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ゴブリンの王国  作者: 春野隠者
遙かなる王国
338/371

天の支配者




 全てを癒す光が赤龍の体を包み、その傷跡を塞いでいく。

 瞼を閉じ、傷跡に手を翳すレシアの姿は光りに包まれ神々しくさえあった。ゴブリンの王は僅かに躊躇ったが、黙ってその行為を見守る。地面に突き立てた大剣に伸ばしかけた腕を再び組み直すと、癒しの光を受け入れる赤龍を見守っていた。

 やがて、収束していく光と共に跡形もなく消え去った傷跡を確認し、レシアは微笑む。

「……さあ、続きをするか?」

 ゴブリンの王の言葉に驚愕したのは彼の後ろに控える2匹である。態々相手を回復させて更に戦おうというのだ。しかも相手は龍。隔絶した力の差と知識の差は抗うべくもない。

 不機嫌そうに喉の奥を鳴らした赤龍は鎌首を擡げていた頭を下げると、ゴブリンの王の間近まで顔を寄せる。

「……冗談を言うな。我を──火炎龍ドゥーエを恥知らずにするつもりか」

 吐き出す吐息は、既に熱を失っている。

「用件を言え、子鬼よ。あの信徒のお陰で命拾いしたようだな」

「冥府の女神が従えし一柱、翼なき空蛇(ガウェイン)に要件がある」

 瞬間、消えかけていた龍の吐息に熱が戻る。

「……我が主に何の用か!? 返答次第では、我が誇りを投げ捨ててでも貴様を殺さねばならん!」

「早合点するな! 俺はガウェインと話をしたいだけだ!」

 気炎を上げる火炎龍の咆哮に、王も咆哮を以って応えた。巨大な龍眼がゴブリンの王の心の底を推し量ろうと、その姿を覗き込む。

 気の弱いものならそれだけで発狂するだろうそれを、ゴブリンの王は平然と見返した。後ろに控える2匹のゴブリンが息を呑む中、動いたのはやはり火炎龍ドゥーエだった。

「……良かろう。我が主に謁見する資格はあるようだ。甚だ遺憾ではあるがな」

 首を垂れるドゥーエが視線で促す。

「乗れ。我が主の下へ送り届けてやろう」

 頷いたゴブリンの王は向き直り、ギ・ゴーに命じる。

「待機している者達に知らせ、野営の準備をして待て。もし俺が戻らねば、分かるな?」

「……王、不遜と心得ながら申し上げます。王が戻らねば、我らはこの場にて龍を相手に一戦を所望する所存にございます」

 膝を突き、曲刀を右手に持ち替えたギ・ゴー・アマツキは頭を下げる。

「我が命を聞けぬと?」

「王を守れずして、どうして我らだけが国へ帰れましょう」

 ギ・ゴーの言葉を聞いたゴブリンの王は苦笑した。

「済まぬ。俺が悪かった。必ず戻る。ならばこそ、無事で待て」

「御意」

 踵を返すギ・ゴーは、視線をギ・ザーに向ける。その視線を受けたギ・ザーは頷き返して返事とした。

 龍の背に乗るのは、ゴブリンの王とギ・ザー・ザークエンド。

 そして……。

「何故、当然のようにお前が乗り込むのだ? レシア・フェル・ジール」

「良いじゃないですか。誰のお陰でドゥーエさんがこんなにも協力的になってくれたと思ってるんです?」

 至極真っ当な意見をぶつけられたゴブリンの王は黙り込み、レシアは得意気に鼻を鳴らした。

「王が望むなら、蹴落としても良いが?」

 小声で囁くギ・ザーの不穏な言葉に、ゴブリンの王は眉を顰めた。

「やめておこう。大切な部下を死地に落としたくはない。レシアの言も尤もだしな」

「王がそれでいいなら構わんが」

 戯けたような王の言葉に、ギ・ザーは王と同じように眉を顰めて頷いた。

 どうやら交渉役として癒しの女神の信徒はゴブリンの王よりも格上らしかった。火炎龍と名乗った龍の対応でそれが分かる。世界を支配する人間の神々の力はそれ程までに強いらしいと認識を改めると共に、使えるのなら敵の力でも使うべきだとゴブリンの王は判断した。

 ただそれとは別に、彼女の身を心配する己が居ることも否定出来ない。

 もしガウェインが彼女を殺そうとするならば、ギ・ザーにレシアを逃させる必要がある。そこまで考えたゴブリンの王は、最悪の場合レシアを連れて逃げることをギ・ザーに指示しておく。

