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37話 洛陽侵入!

 話の内容を私が忘れている可能性があったりしますので、何かあればご指摘いただけるとありがたいです。

 今回の内容は薄めですがご了承を。

※注意事項

・行間等が以前と少し異なります。

・困ったことに三人称と一人称が混ざってます。修正入れたいのですが時間がない。

 てか、これ修正するなら最初から修正になるという……。

37章 洛陽侵入 紀霊の策略


「ふぅ……、やっとここまで来たのか」


 今まで歩んできた道程は楽ではなかった、それだけにココまで来たことに対する達成感を感じずにはいられない。

 本来皇帝が座るはずであろう玉座に腰を下ろしながら、感慨深いなと思い、ため息を吐く。


「紀霊隊長、本当によろしいのですか?」

「構わないよ、別に……。ただ加減したら容赦しないから」

「はっ、はい!」


 そういえば、俺はいつからあっちゃんにお仕置きを示唆するような、物騒な物言いをするようになったのだろうか……。

 理由は確かその方が、あっちゃんが仕事をするからだったと思うけれど、もしかすると深く考えてはいけない事柄なのかもしれない。

 なんて、重要な局面が差し迫る中、くだらないことを考えてしまう自分にちょっと呆れてしまう。


(もうすぐ……。もうすぐなんだよな)


 あっちゃんは既に部屋にいない。一人静けさに身を委ねながら紀霊はその時を待つ。

 終わりが訪れるその時を。




◇◇◇




(やっと、やっとついたわ……)


 洛陽の前まで来た華琳はそう思わずにはいられなかった。

 大成功したといっても過言ではない程、麗羽は何も考えずに虎牢関に攻め入った。

 しかも、後で説得を試みるはずだったはずの孫策軍が、なぜか乗り気で攻め入った為、大した苦労もなかった。

 不気味すぎるほど万事うまくいっていたのだが、虎牢関で一刀が麗羽に捕まった事から何かが狂い始めていた。


 私の考えが至らなかったとわかったのは、久々の勝ち戦に袁紹軍の盛り上がり方の異常さを見た時だった。


 本来勝ち戦なのかどうかすらわからない状況であるにもかかわらず。特に深く考えずに何事も行う袁紹軍の特色が無駄なところで生きてきたのである。

 その袁紹軍の勢いにのまれる形で英気を養うためと軽い宴会が開かれ、まるで戦に勝ったかのようなお祭り騒ぎになり、時間を無駄に費やしてしまった。

 その代償がどういった形で出るのかわからないが、まずいということだけはわかっていた。


(時間がないわね……。)


 曹操軍は宴会を開いている最中にも夏侯惇を始め、各将がその場で出来ることをやっていた。

 とはいえ重要のなのは出撃する順番である。

 敵が居ないとわかった今、罠があると怖気づいていた反動のせいで、勢いづいている軍は活躍したくてたまらないだろう。

 私だけが知っている罠がないという情報も、宴会の間出ていた偵察が戻れば、周知の事実となる。

 そうなれば、燻っていた猛者達が躍起になることはまず間違いない。

 いや、もう既に結果として出ているのだ。

 軍議は難航し、船頭が多すぎる連合軍は、水面下で各々が好き勝手にやり始めようとしている。

 私も人のことは言えないのだけれど。


「華琳様」


 後ろから桂花が声をかけてきた。

 恐らく行動に移ることを伝えるためなのだろう。


「各々位置に着きました。」

「わかったわ」


 綺麗に整列した己の軍を見下ろす。

 軍議では思いのほか簡単に先鋒をとれたが、実際はそんなものには意味がない。

 一刀が麗羽のために活躍したい、なんて思わせぶりなことを言ったから取れたものだ。

 他の者達が納得する理由ではない。


 (思ったよりも麗羽の一刀への想いは、私が想像している以上なのかもしれないわね)


 そんなことを考えつつこれから起こりうることを想像する。

 まず作戦などありはしない。いつもの華麗に突撃で終了だろう。

 そうなれば諸侯は間違いなく好き勝手に動く、私とて名声は欲しいから気持ちは十分わかる。

 否、覇道を目指すからこそ、痛いほどに、十二分にわかるのだ。

 けれど今回欲張ってしまっては、私がしてきた苦労が水の泡。そんなの許されるはずがない。

 ならば無駄にしないよう行動するしかない。

 私は私の心を整え、姿勢を正す。


 この号令で全てを決める。


「我が勇敢なる軍勢よ。終わりの時は来た!

