神話
【種族】ゴブリン
【レベル】26
【階級】デューク・群れの主
【保有スキル】《群れの統率者》《反逆の意志》《威圧の咆哮》《剣技B−》《果て無き強欲》《王者の魂》《王者の心得Ⅰ》《青蛇の眼》《死線に踊る》《赤蛇の眼》《魔力操作》《狂戦士の魂》《三度の詠唱》
【加護】冥府の女神
【属性】闇、死
【従属魔】コボルト(Lv9)
【状態異常】《聖女の魅了》
新しく加わった祭司の群れは、戦闘員として数えることができるのが30匹ほど。
そのうちいわゆる魔法を実戦レベルで使いこなせるのは、25匹程度であった。
群れを率いていたゴブリン・レアに名前を授ける。
「ギ・ザーとする」
一応礼のようなものを言っていたが、微妙な顔をされた。こういう反応は初めてだな……。
「なんだ、不満か?」
「いや……何もかも完璧な男など、そうは居ないと言うだけの話だ」
肩を竦めるギ・ザー。
悪かったな、センスがなくて!
新しく加わったドルイドの群れは、非戦闘員と合わせて50匹ほどの群れになる。
それを引き連れて集落へ戻った。
◇◆◆
新しくドルイド達が加わり、俺の集落の住むゴブリンは142匹になる。
うち戦闘員に加わることができるのが92匹、老ゴブリンや雌、幼生などが残りの50匹となる。中々大所帯になってきた。
集落の守りに残したギ・グーも無事にその役目を終えたようだし、狩りの方も今のところは順調だ。ドルイドも含めた三匹一組を組みなおし、今後の狩りの方針を示してから、その日は眠った。
翌日からは、新しく加わった者らに【スキル】《赤蛇の瞳》を使いつつ、あくまで分かる範囲で有望そうな者をギ・ガーの指揮下で三匹一組を作らせる。
そして日が傾くようになってからギ・ガーらを率いて狩りに出かけ、主に南の方面を開拓する。
日が暮れ始める頃、得た獲物を持って集落に帰った。
その夜のこと、いつも通りレシアの話を聞こうと牢屋に向かったら先客が居た。
「ギ・ザーどうかしたか?」
「いや、どうもこうもな」
以前から知識欲は人一倍あったギ・ザーは人間の知識を欲しているらしい。先の決闘でも、それが目当てでレシアを要求したとのこと。
だが、それが原因でどうやらレシアに嫌われてしまったらしく、追い払われてしまったということだ。王の財だというので手を出すこともできず立ち往生していたと、このゴブリンには珍しく苦笑していた。
人間に似た容姿のためか、その笑い方までもが人間臭さを感じさせる。
「ちょうどいい、これから俺が行くところだ。一緒に来るか」
「助かる」
珍しく普通に頭を下げるギ・ザー。しかし、このややもすれば自信過剰なゴブリンをここまで困らせるとは、どんな断り方をしたんだレシア。
俺としてはレシアの話よりも、そちらの方が気になった。
牢に入る俺を見とめ、そうして続いて入ってくるギ・ザーを見咎めるとレシアは眉間に深い谷を刻んだ。
「なんで、そのゴブリンが居るんですか?」
不満たらたらのその様子に苦笑する。
「これも話を聞きたいらしい」
「私は……その、貴方だからお話しているのであって、そのゴブリンとはお話したくありません」
「そう言うな、俺からも頼む」
ごにょごにょと聞き取れないほどの声で何かを呟いて、レシアは囁くような小ささで返事をした。
「……分かりました。でも、貴方と居るときだけです」
「ふっ、嫌われたな」
俺の言葉に、苦笑して肩を竦めるギ・ザー。
くじけない男だな。
「今日は神々の話について聞きたい」
「神話ですか?」
「そうだ。特に国生みの祖神とその娘たちの話だ……どうかしたか?」
驚愕に固まるレシアの表情を不思議に思って問いただす。
「あ、いえ……少し驚きました。貴方が神々の系譜に興味を持っているなんて」
俺は後ろに控えるギ・ザーと顔を見合わせる。
「そんなに不思議か?」
「まぁ、普通はもっと別の話を聞きたがる。例えば実用的な魔法の話とか」
なるほど、ギ・ザーの目的はそこか。
「ふむ……レシアも神々の話は無益だと思うか?」
「あ、いえ。私はそうは思いません。神々の歴史から知識を学び取るのが私たち信徒の存在意義でもあるのですから」
信徒の存在意義?
