機械のカラダ
土俵が、唸っていた。
否――唸っているのは土俵ではない。その中心に立つ、鋼鉄の巨体。
「東ーーー! カブト山ぁぁぁぁ!!」
場内が揺れる。
身長1m90㎝、全身が鉛色。胸には脈動する赤いランプ。
背中にはロケット噴射腔。
誰が読んだか、メカ大関。
大関 カブト山 機太郎である
まさに、力士と科学の悪魔合体。
対するは‐――
「西ーーー! 山嵐ぃぃぃぃ!!」
ズンっ、地面が沈む音がする。
対戦相手は生身。だがそれはもはや生身とは思えない肉体。
鬼を宿したといわれる男―――
横綱・山嵐 唯我独尊 だ
「関係ねぇよ」
横綱がつぶやく。
「機械だろうが何だろうが、全員つぶしてやるよ」
人を見下し、鼻で笑う横綱山嵐。
メカ大関は答えない。
ただ、鼻で笑う山嵐をみると、あの頃の記憶、ヨロイ山という一人の人間だった時の記憶。
その記憶の扉が静かに開いていく。
最初は同じ相撲部屋の憧れの先輩だった。
一番下っ端のよろい山は様々な雑用をこなしつつ、日々真面目に稽古に励んでいた。
その当時から山嵐は強く、
その強さゆえ誰の言うことも聞かない横暴な態度をとっていた。
そんなある日、ヨロイ山の番付がかかった大事な日
階段を降りようとするよろい山は何者かに突き飛ばされた。
階段を転げ落ちるヨロイ山。
足は折れ、朦朧とする意識の中、はっきりと見た。
階段の最上段で、
鼻で笑い、ヨロイ山を見下す山嵐を......
原因はわからない。
真面目さが疎まれたのか、
それとも、番付が上がっていき喜んでいた自分が煩わしくなったのか、
あるいはただの暇つぶしだったのか......。
病院に運ばれ、医師からもう現役復帰はできないといわれた時から
全てがどうでもよくなっていた。
だが、そんな時、ある男に声をかけられたのだ。
「―――力が、欲しいか」
懐かしい記憶。
数々の手術、地獄のリハビリを乗り越え、
そして名前まで変えてとうとうここまで戻ってきた。
機械の体になってまで―――