 臆することはない! 我に続け、我らの名を歴史に刻もうぞ!」


 号令に答えるように方々から雄叫びが上がる。

 だがそんな雄叫びも無駄なことを私は知っている。


 そう、私たちは知っているのだ。

 既に洛陽は終わりを迎えていることを、いるのは紀霊と若干の武将たちのみだという事実を。

 本当の意味で、既に戦は終わっているのだ。


 秘密裏に春蘭達を突入させた、今頃その居残っている武将たちも軒並み捕えられているだろう。

 ただ一つの不安は時雨のことのみ、決着はついていると思いたいが、あの時雨である、こちらの行動を予測することぐらい訳ないだろう。

 けれど私とて馬鹿ではない。自分の立場を危うくする賭けにまで出て、時雨を捕まえる為に行動しているのだ。

 捕まえられる、私はそう確信出来るだけの事はしたはずなのだ。


(なのになんでこんなに不安になるのかしらね、本当に気に入らないわ)


 全部時雨の掌で踊らされているそんな気がするのだ。

 否、実際踊らされていたのだろう。

 だから私たちはもがいて、その掌から抜け出したのだ。


(不安は消えない、でももう関係ないわ。

 せいぜい覚悟してもらうわよ。この曹孟徳を本気で動かしたのだから)




