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ダイジェストではなく、ありのままの戦い

 第三試合。


「力の勇者カズヤァァァ!! 対するは守護の勇者マモルゥゥゥ!!」


 筋肉男と、白い鎧の男が向かい合う。


「俺の力は、全てを壊す。」


 カズヤが拳を握る。


「絶対に壊す力だ。一発で終わらせる。」


「私の力は、全てを守る。」


 マモルが盾を構える。


「絶対に守り切る力。反動で終わりですね。」


「だから、おまえは負ける」

「だから、あなたは負ける」


 ……嫌な予感しかしない。


『おおっとォォ!! 最強の矛と最強の盾だァァァ!!』


 ゴング。



カァァァン!!



 カズヤが突っ込む。

 マモルも前に出る。

 拳と盾が、ぶつかった。



ガキィィィン!!



 ーーその瞬間。

 二人とも止まった。


「…………」


「…………」


 動かない。

 完全に。

 一ミリも。


『……あれ?』


 爆音バットが首を傾げる。


『えーっと?』


『これは……』


 俺は立ち上がる。

 誰も動かない。

 カズヤは拳を突き出したまま。

 マモルは盾を構えたまま。

 その姿勢で、完全に固まっている。

 ステータスで状況を確認してみると、そこには信じられない表示が出ていた。


【Error: Conflict of Absolute Laws】

【Processing... 0.000001%】

【女神システムが応答していません。再試行してください】


『あー、これダメですわ。

女神が授けた"絶対"同士がぶつかったせいで、世界の演算処理が追いつかずにフリーズしました。』


『フリーズ!? え、どうなるんですか彼らは!?』


『このままです。多分、世界が滅びるまでこの姿勢のまま固まってますよ。』


 しばらく、皆で眺める。

 動かない。全然動かない。


「……どうする?」


 リリベルが聞く。


「魔王軍でも、これは解除出来ないわよ。」


「うーん……」


 俺は腕を組む。

 そして。


「……魔王城の入口に置こう」


「はい?」


「オブジェとして。絶対に壊れないし、絶対に守るし。防犯にもなる。」


「……そう。私の趣味じゃないけど。」


 心底どうでも良さそうな顔をするリリベルだった。



◆◆◆



『第四試合ィィィ!!』


 爆音バットの声が響く。


『吸収の勇者ナオトォォォ!! 対するは、魔力庫の勇者タカノリィィィ!!』


 左から現れたのは、黒いローブの男。

 右から現れたのは、いかにも魔術学院で講師してます的な、眼鏡の青年だ。


「ふふふ……」


 タカノリが笑う。


「僕の脳内には、この世の全ての魔法が詰まっています。魔法に出来ない事なんてありません。」


『また面倒なキャラですねぇ。』


 俺は顔をしかめた。

 挑発?に対して、ローブの男は無反応だ。

 隣でリリベルがメモを見ている。


「武器生成、魔物召喚、炎、水、結界、身体能力アップに防御アップ……本当に全部使えるみたいね。」


「やめろよ今までの上位互換キャラ出すの。」


 ゴングが鳴る。



カァァァン!!



「まずは小手調べです!」


 タカノリが本を開く。

 いや魔法は頭に入ってる言ってたじゃん。


「母なる大地よ。空を蹂躙する巨悪に薫陶を!

その憤怒を解き放て! 《ガイアヴォルケイノ》!!」



ゴォォォ!!



 地面が隆起し、赤く変色する。

 そこからマグマと五メートルはありそうな岩石が発射される。


「あっ、私がこの前撃ったやつだ。」


「でもリリベルのに比べて小さいな。対個人用って感じ?」


 灼熱の岩石が、ナオトへ集中する。

 しかし。

 ナオトが手をかざすと、黒い魔法陣が現れた。



ズズズズズ……



 岩石が吸い込まれる。


『吸ったァァァ!!』


『魔法ならなんでも行けるんですかね。』


「ならば氷!!」

「雷!!」

「重力!!」

「百連爆裂剣!!」

「酸の雨!!」

「光分身の術!!」


 見たことある魔法が次々に飛ぶ。

 闘技場が、もはや総集編だった。

 炎が飛び、雷が落ち、剣が降り、重力で床が割れ。

 分身が百人くらい増える。

 だが全部。



ズズズズズ……



 黒い魔法陣に吸い込まれていく。


『全部吸ったァァァァ!!』


 タカノリの顔から、笑みが消える。


「……馬鹿な。僕の魔法が……」


「終わりか?」


 ナオトが初めて口を開く。

 低い声。

 不気味なほど静かだった。


「くっ……!」


 タカノリが歯を食いしばる。


「だったら! 魔法じゃない!!

直接、魔力を流し込む!!

容量オーバーで破裂させてやる!!」


『おおっとォォォ!! 魔力量過多による気絶のゴリ押しだァァァ!!』


『定番の展開ですね。』


 タカノリが、ナオトに飛びつく。

 両手を押し当てる。


「受けろォォォ!! 僕の全魔力をォォォ!!」



ドバァァァァァ!!



 膨大な魔力が流れ込む。

 空気が震える。

 闘技場の石畳が砕ける。


『おおおお!! これはヤバいぞォォォ!!』



 そして。



「あふんっ」



 タカノリが変な声を出した。

 そのまま、白目をむいて倒れた。



バタッ。



『…………』


『えっ』


 実況が固まる。


『そっちィィィ!? 流し込んだ方が先に魔力切れしたァァァ!!』


『あ、この流れで破裂しないパターンあるんだ……』


 ナオトは、倒れたタカノリを見下ろす。


「容量は問題じゃない。

近づいた時点で、お前の魔力機関を吸収した。」


「……は?」


 俺は変な声が出た。


「魔力そのものじゃなくて、機関?」


「つまり、魔力を司る一連の仕組みごと奪ったってことね……」


 リリベルが青ざめる。


「流した瞬間、自分が魔法使いから一般人以下になったんだもの。魔力不足で失神するわよ。」


「一枚上手ってレベルじゃねえぞ。」


『勝者ァァァ!! 吸収の勇者ナオトォォォ!!』


 歓声。

 というか悲鳴。

 誰もが、あいつと戦いたくなさそうな顔をしていた。

 そして。


『えー……相打ちの試合が多すぎたので』


 爆音バットが咳払いする。


『次が決勝戦です!!』

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