「神々の信徒というのは、何か特別なのか?」
「はい。大きく分けて私たちの……その、人間の世界には宗教というものがあります。そちらの世界にはあるのですか?」
「あるのか?」
「ないな」
後ろを振り返って質問すれば、即座に答えが返ってくる。
「俺達の生き方は分かり易い。力無き者は死ぬか、力ある者に従うか。もちろん加護を与えてくれる神々にはある程度の愛着はあるが」
淀みなく答えるギ・ザーの言葉に頷く。まぁおれは冥府の女神の加護なんてちっとも愛着はないが、俺みたいなのは極々まれだろう。
「そうですか。では、理解するのが難しいかもしれませんが、人々の中には神々の恩恵を受けたものと受けないものが居ます」
何やら小難しい話になってきた。滔々と語るレシアはとまる気配がない。
何やら危険なスイッチを押してしまった気がして、段々と後悔し始める。
「ま、まてレシア」
「……つまり宗教とはっ! はい、なんでしょう?」
良い所なのに、と視線で訴えられても困る。
「宗教が俺には理解できないものなのは良く分かった。今日の本題はそこじゃない。神々の話だ」
「むぅ……分かりました。宗教については、また今度お話しましょう」
◇◆◇
父祖なる神の名を、クティアルガと言う。
彼は、世界を創造した。
七夜八日の間に大海の中の陸地を創造し、そうしてそれを見守るべく自身の一部を切り取って新たな神を作り出した。
母なる神の名を、ディートナという。
クティアルガの一部から生まれ出でた母なる神は、クティアルガと協力して次々と命を生み出していった。
水の神、森の神、風の神、大地の神、幻想の神、夢の神、星渡りの神……それこそ多種多様。命あらばそこに神がいる。
神々にあふれた世界にクティアルガとディートナは満足していたが、火の神を生み出す時にディートナは火傷を負ってしまい、そうしてその火傷が原因で、彼女は死の世界へ旅立つことになる。
クティアルガは悲しかった。
今までずっと二人で生み出してきた文字通り半身を失ってしまったのだから。
彼は嘆き悲しみ、最後に自らの生み出した子供らに命を創造せよと言い残して、この世界に身を沈めた。彼は、ディートナと二人で作ったこの世界の一部になることを望んだのだ。
そうして残された神々は、協力して命を創造する。
森と水の神は仰ぎ見たディートナに似せて、妖精族を。
風と大地の神々は鉱石を削って亜人達を。
幻想と夢の神は、己が見た夢に幻想を重ねて竜達を。
星渡りの神々は星を渡って集めた材料で、巨人を。
そうして残った火の神。
彼のせいで母なる神が死んでしまった原因を作った彼は、一番幼いながらも独りで命を創造せねばならなかった。彼が生まれたことによって、父と母が消え去ったのは周りの神々も承知していたからだ。
だから彼と協力して命を創造しようとする神々はいなかった。
だがどうしてもうまくいかない。
哀れに思った最も年長の水の神は、他の神々に呼びかけた。それぞれ余った物を、火の神に分け与えるように、と。
持ち寄った材料は、森の神からは、長い蔦を水の神からは冷えた水を、大地の神は土塊を……他の神々から持ち寄ったものは、どれも先に創造された命達の創造には使われなかった余り物。
だが火の神は頑張った。
慣れない手つきで土塊に水を混ぜて土をこねる。それに余った物を混ぜ合わせ、一心に願った。
幼き日に見た父の姿。
どうぞ、父のような命よ生まれてくださいと。
そうして人間が生まれた。
神々は、創り出した命を父の作った陸地にばら撒いた。
妖精を神秘の森の奥へ、風渡る草原に亜人を、夢見るほど高くそびえる高山に竜達を、地下深くに巨人たちを。人間達を海の見える小さな浜に。
彼らは互いに助け合い、徐々に数を増やしていった。
それに気を良くした神々は、徐々に自分たちだけで様々な命を創り出していく。
