灰色狼Ⅲ
【種族】ゴブリン
【レベル】26
【階級】デューク・群れの主
【保有スキル】《群れの統率者》《反逆の意志》《威圧の咆哮》《剣技B−》《果て無き強欲》《王者の魂》《王者の心得Ⅰ》《青蛇の眼》《死線に踊る》《赤蛇の眼》《魔素操作》《狂戦士の魂》《三度の詠唱》
【加護】冥府の女神
【属性】闇、死
【従属魔】コボルト(Lv9)
【状態異常】《聖女の魅了》
ドルイドを交えた三匹一組の戦い方を群れ全体に慣らして行き、同時に俺は灰色狼に勝つ術を探すべく、ギ・ザーに魔法のイロハについて教わっていた。
レシアについては、大分懲りた。
暫く姿を見せないと思ったら、ふらふらと戻ってきたコボルトに目をつける。
乾燥させた肉を取り出すと、コボルトの前で振ってやる。
尻尾を千切れんばかりに振って興味を示す。それをレシアの牢屋めがけて投げてやれば、コボルトは真っ直ぐそれを追ってレシアの牢屋の中に突っ込んでいく。
ふっ……寝不足のお礼だ。受け取れ。
リィリィの悲鳴が聞こえてくるが、無視だ無視。
「大人げないな」
ギ・ザーに冷やかされても無視だ。
昨日一晩を思えば、これぐらいは許される筈だ。
「それよりも魔法だ」
「ふむ」
ギ・ザーに魔法の講義らしきものを受ける。
「分かっていると思うが……」
「ああ。簡単に、なるべく手短にな」
確かめて置くと頷く。改めて魔法の講義を聴く。
簡単に言うと、魔法とは神の恩恵らしい。
魔法とは、元来生物の中に備わっている魔素と呼ばれる力を消費して発揮されるものなのだそうだ。
人間はマナと呼称し、他の種族は魔素と呼ぶ。
それを消費することで、ギ・ザーなら風の刃や竜巻を発生させる。
魔素は常に体内を巡っており、空気や水に触れると拡散分解が始まるのだそうだ。
その後再び体内で魔素が蓄えられ、ある一定以上になれば再び魔法を発現させられる、と。
制限というなら、その魔素の拡散速度だろうか。
魔素自体が体外に発生した時点から拡散分解が始まる為、力を溜めて強大な魔法を練り上げるのは、並大抵のことではないらしい。
「つまり、魔素は体内で使うのが最も効率的だということか?」
俺の質問に、ギ・ザーは首を横に振る。
「いや、そうとも限らない」
何でも、魔素というのは体内で使う時もかなり扱い辛いものらしい。
例えば、筋力を強化する為に体内の魔素に働きかけるとする。その為には自身の体内を巡っていた魔素に一定の方向性を与えてやり、尚且つ自身が力を発揮させたい箇所まで魔素の量を調整せねばならないのだ。
あの僧兵が使っていたように、炎の玉を生み出して投げ付けるのとは根本的に違う。
もし加減を間違えれば、炎の玉なら拡散して終わるだけだが、体内の場合は最悪強化しようとした部位をずたずたに引き裂き、更に体内の魔素が消費されてしまうそうだ。
「だが、やってみなければ分かるまい?」
「実戦の最中でか?」
そう言われると、言葉に詰まるが。
精神の不安定な俺では、扱うのは困難か。
「では、加速する術は無いのか? お前の使っていたアクセルという魔法はどうだ」
灰色狼戦で最も警戒しなければならないのは、あの速度だ。あれさえ止めてしまえば、最悪でも相討ちには持ち込める。
「あれは体の周囲に放った魔素を任意の方向に爆発させればいい。ただし、その衝撃は慣れるまでかなり厳しいぞ」
つまり、一方向へのジェット噴射か。だが、衝撃が強いと言う割には随分と繰り返していたような……。
「俺の場合は風の神の加護があるからな。魔素が続く限り、体の前に障壁を張れる」
加護にそんな効果があるのか。
だが、俺のでは当てにならんな。
