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【完結】追放寸前の俺、魔族に召喚されて最強の魔王に覚醒しました~ポンコツAIの王女様がなぜか俺に懐いて離れない~  作者: ゆき
第一章

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83 魔王城へ珍客

 魔王城に戻ってくると、サリーとシエルたちはまだ戻っていなかった。


 シエルは途中、無の牢獄ゼロ・プリズンを保持したまま、亡き魔族の場所に寄っていると、他の魔族から聞いていた。

 

 サリーは楽しんでいるんだろうな。

 なんとなく、想像がつく。


「ギルバートとグレイも疲れちゃってたね」

「あぁ、結構無理させたからな、しばらくゆっくり休んでもらおう」

 アイリスと、魔王城の廊下を歩いていた。

 ランプの光が揺らいでる。


「魔王城が久しぶりな感じがする・・・」 

「あまり時間は経っていないけどな。久しぶりにマキアの料理を食べるのも楽しみだ」


「うん。そうだ、女魔族の泉で料理も教わったからマキアにも伝えなきゃ。こっちに無いハーブも摘んできたし、調味料の配合も覚えたから、きっともっと美味しくなる」

 アイリスが無邪気に言う。


 窓の外を見つめる。

 サリーとシエルがあまりに遅くなるようなら、探しに行くが・・・。

 あいつらの実力があれば、万が一ということはないだろうな。


 特にシエルは、おそらく現時点で上位魔族最強の魔族だ。

 無の牢獄ゼロ・プリズンを保持したままでも、十分戦えるだろう。



 キィッ・・・


 部屋のドアを開ける。


「やぁ、魔王ヴィル」

「・・・・・・」


 バタンッ


 ドアを閉める。


「魔王ヴィル様?」

 アイリスと顔を合わせる。


「今、なんかエヴァンみたいなの見えなかったか?」

「見えた気がするけど・・・魔王ヴィル様、どうしたの? アリエル王国って今、敵じゃないの?」

「いや・・・色々あって、複雑なんだけど・・・」


「もしかして、彼も侵入者? 私を連れ戻しに来た可能性が・・・」

「違う違う」

「でも、今までの行動パターンにより、確率としては高いという計算」

 アイリスが身構えていた。


 あいつ、何でここにいるんだよ。

 つか、なんで勝手に部屋に入ってきてるんだよ。


「アイリスは・・・そうだ。マキアのところに行ってこい。女魔族の泉で聞いた料理を、マキアとセラに伝えてきてくれ」

「・・・うん・・・」


「ちょっと、あいつと話があるから。今は敵じゃない。安心してくれ」

「わかった」

 アイリスがこくんと頷いて、足早にキッチンのほうへ向かっていった。



 キィッ・・・


 ドアが勝手に開いた。


「ひどいじゃん、なんの挨拶も無しに閉めるなんて。すっげー待ちくたびれたんだけど」


「とりあえず、出てくるなって。上位魔族もいるんだから」

「ふうん。せっかく来たのに、無愛想だね」

 エヴァンを部屋に押し込んで、ドアに鍵をかける。

 