◇◇◇




 曹操軍が先鋒を取ったのに満足していない諸侯が、突入していく姿をただ眺めているわけはなかった。

 斥候からの報告を聞き次第、それぞれが欲望をみなぎらせて動いていく。


「斥候から洛陽はもぬけの殻という報告が上がっています。唯一残っているのは紀霊とその配下だけとのことです」

「それは本当か!」


 朱里からの報告を聞いて興奮するように関羽が問い詰める。


「は、はい。斥候のほとんどが同じ報告をしています」

「ふむ、それはいささかおかしな気がする。愛紗はやまるでないぞ」

「鈴々もなんかあると思うのだ!」

「そんなこと言われずともわかっている……」


 関羽を抑え、趙雲と張飛が疑念の声を上げる。

 無理もない、あれほど少数ながらも数の多い連合軍を圧倒していた董卓軍が消えたのだ。

 しかもあの謎めいた紀霊のみを残して……。


「私は、私は大丈夫じゃないかなって思う」


 これまで紀霊の件に関して、それほど口を挟んでこなかった劉備が唐突にそういってきた為、皆は一時沈黙した。


「桃香様?」

「えっとね、朱里ちゃんが言ってたと思うけど。紀霊さん本気で私たちを殺しに来てないと思うの」

「それは、そうですが……」

「桃香様の言うとおりです。私は前に紀霊さんは本気で来ていないといいました。

 もしかすると紀霊さんは何か伝えたいのかもしれません。

 もしくは何かを待っているとしか思えません」


 渋っている趙雲を見てそれまで沈黙を保っていた朱里が口をはさむ。

 実は斥候が戻ってきたのはもっと早い、けれど他の諸侯の様子見と、事実の裏づけを取るまで朱里は黙っていたのだ。

 この段階に来た時点で、朱里は自分の考えと合わせて、洛陽に危険があるとはとても思えなかった。


「ふむ、だがいったい何を?」

「それはわからないですが、それは曹操さんが知っているのではないかと」

「なんでなのだ?」


「それなんですが、どうも曹操さんだけ紀霊さんが起こす行動を事前に知っていたのではないか、としか思えない行動があまりに多すぎるんです」


 思い返してみれば曹操軍は巧みに紀霊の罠や夜襲を防いでいた。いや、防ぎすぎていた。

 いくら優秀とはいえ、何時までも気を張り続けられる物ではない、これはあまりにも異常だった。


「袁紹さんに天の御使いが取り入って、今回の先鋒が曹操軍になったこともわかっています。

 それに何か曹操さんは焦っていたようにも思うんです」

「あの曹操が焦るようなことがあるのか?」

「紀霊さんが恐ろしいことをしようとしている。もしくは……」

「紀霊さんが欲しいんだと思う」


 諸葛亮の言葉を継いで、劉備が事実と思える可能性を口にする。


「なっ、なっ……」


 関羽は驚きで口がふさがらないというったような反応を示した。

 といっても他の将達も似たり寄ったりの反応ではあったのだが。


「だがそれは可能なのか?」

「紀霊さんの素顔を誰も知らないのが決定的です。

 彼は実力こそ凄いですが、その素性に関しては誰も、何も知りません。」

「なるほど、唯一知り得ていた張遼は曹操軍の中……」

「そういうことです」

「どういうことなのだ?」


 唯一話の内容を理解していない張飛が頭の上にハテナマークを浮かべ首をかしげる。そんな張飛に関羽が優しく説明する


「つまりだな鈴々。紀霊のことは曹操軍が知っているということだ」

「なるほどなのだ」


 そんな二人のやり取りを苦笑しながら諸葛亮が補足説明する。


「絶対に知っているというわけではありませんが、その可能性は大いにあると思います。

 ただ絶対というわけではないので兵士たちには知られないようにしてください。

 コレは何か確証があってのものではありません。

 それに今の連合軍でこの話が広まれば、連合軍が二つに割れる可能性すらあります」

「了解した」


 趙雲を始めとしてそれぞれが返答していく。


「おーい」


 そんな中やってきた公孫賛に劉備軍の反応はすさまじいものがあった。


「あっ、ぱぱぱ白蓮ちゃん!? ど、どうしよう朱里ちゃん」

「べ、別に喋らなければ大丈夫でしゅっ」

「白蓮なのだ。そうだ曹操が……」

「り、鈴々! さきほどのこともう忘れたのか!」

「あっ……、そうだったのだ。なんでもないのだ」

「ん? いったいなんなんだ?」

「白蓮殿、そこは察してやるというものであろう。女には悩みはつきものなのだ」

「む、そうなのか……」


 よくわからないような顔をしつつ、公孫賛はこちらへ来た目的を話し始める。


「実は今回の戦曹操だけが被害が少ないような気がしてな、ちょっと気にしすぎだとは思うんだが意見を聞きたくてな……」


 公孫賛の話を聞いた劉備たちはお互いに顔を見合わせ笑い始める。

 けれど、真面目な話をしたらいきなり笑い始めた劉備たちを見て、公孫賛が何かわかるはずもなく、戸惑い続け、笑いが収まった後劉備たちの意見を聞かせてもらえたのだった。




◇◇◇




 曹操軍が情報を手にしていると考えているのは公孫賛軍、劉備軍の他に孫策軍もそのような考えをしていた。ただ……。


「もーーーーー!」


 孫策が駄々をこねていた。それもこれも紀霊と戦えなかったことに起因するのだが、それに加え先鋒を曹操にとられたことが大きいのだ。


「雪蓮、いつまでもそうやった所で何か進展するわけじゃないでしょう?」

「それはわかってるけど……」


 雪蓮の勘はよく当たるがそれが万能というわけではない。

 先の門では、確かに罠はなかったが紀霊もいなかったのだ。


「曹操軍は何かつかんでいるはずだ。曹操軍が洛陽に突撃してすぐにこちらも動けば、まだ戦える可能性はあるはずよ」


 なんでこんなことを言うのかといわれれば、やはり自分は雪蓮に甘いということになるのだろう。


「そうね。やっぱりそれしかないわよねー」

「姉さま、いいかげんちゃんとしてください。そのようにいじけていては兵に示しがつきません」

「冥琳。蓮華がいじめるー」

「悪いが蓮華の言うとおりだ」

「うー」


 なかなか元気にならない孫策を見て孫権はため息をつく、紀霊と戦ったと思われる日から姉さまは紀霊に夢中すぎる。

 確かにおかしくなった姉さま相手に勝つなんて普通じゃない。けれどそれほど強いものと姉さまを戦わせるのは危険じゃないのだろうか? そう思っても孫権が孫策を止める手段など持ち合わせているはずもない。