獣や魔獣、中には失敗だと神々の間で思われるものまで、次々に神々は生み出していった。
だが火の神は、悲しんでいた。
彼の生み出した人間は妖精や亜人や巨人たちに比べて余りにも、小さく弱かった。
そこで火の神は、水の神に相談した。
どうしたらいいのだろうかと、水の神はひとつの話をした。父が母を作ったときの話だ。
火の神は泣きながら水の神に訴えた。でも、誰も協力してくれないと。
水の神は諭すように言った。では自身の半身を分け与えてみてはどうかと。
火の神は喜んだ。
ああ、そうか。そうすればもう独りではないと。
そうして火の神は、自身の足を使って月を二つ創造し、自身の右手を使って人に知恵の神を授け、自身の左手を使って精霊を創り。そうして自身の頭を使って国生みの祖神を生み出し、最後に残った体を使って太陽を創造した。
生まれてすぐ精霊達は、人間たちと袂を分かつことになる。
火の神が消えてしまったことを悲しんだ彼らが、姿を変えて火の神の助けになるため世界に溶け込んでしまったのだ。彼らの活発なところでは火山が生まれ、新たな陸地を作り出すことになる。
そうして頭と右腕の神々を新たな神々と呼ぶ。
国生みの祖神の名をアティブ。知恵の神の名をヘラという。
二人は結婚して人間を導くべき女神たち男神たちを産み落とした。
長女に勇気を受け持つアルテーシア。長男に武器と魔法を受け持つグルディカ。次女に勝利と栄光を受け持つヘカテリーナ。三女に運命を司るリューリュナ。四女に癒しの女神であるゼノビア。
彼らをして人間を導かせ、アティブはヘラと共に国と言う概念を作った。
人間が順調な発展を遂げている頃、神々の世界は危機に瀕していた。
無軌道に命を生み出しすぎた神々がどの命が一番優れているかで、言い争いになったのだ。
最初は諍いを収めようとしていた水の神ら、長命の神々も次第にその争いに巻き込まれる形となった。
そうして神々の間にある結論が出た。
では、どれが最も優れているか、試してみようではないかと。
そうして凄惨な殺し合いが始まった。
亜人と妖精が殺し合い、巨人と竜が殺しあう。多種多様な生命が殺しあうその中で、人間は新たな神々の庇護を受けその殺し合いを潜り抜ける。
アルテーシアの勇気を奮い、グルディカの武器と魔法をその手に、ヘカテリーナが勝利と栄光を約束する。運命のリューリュナに導かれ何人もの“勇者”がその身を犠牲に人々を救った。
傷つき倒れた者には、ゼノビアの愛が彼らを癒した。
そうして気づけば、人間は陸地で最大の版図を有する最有力の生命になっていた。森を焼き、山を削り領土を広げる。土を掘り返し、貴重な鉱石を惜しみなく使ってさらに領土を拡大する。
だがそれをとめるべき、他の種族は神々の意志に従ってお互いに憎しみ合い、彼ら人間に対抗する術を持たない。
アティブを筆頭とした新しき神々の力はそれほどまでに強力だったのだ。
それを忌々しそうに眺めていた神々の一人が、あるとき神々に提案した。
母なるディートナに戻ってきてもらい、この世界に今一度調和を取り戻そう。
やはり争いは愚かであったと。
他の神々も同意を示す。相次ぐ殺し合いで彼ら自身の力も落ちていたのだ。
そうして、死者の世界の扉が開かれる。
神々は祈った。
母なるディートナよ。今一度我らを導いてほしいと。
だが、闇と暗闇の底から出てきたのは強大な蛇の群れだった。
あっという間に彼らは神々を喰らい尽くし、世界を暗黒で覆った。
死者の世界の扉から開かれて飛び出たのは蛇だけではない。魔獣、魔物、死者達。
不浄と腐敗の獣たちがこの世界に解き放たれた。
わずかに生き残った水の神たち古き神々は、この事態に恐怖した。
このままでは、父祖たる神が創りし世界が死で溢れ返ってしまう!