「……納得いかんな。我が王よ」

「ガウェインが俺を殺すことはまずない。我が内に冥府の女神の恩寵ある限りな……。だが、レシアは別だ。そこまで言えば分かるだろう?」

「……納得はいかんが、理解は出来る。だが、あの娘の安全を確認したならば……」

「万が一の話だ」

「であればいいが」

「何の話をしているんですか!?」

 小声と話し合うゴブリンの王とギ・ザーの会話に、レシアが声を張り上げる。一人除け者にされているのが不満だったらしい彼女は、頬を膨らませて抗議する。

「ガウェインと何の話をしようかと思ってな!」

 態と大声で返答するゴブリンの王に、レシアはジト目を向けて言い切った。

「嘘をつく人には二種類の特徴があるといいます。声が大きくなる人と目が泳ぐ人です。王様? 私の目が見返せますか?」

「──当然だろう」

「──戯れ付くのもいいが、そろそろ飛ぶぞ」

 全員を乗せたドゥーエが言葉も早々に浮き上がる。まるで空に地面の延長があるかのように這い進むドゥーエが、当然のように空を飛ぶ。臓腑を突き上げる浮遊感に、思わずゴブリンの王の口から苦悶の声が漏れた。

「……貴重な体験ですが、これは怖いですね」

「……うむ」

「そうだろうか? まぁ、こんなものだろう。それよりも随分滑らかに飛ぶものだ」

 レシアとゴブリンの王が眼下を見下ろし僅かに息を呑むのと対照的に、ギ・ザーは首を傾げていた。彼の関心は、ドゥーエと名乗った龍がどのような組成式の魔法を使って空を飛んでいるのかということだった。

 一時的にとは言え自身も空を飛ぶことが可能なギ・ザーからすれば、飛ぶことそれ自体よりも原理の方が気になっている。

 あっという間に地面が遠くなり、見下ろす大地の形が次第に見えてくる。煙を吹き上げる火山。その南に広がる鬱蒼とした大森林。そして北稜山脈に火山地帯。黒煙の上を更に上昇すれば、彼方に見えるのは彼らの王国である。

 歩いてきた30日以上の行程を一息に見下ろす絶景に、レシアもギ・ザーも息を呑んでいた。

「天を往く者の視点か」

 ゴブリンの王は、ゴブリンの肉体では決して持ち得ない高い視点に目を細めた。滑らかに空を這い進むと、ドゥーエは進路を北西にある巨大な山の頂に向ける。

「地を往くお前達では決して持ち得ぬ高さよ。誇るが良い。生きとし生ける者でこの高さから大地を見下ろすのは、恐らくお前達が初めてだろう」

 笑うドゥーエに、ゴブリンの王も口の端を歪めて答える。

「我らは地を往く。お前達は天に住む。生き方の違いだな」

「……我らがその気になれば、地上など簡単に焼き尽くせるが?」

「地に住む者達を侮らぬことだ。数とは、それだけで力なのだからな。焼き尽くしたとして、その後にお前達を待っているのは破滅かもしれんぞ」

 王と龍が会話を交わす間に目的の地が見えてくる。雷雲の渦巻く一層高い山の頂。植物も殆ど生えず、凍りついた地表に身を横たえて、それは居た。

 黒き龍鱗に覆われた滑らかな表皮。全長は200メートル程もあるだろう。ドゥーエも巨大に見えたが、その龍の大きさからすれば未だ小さいと感じてしまう。胴回りは樹齢数千年の樹木を4つも束ねた程もある。

 冥府の女神の遣わした眷属神の名に相応しく、その姿は畏怖するに相応しいものだった。天に反逆するかのような角は、乳白色でありながら不思議な光沢を持っている。火炎龍ドゥーエがガウェインの前に降りると、その身を縮こまらせて頭を垂れる。

 閉じていた瞼を開いたガウェインの瞳は、雷雲を凝縮したような漆黒。それが、ゆっくりとドゥーエを見る。

「……ドゥーエか」

 言葉それ自体に重さがあるように、龍の口から語られる言葉はゴブリン達に圧力を感じさせる。見上げるばかりの巨躯を前に、ギ・ザーは背中に冷や汗を浮かべていた。

「……用件は分かっている。己が身のことだろう?」

 まるでゴブリンの王の存在など目に入らぬように、ガウェインはドゥーエを見つめる。

「……人間。貴様の背後に忌々しき影が見えるな」

 ガウェインは、そこで初めてレシアへと視線を向けた。

冥府の女神(アルテーシア)の眷属神にして、天の支配者ガウェインよ。俺に力を貸してもらいたい。俺には約定がある。勝利と栄光の女神(ヘカテリーナ)の歌を、再びこの地上に響かせねばならんのだ」

