会話
ジン達は本体に合流するために森林を大きく迂回した地点を進行していた。
「隊長ここまで迂回する意味はあったんでしょうか?」
トールの問いにジンは額に滲んだ汗を拭いながら答える。
「少し露骨かもしれないけどもし接敵でもしようもんなら俺たちに戦う力はほとんど残っていないからね」
そう言うジンは自分の後ろ振り返る、つられて振り返るトールは自分たち第十七小隊以外の兵は疲労困憊であることを改めて認識する。
「さて、もう日が沈む明日には合流したいし今日はここで休もう。見張りは昨日同様必要ないよ」
ジン達がいる地点よりだいぶ離れたところから戦争の音を感じながら皆が腰を下ろす。
しばらくそうした後にジンは周りを見渡すが皆一様に眠れない様子だった。
運良くここまでくる途中に湖とは言えないまでも水場があったために水分の補給はできていたが丸一日以上何も口にしていない兵達は皆同様に空腹感で悩まされていた。
「なぁ、みんなどうせ眠れないなら少し話でもしないか?」
ジンはそう言うとまずは第十七小隊の面々に顔を向ける。
「君達がなんで騎士団に入ったか教えてよ」
ジンにそう言われた第十七小隊の面々は顔を見合わせてから少し笑って話し始める。
「トールとダリルとは出身が一緒でザーラって村の出身なんです。その腐れ縁で、みんなで騎士団に入ろうって話になったんですよ」
まずはダイナが話し始める。
「ダリルは小さい時からこんな性格でさ。村に好きな女の子がいるんだけど意地悪で気を引く飛んだアホなんだよね」
「うるせー」
ダイナの話にトールが乗りダリルが脇を小突く。
「でも、俺はミラは君に気があるとは思うけどね」
ダイナの言葉にダリルはまんざらでもない反応をする。
「へぇ、いいね!ダリルはなんとなく兄貴分なところがありそうだとは思っていたよ」
ジンがそう言うとダリルは更に照れたようにトールの背中をバシン!と叩く。
「なんで僕が叩かれるのさ!?」
ジンはそれを見て笑うと次はガオンに話を振る。
「ガオンは?」
「俺は好きな子がいて……それで......その子を追いかけて入った」
短く言うガオンだがその視線の先にはミシェルが映っており皆一様にわかりやす!という反応をする。
わかっていないには本人だけだった。
「なるほどね、ミシェルはどうなんだい?」
「私は、女だからってバカにする男どもを見返してやりたくて入ったかな」
照れ臭そうに言うミシェルにガオンがいの一番に反応する。
「それは男どもが悪い!」
「お前もその男どもの一人かもしれんぞ?」
ダリルの余計な一言にガオンは睨むことで抗議をする。
それを見て面白かったのかダイナとトールは笑いを堪える。
「くくく、それで?隊長がどうして騎士団に?」
ダイナが一通り笑いを堪えるとジンにそう聞く、ジンは聞かれた質問に少し考えてから喋りだす。
「心から守りたい人達がいて、その人達を守る方法がこれしかないと思ったから、ってのはまぁあるけれど.......一番はそうだな、憧れたんだよね」
「憧れた?」
「ああ、ある剣士に心の底から憧れてね、あんな背中になりたくてこの道に進むって決めた」
「へぇ、隊長が憧れるってんだからその人はただモンじゃねーな」
ダリルが笑いながらそう言うとジンは年相応に顔を輝かせていることに一同は新鮮な気持ちになる。
「でもまぁ、守りたいってのはみんな思ってると思うよ」
トールがそう言うと聞き耳を立てていた皆が心の中で守りたい人達を思い出す。
「そうだね、だから俺たちは生き残らなきゃいけない、ここまで俺たちを守ってくれていた人のために、これから俺たちが守らなきゃいけない人たちのために」
「隊長はまだ守られてていい歳だけどな」
ジンがそう言うと、ダリルがツッコミを入れて笑いが起こる。
「さて、ほかのみんなも聞かせてよ。別に騎士団どうこうとかじゃなくさ!他愛無い話をしようよ」
そういうジンの顔には戦闘中の擦り切れるような雰囲気はなくただただ会話を楽しみたいという印象にほかの兵達も集まってきて各々いろんな話をする。
この時ばかりはみんな疲れを忘れ、空腹を忘れて好き勝手話をした、自分たちが生きているんだ!とそう伝え合うために。
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