生還
ジンはザンバの気配が完全に消えてからその場に腰を落とす。
最早ジンに再度、刀を振るう余力は残っておらず肩から止めどなく溢れる血と初めての自分より強い敵との死闘による疲労から刀を仕舞う動作すら出来ずにその場に座る。
「ふざけた奴だった」
ぽつりとそう呟き、近づく足音を聞きながらジンはその場で気を失うのだった。
「そうか」
場所は変わり、青龍騎士団本部でジゲンはとある報告に頷くと伝令を返す。
「団長」
伝令が去ったのを確認してガイルがジゲンに声をかける。
「心配なぞしとらんさ」
ジゲンに入った報告は白虎騎士団の前線に送られたジンの部隊がジン含め全て生存して帰還したことだった。
それも生き残った兵をジンが先導して、さらには敵の一将であるザンバすら退けて帰還したと言う。
一小隊長としては賛美の声すら上がるだろう。
「ふっ、そうですか」
ジゲンの返答にガイルは笑いながらそう言う。
なぜならジゲンがうっすらと笑みを見せたのはこの戦に来て初めてのことであったからだ。
「ガイル、邪推はいい、それよりジンが目を覚まし次第俺のところへ呼べ」
「了解しました」
ジンは周りの喧騒とまだ瞳を閉じていたい欲望を天秤にかけたが、周りがうるさすぎて目を開く。
そこには心配そうにジンの顔を覗き込む小隊メンバーだった。
「「「「隊長!」」」」
小隊全員がジンが目が覚めたのを確認して声を上げる。
「おお、そうか生き残れたか」
ジンはそう言うと薄く笑う。
「隊長のおかげだよ」
トールがそう言うとジンは、包帯が巻かれた身体を確認しながらゆっくりと体を起こす。
「そんなことはないだろ、一人一人がやれることをやった結果だ」
「だが、隊長がいなければ間違いなく全滅していた」
ダイナがジンの身体を支えながらそう言う。
「そうか......」
ジンは正直達成感など一つもなかったがそう言ってくれる仲間がいることに少しだけ胸がすく気がした。
「ジン小隊長はいるか?」
するとジンを呼ぶ声がしてジンがそれに反応する。
「俺がジンだが」
ボロボロのジンを見て探していた兵が近くに寄ってくる。
「ジン小隊長でお間違いないですか?」
「ああ」
「団長がお呼びです」
「団長......わかった、道案内を任せられるか?」
(親父殿が?)
「隊長!」
ジンがゆっくりと立ち上がると足に力が入らず少しよろける、ミシェルがそれを支える。
「大丈夫だ」
ジンはすぐに自分の足に力を入れる。
「また、すぐ戻ってくる」
そう言ってジンは兵に連れられて救護室を出るのだった。




