太郎さんでしょうね。或いはどっちも消されちゃうかも……!」


冗談めかしながら目を潤ませる灰原さんの言葉が恐ろしくて、血の気が引いてしまう。

エリヤと実際に関わった灰原さんが言うとあまり冗談に聞こえないのだが……


「じゃ、各々やることを決めておこうか。灰原君は多々良とコンタクトを、ユウヤはコズミック7のシフトを洗って。エリヤが7月2日に予定変更したなら、黄瀬ゆかりは襲撃のしやすい地方への任務などを言い渡されている可能性が高い。」


ウリュウがそう言い渡すと、緑川は「ラジャ」と短く返事をする。


「ああ……でも困ったな。俺多々良の連絡先を知らないんです。」


少しわざとらしく言ってから、灰原さんは私をちらりと見た。


「……リリア、灰原君に同行してやれ。

灰原君、分かってると思うがリリアに手を出したら……」


「分かってます、『殺す』でしょ?」


灰原さんは少しだけ背筋を伸ばしてから答える。


「いや、もしリリアに手を出したらありとあらゆる手を使って僕の部下にしてやる。そして一生……」


「出しませんから!それ以上言わないでください!」


ウリュウの言葉を遮るように灰原さんが声を荒らげる。


(良かった、最後まで聞いてたら眠れなくなる所だった。)


私は内心そんなことを考えながら、多々良の連絡先をスマートフォンに登録したのだった。

序章の改稿とイラストの修正に手間取っております。

もう少しだけお時間ください。

序章に関しましては差し替え実行前にアナウンスいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