「……クハハハハ! その物言い、地を喰らう大蛇(パーシヴァル)に祝福を受けたか」

 神代の龍が口元を笑みの形に歪ませる。

 瞬きを二度三度したガウェインが、ゴブリンの王を直視した。

癒しの女神(ゼノビア)の信徒を連れた、小さき者の王か。我が眷属をどうやって誑し込んだのだ?」

「傷付き倒れた者を癒やすのは、ゼノビアの信徒たる私の役割です」

「成程。影がちらつくのはそういうことか……。そして、小さき者の王よ。貴様の中には懐かしき我が同胞か」

 寝そべっていたガウェインが頭を上げる。ただそれだけで強風が巻き起こる程の巨躯を持ち上げ、ガウェインは龍眼をゴブリンの王に近付けた。

「小さき者の王よ。お前は望むのだな? 荒れ狂う嵐を! 我らと我らの主が長年待ち望んだ大いなる嵐の時を!」

 吹きつけられる息は暴風のように激しく、雷鳴のように響く。

「俺の道は未だ半ば。一度歩み始めたこの覇道を、他人に押し付けるつもりはない!」

「良き気概だ、小さき者の王よ! ならば、我が加護を以って万雷の嵐を呼び込むが良い!」

 ガウェインの持つ龍玉が輝きを以ってゴブリンの王を包む。

「だが、心せよ。交じり合う魂は何れ楔となって貴様を滅ぼす。我が力はそれを阻止すること能わぬ。貴様の力を十全に発揮させてやることは出来ても、その身の滅びに抗うことは何人にも出来はせぬ」

 不吉な預言を告げるガウェインに、ゴブリンの王は応えた。

「元より平穏な死を迎えられるなどとは思っていない!」

「良き気概、良き覚悟! おお、懐かしき我らが嵐の日々よ!」

 ガウェインの握る龍玉が輝きを増し、ゴブリンの王に吸い込まれていく。

「ドゥーエ」

 続いて視線を火炎龍に移すと、龍の王たるガウェインは宣言する。

「命を拾った貴様は、最早我が眷属とは思わぬ。この者達と共に南へ降れ。それをもって、小さき者の王との盟約としよう」

「……御意」

 ゴブリンの王の身体の中に吸い込まれる光を確認して、ガウェインは笑う。

「さても楽しきは、この日々の終わり。我が母なる冥府の女神は間もなく地上に戻られる」

 ゴブリンの王を注視するガウェインは、冷徹そのものの視線でゴブリンの王を品定めする。

「さぁ、戻れ。未だ道は半ばなのだろう?」

「無論!」

 踵を返すゴブリンの王に、ガウェインは目を細めた。

「贄とするには少々惜しいか。だが、我らが主の為ならば、やむを得ぬ」

 ゴブリンの王が去った後、冥府の女神の降臨が近い事を知ったガウェインは歓喜に身を震わせた。


◆◇◆


 火炎龍ドゥーエの背に乗り帰ってきたゴブリンの王を出迎えたギ・ゴー達一行は歓喜に包まれていた。事の次第をギ・ザーが不満そうに告げると、一行は驚愕と共に王への崇拝の念を強めた。

 彼らの王は神話に語られる存在と対等に交渉し、盟約を取り付けたのだ。そして、その証とも言うべきドゥーエの姿は、彼らの眼の前にある。

 王の偉業を素直に称える彼らにあって、ギ・ザーは不満気であった。

「どうした?」

 龍と立ち会えないかと密かに思うギ・ゴーに声をかけられ、ギ・ザーは眉を顰めながら口を開く。

「どうも話が上手過ぎる」

「眷属神達は我が王に期待を掛けているということなのだろう?」

「仮にそうであったとしても、自身の配下の龍を派遣するなど、これまであったか?」

「……それだけ期待が大きいのではないか?」

「俺は龍の表情には疎いがな。我が王を見るガウェインの目は、期待を掛けるというよりもどこか観察するようであったぞ。少なくとも、あのドゥーエという龍程には分かり易くはない」