 何せ周瑜でさえも御しきれない姉である。


「まったく姉さまには困ったものだ」


 それにしても袁術はいったいどうしているのだろう? 戦が始まってからほとんど顔を見せないどころか私たちを黙認している。

 言い知れぬ不安を感じずにはいられない孫権なのであった。




◇◇◇




 そんな孫権の不安は杞憂でしかないのは明白ではあった。

 なにせ、袁術はいつもどおりだったのだから。


「七乃ー、ハチミツ水がのみたいのじゃ」

「わかりましたー」

「それにしても七乃、孫策たちを放っておいてもいいのかの?」

「全然構わないと思いますー。それに袁術軍の孫策が活躍したところで、私たちの名声が高まるんだけだから放っておいても全然大丈夫ですよ」

「わらわのために働いているのだな!」

「そうですよー。すべては美羽様のために働いているのです」

「よーし! 孫策にはどんどん働いてもらうのだ」

「了解でーす」


 そんなこんなで孫策の行動に関しては黙認というより、放置されていたのである。




◇◇◇




 曹操から秘密裏に指令を受けた夏侯惇たちは、予定通り呂布たちの捕縛をしていた。もちろん一騎打ちで雌雄を決するわけではなく、投網を使っての捕縛である。


「卑怯……」

「うっ…」


 武人の夏侯惇にとって胸にくる言葉ではあるが、これもそれもすべて華琳様のためを思えばこそだと自分に言い聞かせる。


「時雨を助けたいのならばおとなしくするんだ」

「何を言ってやがるのです! 武人たる者武で勝負しないなどと言語道断なのです!」

「今……なんていった?」


 陳宮は気づいていないようだったが、気づいた呂布の顔が怒りに染まるのに時間はそうかからなかった。


「だから時雨を助けたくば動くなと……」

「時雨の真名、許せない」

「なっ、お前こそなぜ時雨の真名を呼ぶ!」


 手の付けられない猛獣が2匹、今にも互いに襲い掛からんとするところに張遼がやってくる。まさにグッドタイミングとはこのことであろう。


「あちゃー、ほんまにどうしてこんなことになっとるんやろ」

「霞……?」

「元気しとったか? 恋」


張遼を見て小首をかしげる呂布。


「実はな……」


 これまでの事、時雨の計画を細々と話していく張遼。

 それを聞き終えた後、呂布は今まで大人しくしていたのが嘘のように、網を力ずくで破って一人駆け出した。


「ちょ、まちいや! 恋!」


 張遼の制止も気にせずただひたすらに走る。思い出されるは時雨の悲しげな眼。


「時雨……、恋が守る」


 そんな恋において行かれた陳宮は予想外に落ち着いていた。


「霞殿、現状の確認とこれからどうするのか教えてほしいのです」

「わかった」


 それぞれが一人の人間を想い、それぞれの行動をしていく。


 月、詠、綾、かごめ、恋、音々音。


 事実を知った各々は、動けるものは動き、祈ることしかできないものは祈りをささげた。

 どうか時雨が無事でいますようにと……。




◇◇◇




 王の座へと続く足音は何処となく急いでいた。

 ここに来るまでに兵に指示をだし、洛陽の民を安心させるようにし、元董卓軍を取り込んだりと時間がかかってしまった為だ。

 すでに城は囲まれており、逃げ場がない。

 すぐに来るであろう孫策達、それまでに決着をつけねばならない。

 扉に手をかけ、開いたその先には王座に座る時雨とその前に刺さる二振りの大剣、さらにその前に二つの首が転がっていた。


「思ったより遅かったね」

「そうね、この曹孟徳とあろうものがとんだ失態もいい所だわ」


 そうなのだ、失態を犯してしまったのだ。

 ここまできて、時雨が民に対し何ら対処を行っていないとは思っていなかったのだ。


「一人で来たの? なんでまたって聞くのは野暮なのかな?」

「まだ、今ならまだ引き返せるわ。それに約束も有効のはずよね?」


 王座の間の中ほどまで進みながら時雨に問う。


「そうだね、あの約束を俺が破ることはないよ」

「ならなぜこんなことをしでかしているのかしら? それも私ではない他の物のために」


 若干の怒気を込めながら時雨を見やる。

 その姿は鎧でおおわれており、表情はうかがえない。


「……失いたくないものがある、だからかな」

「私はあなたを手に入れる。それこそが曹孟徳なのだから!」

「ごめん。今はまだ、無理だ」


 拒絶の言葉と共に後ろの扉が開く、入ってきたのは孫策軍、劉備軍、元董卓軍、曹操軍


「遅かったが歓迎しよう。愚かな者たちよ……。

 ようこそ我が城へ!」


 紀霊の声には感情などこもっていなかった。ただただ無機質に来訪者へと向けられていた。


「お前達如きに我は討てるのかね? ククッ」


 曹操が止める間もなく、舞台の終幕は訪れた。

 中々執筆時間が取れなくて、更新遅くなって面目ないです。

 これからもゆっくり書くしかないので、更新ペースには目を瞑って頂けるとありがたいですorz

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