"効果は抜群"か、"元素反応:蒸発"か
『さあ続いて第二試合ィィィ!!』
[爆音バット]が叫ぶ。
『炎の勇者リツカァァァ!! 対するは水の勇者トキオォォォ!!』
闘技場の左右から、二人が歩いてくる。
赤髪の煌びやかな男、リツカ。
青いコートのクールなメガネ男、トキオ。
お互いに、露骨に嫌そうな顔をしていた。
「炎だって?」
トキオが肩をすくめる。
「水に勝てる訳ないだろう。」
「は?」
リツカの額に青筋が浮かぶ。
「貴様、私をナメてるのか?」
「現実を言ってるだけだ。火は水で消える。小学生でも分かる事実だが?」
「何だとキサマァ!!」
『始まる前から仲悪いですねぇ!!』
『いやまあ、属性的にはそうだろうな。』
ゴングが鳴る。
カァァァン!!
開始直後、トキオが手を振る。
ゴオオオオ!!
大量の水が、津波みたいに闘技場を飲み込んだ。
『おおおっとォォォ!! いきなり大津波だァァァ!!
やっぱり炎じゃ勝てないかァァァ!?』
しかし、水の中から赤い光が見える。
次の瞬間。
ゴォォォォドパァァァ!!
津波そのものが蒸発した。
真っ白な蒸気。
その中心に、リツカが立っている。
「……何だと!?」
トキオが固まる。
「水だから勝てると思ったか?」
リツカが笑う。
「火力が違えば、蒸発するだけなんだよぉ!」
『おおおおっとォォォ!! 炎の勇者、パワーで水を消し飛ばしたァァァ!!
これはなんという魔力の暴力ッッ!!』
『属性相性を力技で突破するのはよくありますね。』
炎が渦を巻く。
巨大な火球。
闘技場の半分が赤く染まる。
「消し飛べ!」
ドゴォォォ!!
「ぐっ……! これ……は……!」
トキオが水の壁で受け止める。
しかし押される。
明らかに押されてる。
『どうしたァァァ!? 水の勇者苦しいィィィ!!』
「だから言っただろ」
リツカが笑う。
「火力が違うって――」
「クソッ!」
トキオが顔を上げた。
悲しそうな表情をしている。
「何だよこれ! 火力が違えば勝てるとか、そんな、そんな……」
トキオがニヤつく。
「そんな些細な事で勝てると思ってるなら、可哀想すぎる!!」
「……何だと!?」
「水を操る能力って言うのはな、水そのものじゃない。」
「!?」
「水は、水素と酸素で出来ている。」
次の瞬間。
闘技場中の水が、一斉に分解された。
バチバチバチ!!
空中に、青い光。
『おおっとォォォ!? 何か始まったァァァ!!』
『分子レベルで操ってる!?』
俺も叫ぶ。
何だよその急な理科。
「酸素を奪えば、火は燃えない。
水素を集めれば、爆発する。
やはり、小学生でも分かる問題だ。」
ボン!!ボボボボン!!!
リツカの炎が、一気にかき消える。
さらに空気が急に複数爆発し、ダメージを負う。
「なっ!?」
『おおおおっとォォ!! 今度は水の勇者が優勢ーーかァァ!? どうなんですかねこれ!!』
『私に聞かないで下さい!』
たのむから相応のリアクションしてくれ二人とも。
「バ、バカな……グハッ、こんな……グハッ!」
次々とリツカの周囲が爆発していき、ボロボロになっていく。
身体は血だらけに、腕も変な方向に曲がっている。
『炎の勇者、なす術がなァァい!! さすがにこれは劣勢かァァァ!?』
「お前の負けだ、炎の勇者!」
無惨な姿になり、倒れる炎の勇者。
「がっ……! がはっ!」
まだ息はある……が。
「がはっ! ガハッ! …………ガッハッハ!
はーっはっはっは、腹が痛ぇ〜。」
うつ伏せに倒れながら笑い出す勇者。
その身体が、炎に包まれる。
いや包まれるというか、身体そのものが炎になる。
「お前の負けだ、だって? はっはっは、何も出来てないのに何を言っている!
私は魂を燃やすことが出来る炎人間なのだ!! どんな攻撃も効く訳がない!!」
「な……何だとッ!」
『うおおおお!! 炎の勇者、また優勢だァァァ!!』
『どっちなんだよマジで!!』
俺もさすがにキレるわ。
しかしこんな状態でも、トキオが静かに笑った。
「……人間の身体の半分以上は、水だ。
「だから?」
「だから、俺自身が水になれると言う事だ。」
「何……だと?」
次の瞬間。
トキオの身体が崩れた。
どろり。粘り気のある、スライムみたいな水。
いや、人型の水。
『水人間だァァァ!!』
『最初からやれェェェ!!』
俺も叫んでしまった。
もう属性とか関係ないじゃん。
「水は、魂の炎を消す。」
静かに、落ち着いた声でトキオが言う。
「だから、お前は負けるのだ。」
「やってみな!!」
炎人間と水人間がぶつかる。
ゴォォォ!!
ザバァァ!!
爆発。
蒸気。
炎。
水。
何かもう、どっちが優勢とか全く分からない。
『勝ってるのはどっちだァァァ!!』
『知らん!!』
その時だった。
「……そうか」
炎人間リツカが、何かに気づいた顔をした。
「理解したぞ。熱い炎、光……太陽! もっと熱くなればいいのか! つまり……核融合!!」
「何……だと……?」
おいおい、何言ってんだこいつ。
炎人間の身体が白く光る。眩しい。
まてまてこの距離でこの光量は死人が出るやつだ。
「なら……」
水人間トキオも、何かを悟った顔をした。
「俺も理解した。水素と酸素を更に分解ーー核分裂だ。」
『やり過ぎだよ!!』
そう叫んだがもう遅い。
実況も観客も目を背けている。
二人だったものがぶつかる。
次の瞬間。
太陽が生まれた。
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!
『『ぎゃあああああああああああ!!』』
闘技場が、白い光に包まれる。
しかし対戦エリアの周囲を囲むように貼られた結界により、眩しさは来るが熱は来ない。
偽魔王が張った〈俺の結界は壊れない〉の効果だ。
絶対に壊れない壁。
そのせいで、行き場を失った爆発が、上へ。
一直線に、空へ。
ズドォォォォォ!!
雲を貫き。空を裂き。
そのまま宇宙まで吹き抜けていった。
数秒間の静寂。
闘技場には、何も残っていなかった。
『…………』
『……両者、消滅ゥゥゥ!!』
爆音バットが震えながら言った。
『えー、勝者はいません!!』
『私たちは何を見せられたんでしょうね。』