だが、彼らの生み出した妖精達も、亜人も、巨人も、溢れる死の軍勢に抗すべき力を持たなかった。
そこに一条の光が差し込む。
アティブを筆頭とした人間達が、わずかに死の軍勢に抗っていたのだ。
水の神は今までの行いを恥じ、生き残ったほかの神々を説得して回る。
ここは人間の神々の下に力を結集すべきだ。
そうして命あるもの達は、亜人、竜、巨人、妖精はアティブの元に結集する。
アティブとヘラは、アルテーシアを筆頭とした子供らに、多種族を率いて戦うことを命じる。
勇気を示せ!
武器を取れ!
運命を信じよ!
勝利と栄光は、我らが元に!
多種族を率いるアルテーシア、グルディカ、リューリュナ、ヘカテリーナは溢れかえる死の軍勢を相手に死力を尽くして戦った。
アルテーシアは常に人々の最前線にて剣を振るい、グルディカは戦いの間中一睡もせずに武器と魔法を生み出し続け、リューリュナは死すべき運命の者を救い上げ、ヘカテリーナは勝利の栄光を高らかに謳いあげて、人々を鼓舞し続けた。
100年続く戦いを戦い抜き、彼らは遂に死の軍勢を死者の国の扉の向こうに押し返す。
死者の扉の向こう側にあるディートナの亡骸に、アルテーシアが剣を突き立て死の軍勢との戦いは収束を迎えた。
古き神々は新しき神々に感謝し、それぞれの領域に戻って不可侵領域を定めると、後は争いをやめてひっそりと生きていくことを選んだ。
彼らの生み出した命もまた同じ。
妖精は神秘の水と森の中へ。
草原を住処としていた亜人は、草原各地と深い森の中へ住居を定めた。
高くそびえる山脈には竜達が。
地下深くには巨人たちがそれぞれ住居を定める。
新しき神々の絶頂期であった。
それから人間の繁栄の時代が続く。
困難にはアルテーシアがあたり、武器と魔法の力を持ってグルディカが解決を図り、リューリュナは人々の運命を導き、ヘカテリーナが勝利と栄光を約束した。
だが、その繁栄の時代も長くは続かない。
発端は、国生みの祖神アティブがゼノビアの美しさに目を奪われたのが間違いの元だった。
知恵の神であったヘラはそのアティブの心変わりを知って姿をくらまし、アルテーシアは父の心変わりに嫉妬した。
グルディカの作った武器や魔法が、世界に混乱をもたらすことを知った彼はそれらを創造することをやめてしまい、死すべき人間の運命を救ってきたリューリュナは、気紛れに凋落する人間の有様に酔いしれるようになった。
誰に勝利と栄光をもたらせばいいか、わからなくなったヘカテリーナはその勝利と栄光を与えることを忘れた。
神々のそんな様子に、人間もまた凋落を始める。
堕落と腐敗と嫉妬あらゆる物が蔓延し、病と死におびえて誇りを忘れていた。
中でもアルテーシアの嫉妬は凄まじかった。
死の軍勢を追い払うとき、命を賭して戦ったのは他でもない自分である。
なのに、なぜゼノビアだけがアティブに愛されなければ為らないのか。
嫉妬の炎に狂うアルテーシアに嫌気が差したアティブは、死者の国を領地として彼女に与えた。
死者の国は母なるディートナ亡き後誰の領地にもなっておらず、荒廃が進んでいたからだ。
このままでは死者の国が滅んでしまう。
そうすれば死者達は行き場に迷い、再びこちらの世界に溢れかえることになるだろう。
