表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/54

23 良薬は口に苦し

ようやく元気になれます。

楽しんでいただければ幸いです。

「おはようございます、レイヌーさん。夜遅くにすみません。」


ラシュが起こすと、ゆっくりとレイヌーは目を開いた。


「あ、ああ、冒険者の方。」


「薬ができましたので、飲んでいただけますか?」


月の薄明かりでは見にくく、目を細める様子に、ラシュがつぶやく。


「ルミエール。」


ふわりと周囲が明るくなる。突然の明るさに驚いているレイヌーにラシュが微笑む。


「ただの魔法の明かりです。驚かせてすみません。」


そういいながら、ラシュはレイヌーの背を支えて起こす。


「すみません。」


「いえいえ。サイカ、それ、持ってきてくれ。」


サイカはラシュがテーブルに置いていた薬を手渡す。


「ちょっと、というか、かなり苦い味がすると思いますが、がんばって飲んでください。」


ラシュが薬を差し出すと、レイヌーは一口飲み、それはもう苦悩の表情をした。


「ぐっ、ううっ。げほっ、げほっ。」


「だ、大丈夫ですか?」


ラシュがレイヌーが薬の瓶を落とそうとしたのを救い、レイヌーの背をさする。


「もう少し薄めて飲むべきですよ、それ。」


薬とレイヌーの様子を見ていたサイカが、水を用意しながら言った。


「いや、そうもいかないだろ。」


「薬自体は全て飲まなければなりませんが、それを水で薄めて全て飲んでも、量は変わりませんよ。それにその薬なら、むしろそうしたほうがいいでしょう。喉を通りにくくて、吐いてしまいかねません。」


サイカが水を手渡してくるのを、ラシュは受け取り、レイヌーに飲ませる。


「んっ、っはぁ、はぁ。まだ、飲まなければならないんですね?」


「ええ。元気になるためです。レベッカを安心させてやろう。」


レイヌーは苦悶の表情を浮かべながら、薬を飲みきる。


「これで大丈夫。ぐっすり眠ってください。」


薬を飲みきったレイヌーを再びベッドへ横たわらせ、ラシュが布団をかける。

体力を使いきったのか、すぐにレイヌーは眠りに就いた。


「よくがんばりましたねぇ、この方。」


眠っているレイヌーを見ながら、サイカがしみじみと言った。


「ああ。やっぱり娘がいたらおちおち死んでられないよな。」


「いえ、あの薬をよく飲んだ、という意味です。本来ならもう少し飲めるようにしてから飲むものですよ、アレ。」


「は?」


ラシュはサイカに否定され、困惑する。


「あのような薬は大抵おいしくないし、飲みこむのも苦労するもので、大抵ゼリー状に固めて飲ませたり、固形にして味をわからなくさせたりするものなのですよ。薬剤師でもないラシュが作ったものですから仕方ないとは言え、拷問のような飲ませ方でしたからねぇ。」


「おまえっ!それ、わかってたんなら先に言えよっ!おれは薬剤師じゃないから作り方はわかっても、飲ませ方は知らないんだよっ!!」


ラシュはサイカにつめよるが、サイカはくすくすと笑いながら平然と答える。


「いえ、あれだけ自信をもってやっていたのですから、さぞや良い方法があるのかと思いましたら、そのまま飲ませていましたので、あっけにとられていたのですよ。とりあえず、水は渡したでしょう。」


「ぐっ、このやろう。最初から言えよ!」


「ふふふ。」


「この~。」


ラシュはサイカに憤るも、確かに飲ませ方は考えていなかったと顔を真っ赤にしながら耐える。サイカはその様子を見てくすくすと笑う。


「くそっ、じゃあ、あとの看病はまかせたぞ!!」


「ええ。」


ラシュはドアをそっと閉めて部屋を出た。サイカはラシュが怒っているにもかかわらず、病人を意識して戸を閉める様子に、くすりと笑った。





「おはようっ、おかあさんっ!」


薬を飲んでから半日。レイヌーが目を覚ましたときに飛び込んできたのはレベッカの声と顔だ。


「おはよう、レベッカ。あら?冒険者のみなさんは?」


「今はおでかけしてるよ。お母さん、もう元気?」


「ええ、そうね。昨日よりちょっと元気だわ。」


にこにこと親子は幸せそうに話していた。





「で、どうすんや、それ。」


「家を建て替えるべきだと思いますよ。」


叩きのめされて倒れているアッシュと頭を抱えているラシュ、冷たい目で見ているシグ、いつもと変わらない表情で淡々と答えるサイカ。

四人の目の前には、大穴のあいた壁があった。


「いくらなんでも、アッシュがフライパンで壁に大穴を開けるとは思わないじゃないか。」


ラシュが膝をつく。


「なんで料理の手伝いをしようなんて考えたんや。」


呆れた顔をしてシグが問うと、サイカが淡々と答える。


「さあ?レイヌーさんへのお祝いなのではありませんか?」


「ひどすぎる。」


ラシュががっくりと肩を落とす。じっと壁を見てたシグが、ひらめいたようだ。


「ほんなら、アッシュが新しい家立てたらええやん。快気祝いに。」


「ああ、そうですねえ。それがいいでしょう。弁償するより景気がいい。」


「ちょっと待てよ!その金はどこから出ると思ってんだ!」


二人の言葉に、膝をついていたラシュが立ち上がる。


「いや、アッシュなら木材は自分で採って来るでしょうし、ラシュの技量も上がってきていますからねぇ。」


「ふざけんなっ!・・・とはいえ、確かにこれでつぎはぎしたら次に嵐が来たら倒れるよな。・・・作るか。」


設定23 僧侶と魔術師の薬の飲み方の工夫の差異


僧侶であるサイカの薬剤師としての技量は僧院で教わったもののため、神仏への祈りと共に、病人への配慮がある。人を治す、癒すがメイン。

魔術師であるラシュの薬の扱いは魔道具であり、人にどうこうするものではないため、人が使う時に死ななければよいぐらいなので、飲み方なんて考えない。効果があるか否かである。とりあえず、目的を達すればよいという考え。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