元成の過去②
今回も短いです
「まだ続きがあるんですか?」
「ああ、むしろここからの話がお前に関係してくるぞ」
『お前に関係してくる』その言葉を聞いてから薫の顔つきは変わった。
(いい目だ、さらに先を求める目。こういう奴はもっと上手くなることができる)
元成は薫の目を見て評価する。そして話の続きを始める。
「兄は妹を追いかけるために体育館の外に出てすぐに大泣きする妹を見つけました。その様子を見た兄は妹にこう言いました。『どうした? 何か嫌なことでもあったか?』と。その言葉で我慢の限界が来た妹はこれまでの不満をぶちまけるのでした。本当は兄ともっと一緒に遊びたかった事、自分が兄に勝って兄に習い事をやめさせようとしていたこと、兄のせいで自分が期待されてしまったこと、そしてスポーツをしている兄が今まで見てきた中で一番輝いていること。最後に妹はこう言いました。『チームメイトが弱かったから負けた』と。兄にとって妹からは出てほしくない言葉が出てきてしまい、兄は初めて妹に怒りました。兄は妹に人のせいにはしてほしくなかったのです。その気持ちが通じたのか妹はその日以来、兄と疎遠になる前のように仲直りし、兄からスポーツを習うのでした」
すべてを話し終えた元成は一息ついて持参していた水筒に口をつけて水を飲む。
「あの、あなたは先程私に関係があるといっていたのはチームメイトが弱かったから負けた、のところだけですよね。そうだったら前ぶり長くないですか?」
「まぁ、簡単に教えてしまったらお前の成長にはつながらんだろ。その様子じゃわかったようだが」
「はい、妹さんとは少し違いますが私も試合に負けたのは私を起用した先輩たちのせいと、間接的に言ってました」
(やっぱり、この子は言ってあげれば自分で理解するタイプの子だ。そして、こういう子は自分の失敗を糧にして成長できる)
元成は横で反省している一人の少女を見ながら分析する。
『オオォー‼』
その時、体育館から大きな歓声が中庭まで響き渡る。
(あ、そういえば今試合中だった)
薫はその歓声でどうして自分がここに来れたのかを思い出した。
「すみません。私、試合の途中で抜けだしてきていたのでもう戻らなきゃいけないんです。貴重なお話を聴かせてもらったのに何もお返しできなくてすみません」
「気にしなくていいぞ。俺が勝手に話しただけだからな。試合の応援がんばれよ」
「はいっ」
そしてお互いに反対方向に歩きだす。
(あ、名前教えてもらってない)
「あ、あの——」
薫は振り返り名前を聴こうとするがそこに誰もいなかった。
薫は一瞬不安な顔をするもすぐに体育館に戻っていった。
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