 ギ・ザーが鋭い視線を飛ばす先では、レシアにガストラを育てるにはどうしたらいいのかと聞かれて困り果てているドゥーエの姿があった。

「龍の知識は全天に通ずると聞きました! であれば、知っている筈です! 必ず成功する方法を、しかもなるべく安全に!」

「勘違いをしてもらっては困る! いくら我ら龍が長命と言えど、経験のないことに確証は持てぬ!」

 喧々囂々の言い争いを続ける一人と一匹を横目に、ギ・ザーは深刻そうに息を吐いた。

「あの龍が、こちらの内情を探る者でないのは分かるが……」

「考え過ぎではないのか? 我らの内情を龍が知って、如何なる利益があるというのだ」

「……だと良いがな」

 自身の内に宿る精霊も、ガウェインから距離を取って初めて不快の念を送ってくる。

「取り敢えずは王の無事の帰還を祝い、何よりも早く東に戻る。これが大事だ」

「尤もだ。忌々しいことにな」

「して、ギ・ザー・ザークエンド。あのドゥーエとかいう龍と戦う方法は、何かないものか」

 腕を組み思案と共に唸るギ・ゴーに、ギ・ザーは呆れて言葉も出なかった。

 ドゥーエの協力によって、ゴブリンの王達はすぐさま首都である王の座す都(レヴェア・スー)へと帰り着く。西方未踏領域から半日も掛からぬ龍の速度に誰もが驚愕し、そして突如として上空に現れた龍の存在にレヴェア・スーは混乱の只中に落とされた。

 だが、それも王宮にゴブリンの王が降り立つまでだった。

 混乱はそのまま歓喜の声となってレヴェア・スーを包み、国を上げての慶事として広く宣伝されることになる。

 黒き太陽の国(アルロデナ)の王は龍と誼を通じ、前人未到の領域より帰還した。

 この報告は最前線で戦う将軍達と属国・同盟国にも伝えられ、属国や同盟国からは祝いの使者がやってくると共に、最前線の将軍達は勇躍してその攻勢を強めた。

「やはり我が王は、偉大なことこの上ない!」

 ギ・グー・ベルベナのフェルドゥーク。ギ・ガー・ラークスのアランサイン。ギ・ギー・オルドのザイルドゥーク。それぞれに攻勢を強める中、この時期に一気に進軍速度を上げたのは、最南端を攻略する連合軍だった。

「我が君が龍と誼を結んだと聞きましたが、龍とはどんな存在なのでしょうな?」

 南から吹き込む潮風を肌に受けるギ・ヂー・ユーブは、傍らで計算をしている同盟国の軍師に問いかけた。

「……ん、さて? 僕も見たことはありませんね」

 ヴィラン・ド・ズールは、赤備えと呼ばれる熱砂の神(アシュナサン)を信仰する者達で構成された軍を率いて参戦していた。その数1000。殆どが年若い少年で構成された彼らの士気は、意外な程高い。

 女皇ミラ・ヴィ・バーネンが政権を握った時から密かに進めていた、ヴィランの為の軍である。

 ミラに対するクシャイン教徒達の信仰は恐ろしく高い。クシャイン教徒の聖女であり教皇であるミラの為とあらば、彼らは文字通り命を懸けて戦う。

 だが、その信仰はあくまでもミラ1人に向けられたものであって、彼女が信頼を寄せるヴィランに向けられたものではない。それどころか、クシャイン教徒達の中にはミラからの信望厚いヴィランを殊更に敵視する者も居る。

 防衛戦ではミラが近くに居た為にそこまで顕在化しなかったが、遠征となればその問題は大きくならざるを得ない。サボタージュなど決め込まれてはヴィランの経歴に傷が付く。

 神都クルディティアンを掌握する前から、その問題点に気が付いていた聡明なミラは一つの打開案を提示する。それが異教徒に拠る軍である。一神教であるクシャイン教徒ではあるが、ミラが女皇の地位についてより多神教に対する迫害は起こっていない。

 大陸でも有数の内治の能力を持つ彼女は迫害による国力の低下を嫌い、多神教にもその信仰を認めた。ただし、制限を付けてである。

 多神教を信じる者は、クシャイン教徒の統治する領内では多めに税を払わねばならない。

 その税の一つが、一家族につき1人の男子の軍への徴用である。幼少の頃から国に対する忠誠心を備えると共に栄養のある食事を与えられた彼らは、国家に仕える精鋭の兵士へと成長した。

