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35話 虎牢関の戦い・中編

更新が遅くなって申し訳ない。

読み返すたびに全て修正したくなってしまう、私の処女作……。

クゥーと可愛らしいお腹の音が静かな夜に虚しく響いていく。


「なんで私だけ最近ごはんの量が少なかったり、無かったりするんだろう……。お腹が減った……」


絶対におかしいとは思うのだけれど、秘密を暴くより今は目の前の仕事をさっさと終わらせてご飯を食べるのが最優先事項だ。


「私の餌になりたくなかったら外すなよ」


八つ当たり気味に鋭く、低い声を出して脅しつける。お腹が減っているとイライラしていけない、早く終わらせないとご飯にありつけないのだから仕方が無いと思うけれど、いつも兵には悪い事をしていると偶に思ってしまう。


なんてほんの僅かな罪悪感を抱いた後に、すぐさま気持ちを切り替え、部隊の者に火矢を弓につがえさせる。


狙うは敵の天幕。


「――撃て」


号令を出すと同時に綺麗な弧を描いて夜空を火矢が照らし、赤く染めていく。


勢い良く天幕が燃え出し、慌てて敵の兵士達が飛び出してくるのを見てすかさず指示を出す。


「次」


部隊の者達が出てきた兵士を狙って矢を次々と射ていく。


突然降ってきた矢の雨に混乱のきわみと化す敵陣営、本来ならばここで突っ込んで殲滅戦に突入してもいいのだけれど、孫策の後ろには袁術が控えている。

一体どういった動きをするか読めない以上無闇に突っ込むべきではない。


第二射を終えると混乱しているかと思われた敵はすでに落ち着きを取り戻しており、自分の判断が誤りでなかったことを確信する。


これ以上ここにいてもいいことないから帰ってご飯食べよう。


そう思って綾は切り上げ、兵たちを連れて虎牢関へと戻って行く。


それにしても時雨はどうしてこんな面倒なことをやるのだろうか


時雨さえ本気ならこんな連合軍簡単に倒せると思うんだけど……、一体何やってるんだか、もう。


あーもう! なんだかお腹が減っててイライラする。


この頃はずっと細かい事に拘って指示飛ばしてたし、時雨のこととか分からない事ばっかりだからイライラが促進してしょうがない。


お腹いっぱい食べてればそんなに細かいこと気にならないのに……。


う~~~~、お腹空いたよ~~~~。


力の無いか細い声と同時に可愛いお腹の音がさきほどよりもすこし煩い夜に響く。


綾の受難はまだまだ続くのだった。










さて、興味本位から劉備軍の近くまで来たのだけれど、目視できる兵士の数が他と比べてかなり少ない。


やはりと言うべきか、まだ戦力が整っていない様だ。


まぁ、泗水関で見た限り武将はもう恋姫で見た有名な人は揃ってたかなと思う。


そんな中で一番問題なのが劉備なんだよね。もし孫策みたいな得体の知れない相手だったら困るというか、なんというか。ま、だからこその今回俺が劉備側の攻撃なんだけどね。


でも恋姫の世界での一刀の代役的な位置にいるなら、もしかしたら同じ性格? もしくは近い理想を掲げていたりするのかな?


んー、やっぱり会ってみないことには分かんないな。


噂も関羽や張飛だけで、劉備に関してはほとんどここまで流れて来なかったし、わずかな噂もほとんどがガセだったしな……。


「あっちゃん、俺が一騎駆けしてくるから後方支援お願いしてもいい?」


「わかりました。紀霊隊長……お気をつけて」


本来ならば一騎駆けなんて危ないことやったら駄目なんだろうけど、あっちゃんは快く送り出してくれるようだ。信頼しているその気持ちに応えるべく、気持ちを新たにしつつ、自分のいない間に無茶しないように注意を促しておく。


「うん、そっちもあんまり無理しないでね」


「っは」


すこし頬を染めながら俯き、短く返事をするあっちゃんを見る。


「もし無理したら……わかってるよね?」


一応脅しつけて念を押しておく、死ぬのは俺が殺す、もしくは寿命を全うするときのみ。部下の命は俺が背負うのだから勝手に死なれても困るというものだ。


といよりも本当は死んでほしくないという気持ちが大きいんだけどね。これは恥ずかしくて流石にいえない。


「はい!」


何故か想像以上に元気のいい返事が帰ってきて首をかしげる。脅しつけたのに元気になった気がするのは気のせいだろうか? と。


しかもあっちゃんの後の兵もなぜか目を爛々と光らせている。


ちょっと怖いけど、士気が高いのはいいことだよねと自分を納得させ、早々と支度を済ませる。


準備を済ませた後、殺気を放ちながら一人劉備陣営に突っ込んでいく。一騎駆けなんて普通なら危険だが、これならそこら辺の兵は怖がってこない。それにもしも一刀と一緒の性格だったら、言葉だけで切り抜けられるのでは、という甘い期待もある。