「それにしても快適だ。魔王城ってもっと汚いのかと思った。転生したからには、一度は来てみたかったんだよね」

「王国の人間が、堂々と入ってくるなよ。そもそも、どうやって入ってきたんだよ」


「フルステータスで転生した俺に、不可能はないんだ。敵同士だけど、個人では味方同士じゃん、親睦を深めようよ」

「いきなり来るなよ」

「俺に何もなしにいなくなるからだよ。あの塔に行っても、もぬけの殻だし、人間たちはざわついてるし。っと・・・」

 ソファーにダイブしていた。


「それに、安心して、上位魔族になんか手を出さないよ。彼らに活躍してもらわなきゃ、王国での俺の地位を確立できないからね」

「・・・・お前、相当暇だな」


「何か起これば瞬時に移動できるし、別に今は夜だし何も問題ない。俺にとって、王国はホワイト企業だ」

「また、よくわからない言葉を・・・」

 腕を組んで、近づいていく。


「で、あのあと十戒軍に・・・・」


 トントン


「魔王ヴィル様、入ってもよろしいでしょうか?」

「えっ・・・と・・・」

 ププの声だ。

 エヴァンのほうを見てため息を付く。


「しょうがないな。ドラゴンにでも化けておくよ」

「解くなよ」


「わかってるわかってる。俺たち利害関係一致してるんだから、信頼してよ」

「・・・・・」

 パチンと指を鳴らすと、エヴァンが1メートルくらいの小さなドラゴンになった。

 爪を見たり尻尾を振ったりしている。


 本当に、何でもできるな。

 憎たらしい目つきしているドラゴンだ。



「入っていいぞ」

「失礼します。魔王ヴィル様、お帰りなさいませ」

 ププがぐっとくっついてきた。


「・・・・・・・・」

「ふはぁ、魔王ヴィル様の匂い。いい匂いです」

「ププ、魔王ヴィル様にくっつきすぎ」

「ウルこそ」

「だって魔王ヴィル様の匂い、久しぶりなんだもん」

 首のあたりがくすぐったい。


「魔王ヴィル様? そこのドラゴンは?」

「あぁ、拾って来たんだよ」

 火を噴きそうな勢いで、俺のほうを睨んでいた。


「その辺にいたから・・・・な」


「随分、怖い顔したドラゴンですね」

「ドラゴンなのになんというか、目つきが悪いです。初めて見るドラゴンです」

 ププとウルが交互にエヴァンを見る。


 実は一度面識あるんだよな。

 ププウルが、水属性が弱点だと見抜いたのだって、おそらくこいつだし。


「でも、可愛いです。ん、なんだか人間臭い気がします。一緒に回復の湯に入りましょうか?」


「!?」

 エヴァン(ドラゴン)がぴんと耳を立てていた。


「それがいいです。一緒に入りましょ。魔王ヴィル様いいですか?」

「あぁ、いいよ」

「はい!!」

 エヴァン(ドラゴン)が硬直している。

 こっちを見て、必死に訴えかけてきているのはわかったが、全面的に無視した。


 ププウルはドラゴン好きだ。

 ギルバートとグレイもよく気にかけてるし、いい具合に扱ってくれるだろう。


「よいしょよいしょ。結構軽いですね」

「固まってる。可愛いです。まだドラゴンの赤ちゃんですね」

「・・・・・」

 赤ちゃんって言葉に、思わず噴き出しそうになった。

 平静を装って、軽く咳払いをする。


「よろしくな」

「任せてください」

 エヴァン(ドラゴン)にはいいように頑張ってもらうしかないな。

 人形みたいに2人に抱えられて、回復の湯のほうへ向かっていった。




「ふぅ・・・いいお湯でした」

「早かったな」

「はい」

 本を読んでいると、3人が帰ってきた。

 ププが汗を拭いながら、エヴァン(ドラゴン)の頭を撫でる。


「魔王ヴィル様、意外とこのドラゴンとっても大人しいんです」

「水をかけている間、ずっと暴れずにいてくれたのです」


「いい子いい子です。可愛いですね。立派なドラゴンになるのですよ」

 ププウルがにこにこしながら、エヴァン(ドラゴン)を触っていた。

 置物にしかみえないな。こいつ。


「あと、リョクという子も先に入ってまして」

「あぁ、戻ったのか。リョクたちも」


「はい・・・失礼します」

 リョクがププウルの後に続いて、部屋に入ってくる。

 汚れがすっかり洗い流されて、肌は白く、緑の髪が透き通っていた。


「リョクはドラゴン洗うの慣れてるみたいで。ね」

「はい!」

 リョクが少し垂れた大きな目を、きりっとさせる。


「回復役していると、汚れの多いドラゴンもいたので洗うのは基本的に得意です。僕がいたのは特に弱い魔族がたくさんいる場所だったので」

「・・・・・・」

「でも、この子、僕にあまり懐かなくて、すぐ背を向けちゃうんです。あまりドラゴンに嫌われることはなかったのですが、僕が弱いからでしょうか?」

 緑の髪をくるんとさせながら、自信なさげに言う。


「いや、こいつ、魔王城に来たばかりだったから回復の湯自体が慣れなかったんだろう」

「そうだといいのですが・・・」

「・・・・・・」

 エヴァン(ドラゴン)のほうを見ると、視線を逸らされた。


 赤くなってる・・・のか?