「よし、少し付き合え。やってみよう」
「今からか?」
少し驚いたギ・ザーを見返す。
「勿論。実戦で使えるかどうかは、お前の指導次第というところだろう? 頼むぞ、先生」
「……先生か、悪くない響きだ」
一人悦に入るギ・ザーを引っ張って、俺は新たな魔法の習得の為に集落を離れた。
◆◇◇
俺が魔法の特訓に入ってから9日が経った。
何とかアクセルをものにして、実戦で使えるレベルにまで引き上げることに成功する。
随分と時間がかかってしまったが、やっとだ。
「ギ・ザー。灰色狼を知っているか?」
「うむ。かなりの強敵だが」
「その番を狩る。お前なら、どの程度ゴブリンを連れて行く?」
腕を組んで考えた後、口元を歪めて答える。
「俺の手下だけで狩る、な」
普通のゴブリンでは相手にもならない。そう言いたいのだろう。
「その認識を正してやろう」
鋼鉄の大剣を肩に背負い、俺は魔法の特訓を終える。
集落に戻った俺は、レア級以上のゴブリンの声をかけて集合を命じる。
「ギ・ガー、ギ・ゴー、ギ・ザー、ギ・ギー。それぞれ10匹を率いて狩りの支度をしろ……灰色狼を狩るぞ!」
「我ガ命に、代エマシても!」
ギ・ゴーにとっては、守りきれなかった手下の弔い合戦だ。
「御意」
ギ・ガーが膝を突いて礼をする。
それぞれが10匹を選ぶと、蓄えてある食糧を携えて、集落の北西へ向かう。
ギ・ギーに先頭を走らせ、獣を先頭に立たせる。
今回、ギ・ギーが捕まえてきたのはダブルヘッドだ。双頭の駝鳥。その巨躯はゴブリン一匹を軽々と担ぎ上げ、尚その速度を落とさない。
ギ・ギーはダブルヘッドの背中に乗りながら、手下の獣使い達に指示を出していた。
ギ・ガーは最後尾を守りながら、本隊である俺を追ってくる。
ギ・ゴーとギ・ザーには本体の側面を守らせて警戒に当たらせる。
──静か過ぎるな。
これ程の数のゴブリンが移動している時点で、いつもならそこらに居る筈の鳥や兎のような小動物の類が見つかるのだが、姿どころか気配すらない。
まさかと思う。
まさか、灰色狼の一党がこの付近の獲物を狩り尽くしてしまったのだろうか?
だとしたら、奴等は労せずに俺の前に現れることになる。
──目の前にこんな美味しそうな餌がぶら下がっているんだ。来ない訳がねえよなァ?
俺の思考を読んだように、前衛を任せたギ・ギー率いる一隊が急停止。
──来たか!?
「来るぞ!」
あらかじめ示しておいた通り、俺が前に出る。後方を守るのはギ・ガーの役目だ。ある程度離れた位置を走っていた側衛のギ・ゴー、ギ・ザーの部隊も本隊と合流させる。
お誂え向きに鬱蒼とした森が途切れ、草地と呼んでも良い地帯が目の前に広がり──いた。
眷属を20匹程引き連れた灰色狼が、獲物を狙う目で俺を見ていた。
その威容に、魂が震える!
口元に笑みが浮かんでくる!
鋼鉄の大剣を振るう腕に、土を踏み締める指先に、腕に巻き付く赤蛇から臓腑を巡り肌の下を流れる血の一滴までも、俺の力を感じさせてくれる。
「グルゥゥゥオオオォォウォォオアアォ!」
狂える魂そのままに、咆哮する。
《威圧の咆哮》が発動して、眷属狼共が動けなくなる。
「ウウゥゥォオオゥゥゥオオ!」
負けじと吼え猛る灰色狼の咆哮に、俺の手下の何匹かが苦しそうに膝を突く。
「ギ・ガー、分かっているな!?」
「御意のままに!」
最後尾のギ・ガーに指揮を任せる。
「ギ・ザー、援護は任せるぞ!」
「任せろ!」
「ギ・ゴー、逸るなよ!」
「心得テ、候」
ギ・ゴーが、湾曲刀を抜き放つ。
「ギ・ギー、今度はお前の獣死なせぬぞ」
「はイ、主……!」
逸る気持ちを抑えなければならないのは、俺か!