とはいえ、あんまりやると後の策に影響がでそうだし、顔見て適当に斬りあってから逃げた方が得策だろう。


今回の目的はあくまで劉備の本質の確認、何合かやりあえばある程度はわかるはずなのだ。


などと考え事をしながら突き進んでいたら前方に一つの影がとびだしてきた。


「待て! ここから先は通さんぞ!」


そういって現れたのは黒い艶やかな髪を振り乱し、青龍偃月刀を構えて仁王立ちしたのは、関雲長その人だった。


相変わらず真面目で可愛いらしい。


「可愛いな」


「っは!?」


あっと、言葉に出てしまった……ふむ、愛が溢れでたのが原因か。


「き、貴様は敵! ててて敵のくせに、一体なにを下らんことを言っている!」


ああ、そうか。今俺は演じているんだったか、なら利用しようしたほうがいいかなと思い、大仰な身振りで尊大にみせる。


「ふははは! まさか可愛いという言葉のみでそこまで取り乱すとは、なんと滑稽なことか。お前は武士である前に女だが、戦場に出ているからには今は武士のはずではないのか? やはり連合軍は何も知らぬ愚図共の集まりか」


「っ……貴様ぁあ! 言わせておけば!」


思いのほか簡単に挑発に乗って偃月刀を振り下ろしてくる関羽。


やっぱり甘い言葉には慣れてないか、可愛いな~~~。


などと思いながらもきちとん偃月刀を避け、着実に関羽に一撃を入れていく。


「っくぅ!」


これはどうかな、と遊び半分で重い一撃を繰り出し、関羽が怯んでいるうちに間髪を入れずに再度大剣を叩き込む。


「なめるなぁあああああ!」


流石になめきっているのがわかったのか、声を張り上げ俺の斬撃を凌ぎ、反撃してきた。


さすがは関雲長といったところかな、でも……。


「くだらんな」


片腕に気を満たし、力任せに大剣を凪ぎ、打ち込んできた偃月刀ごと関羽をはじき飛ばす。


「っな!?」


「お前には飽きた」


言い始めると同時に大剣2本を地面に突き立て、足に気を込めて加速して関羽の目の前に出る


「化け物めっ」


ひどく傷つきました。でも気にしていじけていられる場面ではない。


すぐさま手刀を首に叩き込み、気絶させる。


関羽を担ぎあげ、大剣を抜き取ってから奥へと向かおうとすると。


「愛紗を返すのだーーーー!」


声と共にちびっこが突撃してきた。


張飛か、相手にとって不足なし! と言いたいところだけど関羽を捕まえているのを見てか、攻撃が直情的なっていた。


かわすのも攻めるのも容易い、こちらとしてはとても助かる。


助けてもらったお礼とばかりに避けるのと同時に首元に剣を突きつける。


「まだまだ青いな」


「そんなことないのだ!」


こちらの剣を弾き、可愛い顔して凄まじい勢いで蛇矛で突いてくる張飛。


「うりゃりゃりゃりゃりゃ!」


けれどこちらに関羽がいるせいか、やはり動きがキレがない。


「それほど死にたいか」


大剣の一つを空に投げ、もうひとつで張飛の蛇矛を飛ばす。


「にゃあ!」


驚く張飛を大剣の腹を使い、地面へと叩きつける。


「うにゃあああああ!」


空から降ってきた大剣が張飛の首の側に突き刺さり、もうひとつの大剣で首を固定するように斜めに地面に突き刺す


「そこでじっとしていろ」


「愛紗を置いていくのだ!」


どこまでも強気な張飛、このままだったら自分で剣をどかそうとしかねない。


「そこで見ておれ鈴々、私が来たからにはもうこやつの好きにはさせぬ」


どうしようかと少し悩んでいると、いきなり背後から言葉と共に現れた趙雲の一撃を避ける。


「待って!」


それに続いて現れた謎の美少女キーーーー!


