7 高確率で遭遇する珍しい魔物
普通はみつからないのに、みつけてしまう、特異体質な『笑う太陽』
シグは腰のかばんから望遠鏡を取り出し、じっと森の奥を見つめる。
「ホークアイ。」
シグは魔術陣の描かれた望遠鏡で目をこらし、魔物を見つける。
「ホーミング。」
シグは腰のナイフを投げると同時に、自動追跡の魔法をかけた。
どう考えても普通に投げては届かないからだ。
「ブースト。」
シグのナイフにラシュが魔法をかける。魔力の反応から、かなりまだ遠いところにいることがわかっているから風の加速用魔法をかけたのだ。
しかし、シグの放ったナイフは森の奥にいたモノケロースの長い角にはじかれる。
「げ、はじかれた。」
その様子を望遠鏡を覗いて見ていたシグがつぶやくと、ラシュが尋ねた。
「何だ?」
「モノケロース。」
シグの言葉に、ラシュは別名をつぶやいた。
「暴れ一角獣か。シグがいったらおとなしくならないかな。」
「汚れのない乙女が傍に行ったらおとなしくなるっていう?もう攻撃したやんか。無理無理。それにモノケロースやで。ユニコーンやない。」
「そうだった。ユニコーンならそれでいけるが、モノケロースじゃあな。」
滅多にいない一角獣だが、『笑う太陽』はわけのわからない魔物の引当率が高いため、レアな魔物にもひるまない。一角獣のうち、小さめでおとなしいのがユニコーンで、昔から汚れのない乙女の手は触ることを許され、おとなしくなると言われている。2メートル以上になる大型の一角獣がモノケロースである。ユニコーンもモノケロースも似た姿をしているが、モノケロースの方が大きく、獰猛である。攻撃も結構強いが、普通はこんな幻想級の魔物には当たらないはずなのだ。
「モノケロースでは、私の攻撃は効き目がなさそうですねぇ。」
一角獣は魔物とは言え、どちらかといえば、神の使いとして神話にも出てくる生き物であり、浄化する力が強いサイカは、魔法が効きそうにないとみたのだ。
「そうだな。サイカは馬車を頼む。俺たちは降りて闘うか。」
「そうやな。ビアベアなら馬車で逃げ切れるけど、モノケロースは追いかけてきたら面倒やし。」
ラシュは杖、シグはダガーを持って馬車から飛び降りた。
「アッシュ、魔物だ。剣を取れ!」
「っはあっ。・・・おうっ。」
すでに走り疲れていたアッシュは、ゆっくりと止まり始めた馬車の様子を見ながら、息を整えていた。背中に背負った大剣はまだ抜かない。
「シグ、あとどれくらいだ?」
「うーん、あと500mってところや。」
「なら、魔術陣が描けそうだな。」
ラシュはシグの返事を聞いて、魔術陣を地面に描き始めた。
「何の魔術陣?」
「落とし穴。土の魔法で一発だ。」
「楽でええなぁ。」
シグがラシュの答えを聞いて、けらけらと笑う。
ドドドドドド、ザザザッと音がして、モノケロースが林の中から現れた。
と、そのとたん、シグの手からロープのついた金具が投げられる。
くるくるくるとモノケロースの角に巻き付く。
「よっしゃ、捕まえたで~。」
「あとちょっとで描けるから待て。」
「よし、俺が行く!!」
捕まえていることに喜んでいるシグに、魔術陣を描いているラシュが声をかけると、ようやく息の整ったアッシュが大剣を構えてモノケロースに駆け寄っていく。
がきんっ!
とモノケロースの角とアッシュの大剣がぶつかる。幻の魔物であるモノケロースの角の堅さはとても固い。アッシュはモノケロースに押されそうになりながらも、その場でじっと耐えている。
「よっし、描き上がったぞ!アッシュ、魔術陣におびき寄せろ!!」
土の魔術陣を書き上げたラシュがアッシュに声をかけると、アッシュがモノケロースの力を受け流し、離れると、モノケロースが追いかけてくる。
アッシュが走ってモノケロースをおびき寄せ、ラシュの魔術陣の上を飛び越える。と、モノケロースもアッシュと同じように飛んだ。
「げっ、魔術陣飛んでかわしやがった!」
「しゃーないな、うちの出番やな。」
角にロープを結んだままのシグがロープに力を入れる。
「インパルス!」
シグがショックを魔法で与えると、空中のモノケロースがバランスを崩す。
「わ、落ちるっ!!」
と、その前に、跳んでみたが、ちょっと力が足りなかったらしいアッシュが魔術陣に落ちる。
「あっ、馬鹿!!」
アッシュが魔術陣に触れると同時に、土の魔法が発動し、落とし穴が現れる。
「ったく、フライッ!!」
ラシュがとっさにアッシュに浮遊させる魔法をかける。が、空中で止まったアッシュに、後ろから体勢を崩したモノケロースがぶつかる。
「あっ!」
そして、アッシュとモノケロースは落とし穴へと落ちた。
説明7
『笑う太陽』はラシュのおかげでいろいろなものに魔術陣がついている。
おかげでシグの持ち物はかなり高価なものになっている。
ちなみに、アッシュの持ち物にはほぼない。
なぜならアッシュがやたらと見せびらかしたり、壊したりするからである。
ラシュもいちいちそれを披露するわけではないので、知らない人も多い。
魔術師かどうかなんて、尋ねる人もなかなかいない。




