奥の手
「今日こそだ......」
ギィィっ......と関節が鳴る。
「はっけよいーーー」
一瞬の静寂。
観客の誰もが息を止める。
―――行事の手が上がる。
「のこったぁぁぁ!!」
爆発。
それは比喩ではない。
メカ大関の背中のロケットが噴射し、土俵を滑るように突進する。
「ロケット立ち合いぃぃぃぃ!」
解説アナウンサーが絶叫する。
ドゴォォォォン!!
激突。
だが―――
「甘ぇんだよ!!!」
山嵐、受け止める。
土俵がめり込み、足が沈む。だが、それでも倒れない。
「機械に......相撲がわかるかっ!!」
山嵐の張り手が一閃。
メカ大関の頭部にひびが入る。
(くッ.!....ここまでやっても......人間をやめても山嵐には......)
あきらめかけたその時
観客席から声がかかる。
「特訓の成果をだせっ、カブト山!」
それは地獄のリハビリに最後まで付き添い、
かつてヨロイ山だった男に機械の体を与えた男だった。
―――カブト山の目に闘志が戻る。
プシュウウゥ......関節から蒸気を上げるカブト山。
カブト山の右手がゆっくりと持ち上がる。
たじろぐ山嵐に右手をかざし、
叫んだ。
「ロケッッットォォォォォ、張り手ぇぇぇぇぇっぇぇぇぇ!!」
ーー次の瞬間。
ボンッ!!
爆ぜるような音と同時に、肘から先が射出された。
圧縮された空気が弾け、白い尾を引く。
張り手は一直線に、空間そのものを切り裂くように進み、
山嵐の顎を寸分たがわず打ち抜いた。
一瞬、意識が飛ぶ横綱・山嵐。
その隙を、メカ大関は見逃さない。
「今だっ!!!」
背中のロケットを噴出し、カブト山が迫りくる。
積年の思いを乗せ、とどめの左手の張り手を繰りだそうとした。
その瞬間
「お手つき~」
固まる観客。
「ただいまの決まりて、おてつき~」
―――土俵に右手が転がっていた。