 今回の遠征にヴィランが伴った彼らは、その最初の部隊である。

 農民兵を主体としたクシャイン教徒達には珍しい、軍事専門の部隊である。ミラが、如何にこの遠征を重視していたかが分かるというものだ。

「ここを落として、レヴェア・スーに龍を見物しに行くというのも良いかもしれませんね」

 計算の終わったヴィランは微笑むと、右腕を振り上げる。

「うむ、そろそろか」

「既に千鬼兵(サザンオルガ)は配置済みです」

「では、私の(レギオル)も配置につきます」

「宜しくお願いします」

 ヴィランの号令と共にゴブリンの軍勢が足並みを揃えて進撃を開始し、南方の小国の一つが落ちた。


◆◇◆


 アルロデナが快進撃を続ける中、東の大国アルサスは混乱を深めていた。

 聖王国アルサスの暦で461年、ゴブリン達の暦で王暦4年の初夏から引き続く改革派による聖王国革命未遂事件は今まで燻っていた階級闘争に火を点け、首都から地方に至るまで血を見ぬ所は無いという有り様だった。

 それでも3カ月の間に吹き荒れた元老院派による粛清により、漸く落ち着きを取り戻しつつあったアルサスの革命未遂事件は、そこから更に予想だにしない方向へと転がり始める。

 人材の払底や略奪など、経済の麻痺からなる国力の低下に見舞われたアルサスは、その国力を復活させる為に、あろうことか大陸最東部の海洋国家ヤーマへと進軍。誰がどう見ても勝てる筈のない無謀な戦を始めてしまったのだ。

 当初、その混乱を見ていたソフィアもヴィネも、そしてプエルでさえも謀略の成功にほくそ笑みながらアルサスの動向を見守っていた。ヤーマは通商国家らしく一早く防衛の準備を整えると大量の冒険者を雇い入れ、防衛の準備を進める。

 アルサスは、正常な判断が出来なくなっているとしか思えないような無謀な戦を仕掛けようとしている。誰もがそう考え、見守る中、海洋国家ヤーマに宣戦布告。国境を突破し、ヤーマに攻め入る。

 だが、異常事態はそこから始まった。

 補給さえままならない筈のアルサスの軍勢は、強行軍とも言える速度でヤーマ国内を突破。立ち塞がる守備隊を難なく抜き去り、首都を占領してしまったのだ。

 瞬く間に海洋国家ヤーマ全土を占領したアルサスは、神聖王国アーティガンドを名乗り、同時に国王の娘と一人の青年の婚約を発表。アーティガンドの後継者として、その青年を指名した。

 平均的な兵士よりも頭2つ分高い身長。黒色の髪と鳶色の瞳。実年齢より5歳程若く見られるのが特徴の青年だった。

「勇者、ですか?」

 報告を読み終えたプエルは、呟いた言葉の不吉さに柳眉を顰めた。


挿絵(By みてみん)



◆◆◆◆◆◆◆◆


【種族】ゴブリン

【レベル】92

【階級】インペリアル・大帝

【保有スキル】《混沌の子鬼達の覇者》《叛逆の魂》《天地を喰らう咆哮》《剣技A−》《覇王の征く道》《王者の魂》《王者の心得Ⅲ》《神々の眷属》《覇王の誓約》《一つ目蛇の魔眼》《魔流操作》《猛る覇者の魂》《三度の詠唱》《戦人の直感》《導かれし者》《混沌を呼ぶ王》《封印された戦神の恩寵》《冥府の女神の聖寵》《睥睨せしは復讐の女神》《世界を敵に回す者》

【加護】冥府の女神(アルテーシア)

【属性】闇、死

【従属魔】ルーク・コボルト(ハス)(Lv56)灰色狼(ガストラ)(Lv20)灰色狼(シンシア)(Lv89)オーク・グレートキング(ブイ)(Lv29)

【状態】《一つ目蛇の祝福》《双頭の蛇の守護》《土喰らう大蛇の祝福》《翼なき空蛇の守護》


《翼なき空蛇の守護》──不可避の傷の影響を軽減する。あらゆる状態異常に対して耐性(大)、冥府の女神を除く神々からの干渉に対して耐性(中)

《世界を敵に回す者》──冥府の女神の眷属神4匹から祝福と守護を受けることにより、冥府の魔素を容易に引き出すことが可能となる。ただし、敵対する神々の加護を受ける者達から憎悪(中)


◆◆◆◆◆◆◆◆


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