「桃香様! 来てはならぬと申し上げたはずです!」


「でも! 星ちゃん達ばかりに任せてられないよ!」


言動が一刀と少し似てるかな? これに腕が伴っていればただの馬鹿、伴っていなかったら大馬鹿者なのだけれど……果たしてこの人はどちらなのか。


「貴様が劉備か?」


「え? あ、はい!」


俺に話しかけれて驚いたのか微妙に吃りながら返事をする劉備。


「この二人を殺されたくなければ貴様が我と戦え、それが唯一の条件だ」


「っな! そんなことさせるわけなかろう!」


無茶な要求に趙雲が怒りをあらわにする。当然の反応ではあるけれど、出来ればわずかでもいいから余力を残して劉備と相対したかったんだけど……やっぱり無理だよな。


それに正直武器がないから困ってたり……どうしよか、いや、悩んでもやるしかないよね。


なんて意気込んで気を全身に巡らせ構え、片手は大剣を握り、張飛の首筋に大剣を近づけて脅しをかけていたりするんだけれど、殺したら計画に支障が出そうだから殺さないというのは絶対内緒である。


というより殺したくないし。


「下衆が……」


趙雲がそんな俺の仕草を見て、悪態つきながら今にも飛び出さんと龍牙を構える。


なんだか今日は精神的にかなりボロボロにされてる気がする。はぁ……それにしても可愛い。


「わかりました」


なかば諦めて戦おうかななんて思っていた矢先に劉備が了承した。


驚く俺と趙雲。俺は鎧なので驚いてるのばれないけど、やはり驚いてしまう。


「くく、そうか。さすがはこいつらの主といったところかな?」


「桃香様! なりませぬ。愛紗や鈴々ですら適わなかった相手ですぞ!」


「そうかもしれない。でも私じゃないと愛紗ちゃんたちを救えないのならそうするしかないよ」


決意を秘めた劉備の瞳がこの言葉が嘘ではないことを悠然と物語っていた。立派な考えだと思う……でもさ。


「ふははははは! なんという愚かしさか。劉備よ、たった二人の武将のために死ぬか」


「桃香は愚かじゃないのだ!」


「貴様……桃香様を侮辱したその罪、ただではすまさんぞ?」


ここは戦場なんだから……甘いこと言ってられないだろ、普通。


「まったく何様だ。所詮は同じ人間でしかない貴様に我が裁けると? 張飛の主張ならともかく少々傲慢すぎるのではないか? 趙子龍」


「「!」」


名を明かしてもいないのに言い当てられたせいか、劉備たちに緊張が走る。


そうだ、警戒しろ、そうして動きが鈍くなれば俺の勝ちだ。


「私に死ぬ気はないよ。だって愛紗ちゃんたちと一緒に笑っていたいもん」


「ならばなぜ戦になど関わる?」


もしこの問いの答えが予想通りのものなら……問題視する必要もないだろう。


「それは……皆が笑って暮らせる世界をつくるためです」


「くふふ、くははははははは! なんと無知蒙昧なことか、我の手のひらで踊りながらとんだ大言壮語を吐いたものだ。」


「……貴様、何をいっている?」


「貴様らに教えたところで何も変わらぬと思うが? あのクズが裏から糸を弾いているなどという虚言に惑わされているのが良い証拠。いや? それともわかっててやっているのか? くく、それなら大したものだがな」


俺の言葉を聞いて明らかに動揺し始める劉備たち。


「その様子、どうやら現実すら見据えていないただの愚か者のようだ。じわじわと殺そうかとも思ったが、どうやら貴様らは思ったよりもまだ遊べそうだ。現実を知り絶望しろ、そして怒りながら我のもとに来るのだな。その時は我がより絶望させ屠ってやろう」


