負けない
「失礼します!ジン小隊長をお連れしました!」
「入れ」
ジゲンがそう言うと兵とジンが青龍騎士団本部のテントに入る。
「よし、お前は下がれ」
「はっ!」
ジゲンはジンを呼ばせた兵を下げる。
兵が下がったことを確認してジゲンが喋り始める。
「なんだ、えらくやられたな」
「それが久々にあった息子に言うことかよ?親父殿」
「ここではその呼び方はしないんじゃなかったのか?」
「ああ、そんなことも言ってたかもね」
「まぁよいか、で?どうだった戦場ってやつは?てめーの覚悟ってやつは?」
ジゲンの問いかけにジンは少し黙るって自分の手を見て口を開いた。
「みんな同じ目をしてた」
「ほう」
「死にたくねーって必死な目だ。全員が多かれ少なかれ死ってやつを意識してたと思う。それでも自分の背負った何かのために全部飲み込んで剣を振ってた」
「そうか」
「だけど一人だけ違った。あいつは自分が死のうが生きようがどうでもいいって目をしてた」
「報告であったザンバ・ファムか」
「ああ、あいつはあん時、今が全力で楽しいって目をしてやがった」
「そうか、それでお前はそんな奴を見てどう思った」
「......戦場にいろんなもん抱えてくるのはいい、だがあいつのあれは死んだ奴が救われねぇ、あんな奴にだけは殺されてやらねぇ、そう思った」
「そうか」
ジゲンはジンの話を静かに相槌を打つだけだった。
「俺はもっと強くなる、あんなイかれた奴にも、下の奴らを駒としか思ってねぇ上の連中にも俺は負けねぇ。俺が守りたいもん全部守れるくらい強くなる。覚悟は決まった」
「そうか、わかった。お前は一度タイランまで引け。傷を治して来い。この戦争まだまだ始まったばかりだ」
ジゲンはそう言うとジンに下がるように言う。
ジンは踵を返して部屋を出る直後首だけ振り返える。
「親父殿、俺は強くなるぞ」
そう言うとジンは次こそ部屋を出るのであった。
ジンが部屋から出た後、ジゲンの後方の隅から姿を表したデイダラが笑いながら言う。
「全く、あれで十二歳とは恐れ入るよ」
「かっかっか、わしの息子だからな、だがどうして......成長とは早いな」
ジゲンはジンが初めて自分の家に引き取らた日を思い出す。
(全く、わしが決めちまったこととは言えまだまだ可愛いままでいてくれてもよかったんだがな)
「それにしてもジンのやつ白虎のクソどものことまで言いよったわ、あれはわし以上にバカだな」
がっはっはと笑うジゲンにデイダラは賢いの間違いでしょう?と告げる。
「あいつはまだ自分も手のひらがどれだけのもんを救えるのか知らんのさ、人間一人が手で救える数なんてたかが知れてる」
ジゲンがそう言うとデイダラは黙る。
正論だからだ。ジンが言っているのはどこにでもある差別だ。貴族は偉く、平民を下に見るそんなものは最早常識であり事実でもあった。
それをジンは分かっていて負けないと言ったのだ。それはつまり救うと言うことだ。だが一人の手で救える数には間違いなく限りがある。
「だが、そんな理想を馬鹿みたいに追いかけれるのは」
ジゲンがそう言って顎に手を当てる。
「わしの自慢の息子くらいだろう」
ブックマークしていただけたら感謝の極み