「あと、サリー様に服を用意してもらいまして、防御力は強化されたかと思います」

「そうか。サリーはどうした?」

「魔王城に着いたとたん、疲れて眠ってしまいました。ミゲルも・・・サリー様、あの後、人間たちに攻め込まれていた魔族の村を2つ救ったので・・・」

 リョクが目を伏せがちに言う。


「すごいですね、サリー様は。僕は同じ魔族なのに何もできませんでした。申し訳ない限りです・・・・」

「そんなことはない。サリーは上位魔族としての役目を果たした。リョクにも役目はあるだろう?」

「・・・はい」

 エヴァン(ドラゴン)が何か言いたげにしていた。


「サリーが目覚めたら話そう。リョクも休んでくれ。ププ」

「かしこまりました!」

 ププが背筋を伸ばす。


「リョクを魔王城の空き室へ案内してもらえるか?」

「もちろんです。綺麗にしてある部屋はありますのでご安心ください」

 小さい翼をパタパタさせながら言った。


「ありがとうございます」

「私たちの部屋から近いよ。落ち着いたら、魔王城案内するね」

「は、はい」

 リョクが恐縮していた。


「では、失礼します」


 バタン・・・


 ドアが完全に閉まって気配が無くなると、エヴァンが変化を解いた。



「いやいやいや、リョクって・・・マジでマジでマジだよ」

「は?」

 興奮気味に突っかかってくる。


「なんで異世界転生した俺よりも、ハーレム築いてるんだよ! 毎日、あんな可愛い子たちと風呂なんか入ってんの? ありえないんだけど。俺と変われよ!」

「落ち着けって。何に怒ってるんだよ」

「すべてだ!」

 いきなりドアを指さして叫ぶ。


 多分、今まで会った中で、一番動揺していた。

 戦闘のときなんて、全く表情変えないくせに。


「ハーレムは許せても風呂が一緒はないだろ。風呂は裸じゃん!」

「誤解だって。たまたま入る時間が被ることはあるだけだ」

「はぁ!? たまたまって何? どんな定義があんの?」


「ほぼ無いって。お前が入ったのだって偶然だろ。同じことだ」


「お・・・俺が・・・だ、だって・・・」

 一歩ずつ下がって、窓の外を見つめる。


「ねぇ・・・あの・・・リョクって子魔族なの?」

「まぁな。お前が行けって指示した塔があっただろ?」


「うん・・・」

「そこで十戒軍に捕まっていた。回復魔法しか使えない魔族はいないから珍しいって目をつけられたと聞いてる」


「そんな・・・リョク・・・」

 エヴァンの動揺が伝わってきた。


「リョクについて、何か知ってるのか?」

「俺の推しに似て・・・いや、めちゃくちゃ可愛い女の子で、優しくて・・・・・・信じられなくてさ。俺、再度転生して、彼女の使い魔になろうと思う」


「お前、もう転生してるんだろ?」


「・・・推し、なわけないけど・・・さ。信じられない・・・まさか・・・そんなわけないんだけど。どうして・・・ドッペルゲンガーなのか?」

「推し?」

「違う。アレはどう見ても推しだ・・・俺が間違えるはずない。推しと風呂入ったの? 俺・・・・いや、ないないないない。死ぬじゃん、今日、俺死ぬフラグじゃん」

「・・・・・・・・」

 エヴァンとの会話が全くかみ合っていない。

 別人と話してるみたいだ。


「クソ、なんで俺魔族に転生しなかったんだよ」

「望んだからって自分で言ってただろうが・・・そもそも、お前、死ぬ前何歳だったんだよ」


「死ぬ前とかいいんだ。俺はリョクちゃんと、今を生きていくから」

「は・・・・・?」 


「はぁ・・・・リョクちゃんが目の前にいる・・・幸せすぎる」

 駄目だ。


 エヴァンが魔族の雰囲気にあてられてしまった。


「そうゆうわけで、俺、明日も魔族でいることにしたから」

「は?」

 さりげなく、すっとドラゴン化した。


「何言ってるんだ? 魔族って・・・お前・・・」

「・・・・・・」

 何度もこくんこくんと頷いていた。

 プライドを完全に失ってるようだな。 





 トントン


「魔王ヴィル様、もう入って大丈夫?」

「あぁ」

「失礼します、と」

 アイリスが部屋に入ってきて、おそるおそる周りを見渡す。


「あの・・・王国騎士団長との・・・お話終わった? 私、帰らなくても大丈夫だよね・・・?」

「あぁ、あいつが来たのは別の用事だ。お前とは全然関係ないから」


「ふぅ・・・よかった。あ! そうそう、マキアがね、明日の夕食のレシピに入れてくれるって。私も手伝ってくるよ。配合を変えたら、一気に違う味になったから、マキアとセラも驚いてた」

「そうか、楽しみにしてるよ」


「・・・・・・・」

 エヴァン(ドラゴン)がソファーでそわそわしている。

 鬱陶しいな。


「あれ? 魔王ヴィル様、そこにいるのは、ドラゴン?」 

「あぁ、もう少ししたら、リョクの部屋に連れていく」


「リョクって・・・あの天使みたいな魔族の女の子だよね? この子、彼女のドラゴンなの?」

 アイリスが不思議そうにエヴァン(ドラゴン)のほうを見ていた。


「まぁ、違うんだけど。一応、リョクのお気に入りらしい・・・な」

「そうなの・・・・ギルバートとグレイと違う魔力。匂いも全然違う。外の匂いがあまりしない? ドラゴンにも色々いるっで記憶しておかないと」

「・・・・・・・」


 人間だからな。

 上位魔族でさえ気づかないほど、ドラゴンになりきっていた。


「あ・・・・・・」

 エヴァン(ドラゴン)が尻尾をぺたんと下げて、短い足でアイリスの横を通過していった。

 鏡の前でドラゴンなりの身だしなみを整えている。


「魔王ヴィル様、あの子、随分人間っぽい動きをするね」

「もしかしたら、人間に調教されてたのかもな」

「なるほど・・・」

 適当に誤魔化したが、エヴァンが無視して顔の鱗を磨いていた。


 本当、あいつは一体何やってるんだか。

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