表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年は魔族の少女と旅をする  作者: ヨシ
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/250

70.我が君よ

森の奥、霧が濃い場所に小屋があった。

 小さいが、造りはそれなりにしっかりとした木造の建物だ。


 メガラは、その小屋で目を覚ました。

 目を開けた時、見慣れぬ天井が目に入った。

 周囲を見回すが、やはりこの場所に心当たりがない。


 状況が飲み込めないが、まずはできることをする。

 ベッドから起き上がり、体の状態を確認。

 脚や腕を動かしてみる。

 問題なく動く。手や足に打撲痕のようなものはあるが、痛みはそれほどない。


「さて……」


 体の状態を確認し終え、自分の置かれた状況を考えてみる。

 船が嵐に破壊され、海に投げ出されたところまでは覚えている。

 その後の記憶がない。

 考えられるのは二つ。

 船の乗組員に助けられたか、あるいはどこかに漂着したか。


 いや、三つ目がある。

 実はこれが夢の出来事である可能性だ。


 そう思い、自分のほっぺたをつねった。


「うん、痛いな」


 間違いなく現実だ。

 現実であることを認識し、不安が湧き上がる。


「アルゴ……」


 アルゴはどこだ?

 アルゴを探さなければ。


 メガラは扉を開けて外に出た。


 目に飛び込んできたものは深い霧。

 森林。湿った地面。

 ここがどこなのか皆目見当もつかない。


 見知らぬ場所で下手に動くのは危険だ。

 小屋の主の帰りを待った方が安全か。


 アルゴのことが気掛かりだが、冷静に思考しなければならない。

 選択を誤れば待っているのは死だ。


 その時、前方より足音が聞こえた。

 メガラは、咄嗟に姿勢を低くし身構えた。


 湿った土を踏みながら、誰かが近付いてくる。

 だんだんと、霧の中に人影が浮かび上がる。


 その人物の姿を視認した時、メガラは目を見開いた。


「お前は……」


 その人物はメガラの姿を確認し、涙を流した。

 涙を流しながら、メガラに対し跪く。


「我が君……麗しの盟主様……お久しゅうございます」


「スキュロス……スキュロス・プロバリンドなのか……?」


「左様でございます。我が君よ、ご復活、心より祝福申し上げます」



 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



「このような物しか出せず、申し訳ありません」


 そう言って、スキュロスは机の上に木製の杯を置いた。

 杯には、甘い匂いのする赤茶色の液体が入っていた。


「気にするな」


 メガラはそう言って、杯を口に運んだ。

 液体を少し口に入れ、スキュロスに話しかける。


「スキュロスよ、訊きたいことが山ほどあるが……そうだな、まず初めに訊こう。茶髪の少年を見なかったか? 名をアルゴというのだが」


「いいえ、我が君。私めは、砂浜で御身のお姿しか確認しておりません」


「そうか……」


 スキュロスの答えを聞いて気持ちが沈むが、それでも主として気丈に振舞わなければならない。


「余をここまで運んだお前の働き、大義であった」


「ははあッ! 有難きお言葉!」


「では次の質問だ」


 そう言ってメガラは、一呼吸して続ける。


「サラミスは……死んだのか?」


「……はい。人族との戦の折りに……」


「アトロンもか?」


「……はい」


「本当に……我らは負けたのだな」


「はい」


「スキュロス、直ぐに発つ。余と共に来い」


「我が君よ、どこに行くというのですか?」


「まずはアルゴを探す。アルゴを見つけ次第、イオニア連邦に向かう」


「なりません。それは……なりません」


「何故だ?」


「さきほど御身が仰ったように、我らは負けたのです。我らが軍の主力は全滅しました。もう、我らに戦う力は残っておりません」


「だから諦めろと?」


「恐れながらこのスキュロス、進言致します。再び人族どもに戦を仕掛けるならば、確実に負けます。私めには見えています。我が君の燃えるような魂の色が。その炎の熱が冷めることがないことは理解しています。ですが聞いてください。我が君は秘術で復活なされた。それはまさに奇跡。誰も信じていなかった奇跡を御身は成し遂げられた。しかし、もう二度目はないでしょう。その奇跡を、せっかく甦った御身の命を、なによりも大切になさってください」


「スキュロスよ、余はお前の忠言に感謝せねばならんのだろうな。だがな、お前が言った通りだ。余の炎は、決して消えはしない。ゆえに、余は戦い続ける。命ある限りな」


「我が君よ、御身はもう十分に戦いました。ですからどうか、どうか……御身の生を謳歌してくだされ」


「その気持ちだけもらっておこう。残念だが、共に来る気がないというのなら仕方がない。……余は行く」


 メガラはそう言って立ち上がった。

 立ち上がり、歩き出そうとした。


 だが、メガラの体が揺れた。

 目眩がし、ベッドに尻を付けてしまった。


「いけません、我が君。まだ疲れが残っているのでしょう。今は快復することだけをお考えください」


「その必要は―――」


 頭がひどく痛む。

 眠気が強い。

 確かに、今は休むべきか。

 この状態では危険に対処できない。外に出たところですぐに死んでしまうだろう。


 メガラはベッドに倒れ込んだ。

 そのまま、気絶するように眠ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