「行くぞ!!」 俺を先頭に、ゴブリン達は一塊となって狼の群れに突き進む。
虚を突かれた狼達の行動が、一瞬だけ遅れる。
「ウォォゥウォォゥ!」
灰色狼の咆哮の元に、眷属狼達が散開していく。
だが、それこそ俺の狙いだ。
大剣を脇に抱えるように構えて固定する。
一気に行くぞ!
「我が命は砂塵の如く!」
自身の後方に集めた魔素を爆発させ、一気に推進力を得る。加速していると言うより、吹き飛ばされていると表現したくなるような速度の中、刃に魔素を集中させる。
「我は刃に為りゆく!」
未だ30歩はあろうかと言う距離をゼロにまで縮める脅威の加速。その圧力が如何に凶悪なものか。空気の壁に全身を押し付けられ、息すらままならない。
だがそれでも、やるだけの価値はあるっ!
「ウォォォウウォオ!」
灰色狼の咆哮が響いたようだが、既に耳は馬鹿になっていて何も聞こえない。視界に映るのはただ灰色の巨躯のみ。
──っ!
歯を食い縛って衝突の衝撃に耐える。
灰色狼の体を掠って若干威力を弱めたものの、そのまま地面を転がる。
勢いを殺してすぐさま立ち上がる。
──どこだ!?
「ガアァォオォアア!」
──真横に唸り声!?
《剣技B−》の補正で、勘に任せて剣を振り抜けば、大木を殴ったかのような手応え。直後に来る圧倒的な圧力。押し込まれ、視線を向ければ牙を剥いた灰色狼の巨体!
押し込んでくる狼の巨体を、全力を持って押し返す。
間近で見る牙の鋭さに、爪の巨大さに、背中を寒いものが走る。
いや、違う。
俺は求めていた。求めていた筈だっ!!
強敵を! あの屈辱を雪ぐ機会を!
《青蛇の眼》を発動し、相手の弱点を探る。
目、牙……心臓が背中の近くにあるのか!?
《狂戦士の魂》を発動!
初めて自身の意志で解き放つ、凶暴なる魂の躍動。
「グルウゥオアァォオオォォォ!」
衝動を抑え込め! 力だけを引き出すんだ!!
《反逆の意志》を《狂戦士の魂》と同時に発動!!
大剣を持つ腕に、体を支える足に、力が漲る。
体を巡る魔素が、血液が、沸騰するかのような感覚。
擦れ合う大剣と灰色狼の牙が火花を立てる。
地面にめり込む足に更に力を込める。灰色狼の圧し掛かる圧力に正面から勝負を挑む!
「グルウゥォアア!」
全身の筋肉が泡立つ。体内を巡る血と魔素が燃え滾る炎のように熱い。
「我は刃に為りゆく!!」
燃え立つ刃そのままに、灰色狼の牙を爪を押し込む。
そのまま力任せに振り切った。
──くっ!?
最後の最後で、逃した!
俺の大剣が振り切られる直前、後ろに下がった反射神経は流石に野生の狼と言ったところか。
見れば、灰色狼は右足と左の首筋から血を流している。
アクセルとエンチャントで付けた傷に違いなかった。
間合いは至近。
「ウォォウウォオォ!」
遠吠えを上げると、眷属狼達が引き始める。
その最後尾を守ろうと言うのか、徐々に俺との距離を取ろうと後ろに下がる。
「逃がさん!」
静かに決意を込め、敢えて言葉に出す。
「追え!」
手下のゴブリン達に命じると、眷属狼達の追撃に掛からせる。その追撃を遮る様なことがあれば、容赦なくその隙を突かせてもらう。
灰色狼が僅かに後ろに下がる度、その分だけ俺は間合いを詰める。
恐らく、あの足ではもう先日の加速は使えない。
なら、相手の取り得る手段は──。
「ウォォォウゥウ!」
灰色狼の姿が霞んで消えるっ!
──何!?
「ぐ、ハァ」
シールドが間に合わず、吹き飛ばされる。
だがっ!
やはり威力が落ちている。勝利は目の前だ!