「そんなことさせるものか!」


逃げようとする俺に向かってくるのを見て、2本の大剣を引き抜き、抱えていた関羽を投げつけ、張飛を蹴り上あげる。


「っっちい!」


足に気を込めて一気に走り抜ける。


逃げる方角から矢が後ろに降り注ぐ。恐らくあっちゃんたちの援護だろう。


それにしても劉備は予想を超えたあまちゃんだったな。あの体の動かなさから見て武はからっきしだろう。それなのに無謀なことをよくもするものだ。


ま、確認のついでに計画を確実のものにできるチャンスを作ってくれて感謝かな。


走りながら側に寄ってきた紀霊隊の何人か劉備側に兵を潜ませ、俺の言動や噂を広まらせるという策をすでに実行していたりする。


後は合流して進行状況を確認するだけだ。


もう追いつけないと思われる場所でスピードを緩め合流地点を目指す。


「紀霊隊長お疲れ様です」


援護を終えたあっちゃんが併走してきた。


「ありがとう、丁度いい援護射撃だったよ」


「いえ、あれぐらい紀霊隊ならば当たり前です。もうちょっと無茶したかったんですが……」


「え? もうちょっと何?」


最後の方だけ声が小さくて聞こえなかったので聞き返す。


「い、いえ! なんでもありません。ちょっと部下たちの様子を見てくるんどえこれで失礼いたします」


早口で話したかと思うとすぐに離れていってしまった。


なるほど、まだ訓練の足りていない実力不足の兵を見にいくのだろう。気が効くいい副官を持ったな……。


などと、誤魔化すために適当なことを言って離れていったとはつゆ知らずm曲解して解釈をする時雨だった。











夢を見ていた。


何処か暖かくて、悲しいそんな夢を……。


目を覚ますと周りに桃香様、鈴々、星が揃って私を覗き込んでいた。


「皆どうしたのだ?」


「め、目を覚ました!」


「愛紗が目覚めたのだ!」


「だから言ったではないか、愛紗は大丈夫だと」


「そういって星も心配していたのだ」


「な、何をいっておるっ! 私は別に心配など……」


一体何が? 星たちの喜びように疑問符を浮かべ、なぜ私が寝ていたのかを思い出す。


確かもの凄い殺気を感じて飛び出したのだったな……。


そうして紀霊に出会った所からはもう芋ずる式に思い出していった。思い出していくうちにどんどん怒りが膨れて行くのがわかる。


可愛いと最初に聞いたとき、予想外なその声音の優しさに驚いてドキドキしてしまった。


なのにあれが私をおちょくった言葉だと分かると、自分でも驚くぐらいの怒りに変わり、我を忘れて飛びかかってしまった。


その結果私は敗れ、命をとられることも無く寝ていたのだ。


「奴は何処だ!」


立ち上がり叫ぶ。


「奴というのは紀霊とかいう奴のことか?」


何処か暗い周りを気にする余裕もなく星の問いに答える。


「そうだ。あそこまで愚弄されて我慢出来るほど私はどうやら人ができていなかったらしい」


「奴ならば逃げた。愛紗よ、あやつには関わらぬほうがいいぞ」


「鈴々もそう思うのだ!」


「しかしだな……」


悔しい、なんでこんなにも悔しいのかわからないけれど悔しいのだ。


「愛紗さんには申し訳ないですけど紀霊さんのことは諦めてもらいます」


幼さの残る声が聞こえたかと思うと朱里が天幕の中に入ってきた。


「あの人は危険すぎます。私達にはない知恵と力を存分に使って振り回す……あの人が本気になればこの連合軍もすぐに瓦解するでしょう」


「ほう、我らが軍師殿はそこまであやつのことを買っておるのか?」


「そうですね……。買っているからこそわからないこともあります」


「朱里でもわからないことがあるのだ?」


「ええ、瓦解させられるだけの策を実行していながら中途半端な形で終わり、撤退しています。私達の兵糧を尽きさせる方法ならいくらでもあったはずでしゅ」


「「……」」


「はわわ……」


まったく相変わらずいい場面で噛む、ほんと、なにをやっているんだか……。だがおかげで頭が冷えたような気がする。


「了解した。紀霊にかかわらなければいいのだな?」


「え、あ……はい。紀霊さんにさえ関わらなければ大丈夫だと思います」


「でもそうすると戦いに参加できないのだ」


「それは大丈夫です。今までの行動からわかると思いますが、どうやら紀霊さんは私達を本気で潰すつもりはないようです」


「どうしてそんなことがわかるのだ?」


朱里の言っていることは理解できる。私達を潰すつもりならばもう潰しているだろうと思いつつ、こんなこともわからない鈴々に後で勉強させようと決意したのだった。


「後で私が教えてやるぞ、鈴々」


「う、なんだか愛紗が怖いのだ」


妙なところで勘がいいな、まったく……。


「えーっと、これからの私達の方針はどうなるの?」


今まで黙っていた桃香が朱里をせかす。


「今までと変わりません。虎牢関を攻め落とし、洛陽まで進行して名を上げていただきます」


「でも紀霊さんが言ってたこと。あれってもしかして本当は董卓さんが黒幕じゃないってことじゃないのかな?」


「桃香様、もし仮にそうでなかったとしても、恐らく裏から操っているのはあの紀霊でしょう。人を人とは思わぬ所業が出来るのはあやつぐらいなものだ」


「んー、そうなのかなー」


「確かにその可能性は高いと思います。董卓さんが表に顔を出していない以上どういう人なのかわかりませんが、あの紀霊という方は何を考えているのか読めません」


「ふむ、確かに。我らの絶望を所望しながらやっていることが何処かずれている気がする」


星の言うとおりだ、一体何を考えているのだろうか……紀霊というやからは。


その後も紀霊の対処について話し合ったがそれほど有益な話は出来なかった。


そんな中私は一人、紀霊に仕返しをすることを心に決めていたのだった。

さっさと完結させて改訂した方がいい気がしてきた今日この頃。

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