アルテーシアは単身、死者の国に向かいディートナの亡骸に刺さったグルディカの剣を引き抜いて、蛇たちをなぎ払う。
その怒りは凄まじく、いつしか彼女が死者の国を統べるまでになっていた。
竜と呼べるほどの蛇を従え、ディートナの亡骸を使って死者の国の兵士を作り上げる。
そうして、今度は彼女が人間の国に攻め入った。
アルテーシアの離反は、瞬く間に人間の世界を席巻する。
ゼノビアへの愛ゆえに全てを忘れていたアティブ。
姿をくらました知恵の神ヘラ。
魔法と武器を作ることをやめてしまったグルディカ。
運命を弄ぶリューリュナ。
勝利と栄光を与えることを忘れたヘカテリーナ。
アティブの愛を受け入れることしかできなかったゼノビア。
彼らは、アルテーシアに剣を突き付けられて始めてその怒りの大きさと絶望の深さを知った。
人間の世界の半ばを侵略されて、目を覚ました神々は、力を合わせてアルテーシアに対抗する。
人々に協調を思い出させたアティブ。
再び知の光を人間に注ぐヘラ。
魔法と武器を分け与えるグルディカ。
運命の糸を手繰り、“勇者”を導くリューリュナ。
勇者に栄光を与えるヘカテリーナ。
戦い傷ついた者を癒すゼノビア。
彼らの協力の下、アルテーシアの軍勢と拮抗状態を作り出す。
だが、それでも最前線で剣を振るうアルテーシアを止められるものは居なかった。
大地を割りながら進む大蛇を、翼もって大空を支配する闇の竜を、水を腐らす双頭の水蛇を、全てを焼き尽くす黒き炎蛇を従えるアルテーシアの怒りは凄まじかった。
アティブは困り果てた。元は身から出たさび。
そこで彼は古き神々に協力を願った。
渋る者も多かったが、先の大戦では確かに新しい神々に恩がある古き神々。
彼らはアティブの味方として参戦する。
そうして再びアルテーシアは、死者の国の扉まで押し戻される。
アティブ達は、過度な干渉を人間にしないことを誓い合い、アルテーシアの力を殺ぐために、深い眠りについた。
そうして神々の時代は終わり。
歴史の時代が幕を開けた。
◇◇◆
すべての話を聞き終えたたとき、夜は明けようとしていた。
俺とレシアのほかは全員寝入っている。
ギ・ザーも、慣れているはずのリィリィもだ。
「お分かりいただけました?」
「ああ……」
と。
一つだけ確かめておかなければならないことがあった。
「お前は、癒しの女神に会ったことがあるのか?」
「いいえ? 先にも言いましたけど、神々は私達への過度の干渉を嫌います」
「それは冥府の女神にもいえることなのか?」
「もちろん。何の為に神々が眠りについたと思っていらっしゃるのです?」
なるほど。
人間の側から見た神話ということか。それとも、冥府の女神がただ奔放すぎるのか。少なくとも人間側が言うほど、神々は遠くに行ってはいない。
と言うことは……やがて俺を殺すべき“勇者”が現れるかもしれないな。
──勇気を示せ、か。
なぜかその言葉とともに、はっきりと脳裏に描かれる輝くばかりの鎧を纏ったアルテーシアの勇姿。どくんと、右腕に絡みついた赤蛇が疼いた気がした。
「……いい教訓を得た」
「でしょう?」
にこりと笑うレシアに背を向けて自身の寝所に向かう。
レシアと話すときは十分な注意を要することだけはしっかりと胸に刻んだ。
とりあえず寝るか……。