吹き飛ばされて転がされた中を一気に起き上がる。
「くっ!」
だが、その時には既に灰色狼は俺に背を向け、逃走していた。
「逃がさんと言ったぞ!」
エンチャントを解除すると、俺は全力で灰色狼を追い始めた。
◇◆◆
俺は走りながら、戦闘の熱狂で忘れていたあることを思い出して冷や汗をかいていた。
何故、あの灰色狼は一匹で戦っているのか?
前は確かに番いであった筈だ。
──ならば、もう一匹は一体どこへ消えた!?
最悪の予想が頭を過る。
眷属狼を退かせたのは態とで、各個に灰色狼の餌食とする為ではないのか!?
だとすれば、俺は二度も獣に嵌められた大間抜けということになるっ!
──くそっ!
兎に角、一刻も早く目の前の灰色狼を倒して手下を集めなければ──。
だが、焦る程に足は動いてくれず。灰色狼の脚力は手負いであるにも関わらず俺を上回っていた。
血の跡を辿り、臭いを追跡して、草原地帯から鬱蒼とした森の中へ入っていく。
──くそ! これじゃあ、呼び集めるのも難しい。
《威圧の咆哮》を放っても、走っている俺からでは集合場所の指定が難しい。それにもし、これが罠でなかったとしたら、灰色狼の一団を壊滅させる絶好の機会なのだ。
じりじりと焦りが積もる中、俺は鬱蒼とした森を抜けようとして──。
「ガルルゥゥ!」
頭上から襲い掛かってきた眷属狼を切り捨てる。
「ガルウゥゥ!」
下から、左右から、殆ど同時に襲い掛かってくる脅威の連携。
「我が身は不可侵にて!」
咄嗟にシールドを張り、大剣を振り回して距離を取る。
噛み付いてきた狼は蹴り飛ばし、踏み潰し、大剣の錆にする。
──時間を稼いでいるのかっ!?
何の為に、だ?
或いは、灰色狼の片割れがここに居ない為、その帰りを待っている……?
眷属の狼達では俺には勝てない。
《威圧の咆哮》を発動させて狼達を萎縮させると、その間に全力で鬱蒼とした森を抜ける。
そこには、洞穴とその前に身を横たえる灰色狼。
──死んではいないな。
血を流し過ぎた為か、灰色狼は震える足で立ち上がる。
「ウゥゥオォゥゥウ!」
油断はしない。
じりじりと間合いを計る。
その時──。
ウゥォオォオォォォン!
洞窟の中から、吠え声が聞こえた。
一瞬だけ俺から視線を逸らした灰色狼は、洞窟の暗闇を見つめた。その瞳の色は何かを耐え忍ぶかのように細められ、そうして戻ってきた瞳には明確な怒りの色があった。
今までとは比べ物にならない程に凶悪に毛を逆立て、吠え立てる。
「GaRuAaaアァウウゥゥ!」
防御も何もない。文字通り体を弾丸に見立てたような体当たり。
くっ──。
洞窟の中から声が聞こえた瞬間の豹変。
何かがあったことは間違いない。
「ガルゥゥ!」
直後、後ろから眷属狼が襲い掛かってくる。
舌打ちしたい気持ちを堪えて、大剣を後ろに振るおうとした瞬間。
「GuURuuusuAAアァ!」
怒り狂ったとしか思えない灰色狼の体当たりが、俺を吹き飛ばす。
眷属すら巻き込んで吹き飛ばす、その一撃。
正気を失っているのか!?
見れば、止め処なく傷口から赤い血が噴出している。だが、それをものともせず、灰色狼は俺を仕留めようと距離を詰める。
──上等……上等だ、獣がっ!!
「我は身は不可侵にて!」
「GRRuuuAAaAA!!」
剣を構えた俺の首筋に噛み付いてくる牙を、敢えて受ける。
その状態で──。
「我は刃に為りゆく!」
俺はシールドと同時にエンチャントを発生させるような器用な真似は出来ない。
だから必然的にシールドは消え失せ、灰色狼の牙が俺の体に食い込む。
飛び散る赤い血。
それを代償にして、《三度の詠唱》を発生。
──負けられるか!
俺の魔素を殆ど吸い尽くす勢いで、大剣に炎が収束していく。
「これでも、食らえ!」
その大剣を灰色狼の腹に向かって突き刺した。硬い灰色狼の毛並みを易々と貫き、臓腑を抉る一撃。
「GA,GRRuu!」
だが、脅威の生命力を誇る灰色狼は俺の首筋から牙を抜こうとはしない。
あろうことか、更にの体に牙を食い込ませてくる。
同時に、一気に半分を切る俺の体力。その条件の下で更にスキルを発動させる。
《死線に踊る》の第一段階、発動!
──筋力、機敏性20%UP!
「グ、ルルゥゥゥウオオォオアァアアァア!」
突き刺した刃を、深く灰色狼の体を刺し貫く。
灰色狼の口から逆流してきた真っ赤な血液が、肩口から噴き出す俺の血と交じり合い、もうどちらの血が流れているのか分からない。
だが、それでも灰色狼は牙を離さない。
視線がぶつかり、呪詛と怨嗟が絡み合う。
「何どでもなアアァァァ!」
《死線に踊る》第二段階が発動!
──筋力、機敏性30%UP!
更に深く刺し貫く灰色狼の背中から、俺の大剣の切っ先が見えた。
「GuRuaAaaAAAA!」
最後の力を振り絞って吼える灰色狼。
俺の肩を食い破ろうと、血を吐きながら、深く、深く──。
狂気と殺意がぶつかり合う。
出血は大量で、目の前は真紅に染まる。
──だが、だがなァアァ!
「オオォォアアァァアアァア!」
勝つ。
勝つんだっ!!
《死線に踊る》第三段階が発動し、同時に《狂戦士の魂》が重複発動する。
──筋力、機敏性40%UP! そして脳内を、体を、噴き出る血潮を燃やすような激情が、体の奥底から噴き上がる。
無理な体勢から力を篭めた為、筋肉が破れ、血が噴き出る。未だ深く牙を食い込ませた灰色狼は、俺から牙を抜くつもりはないらしい。
──いいじゃねェか。こうなれば、とことん付き合え!
引き剥がそうとした灰色狼の牙が、食い込んだ肩口から血を噴き出させる。噛み付かれたまま相手を持ち上げれば、傷口が開くのは道理だ。それでも力を抜くつもりは毛頭なかった。 細切れになりそうな痛みと意識の中で、必死で精神侵略から我を拾い集める。
灰色狼を串刺しにしたまま大剣を頭上に振り上げる。異常な筋肉の盛り上がり。灰色狼の口から溢れた血が俺の全身を濡らす。
「俺はァアアァァアア!」
そのまま大剣を横に薙ぎ払い。
「オオオア゛ア゛ァあぁあぁあ゛ぁ゛!!」
──灰色狼の体を両断した。
灰色狼は、俺に牙を突き立てたまま息絶えていた。
全てが静寂の中にあるように、音が遠い。
半死半生の俺の周りには、濃い血の池だけが広がっていた。
既に眷属狼共は周囲には居ない。
「主っ!」 ギ・ガーの息を呑む声が聞こえた。
……無事だったようだな。
大剣を杖代わりに、その場に膝を突く。
手下の前で無様な姿を見せる訳にはいかない。そう思っていても、瞼が重い。血を流し過ぎた。
「ギ・ギー、直ぐにレシア殿を連れて来い!」
ギ・ガーの声が聞こえる。
「ギ・ガー……」
「主っ!?」
「手下共の安全を確認しろ。俺は、少し、寝る、ぞ……」
突き立てた大剣に凭れるようにして、俺は意識を手放した。
◆◇◇◆◆◇◇◆
レベルが上昇。
26⇒60
【スキル】《狂戦士の魂》を使いこなしたことにより、隠された能力が解放。
狂戦士の魂による精神侵略の発生。
筋力・敏捷性・魔素の総量が上昇(中)
狂戦士の魂以外からの精神侵略の妨害。
一度敗れた敵に対して、戦意高揚(中)
ダメージ軽減(小)
◆◇◇◆◆◇◇◆
2012/3/11
詠唱を一部変更。




