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ダーズ荒野最前線〈二〉

 ジン達は少しずつ右へと流れながら小隊規模の兵を拾い前進していた。

 最初は一緒にこいと言っても文句を言う他の部隊だったがジンの常人ならざる剣技に呆気に取られすぐに文句を言わず従う。


「嘘だろ」


 なかなか深くまで斬り込んだジンは周りを一瞬確認するとつぶやく。


「全体円形になって一瞬時間を稼げ!ダリル肩貸せ!」


「あん?!」


 急に肩を貸せと言われたダリルは困惑するが、すぐに意味を理解した。

 ジンが自分の肩に乗ってきたからだ。


「まずいな」


 急に自分の肩に仁王立ちするジンにダリルは怒る。


「てめー!なにやってんだ!」


「すまん、俺の身長じゃ周りがなんとなくでしか見えなくてな、肩を借りた」


 ダリルの肩から飛び降りたジンは謝る。

 ダリルは百九十センチ近くの大男でありジンは十三歳にしては長身だが百五十弱であったために周りが見えなかったのだ。


「それよりもまずいことになった」


「どういうことですか?」


 いち早くトールがジンの表情を見て聞き返す。


「右翼全体が後退していく」


 ジンが後方を確認するともうすでにジン達と後方はだいぶ距離ができてしまっていた。


「!?、そんなバカな!まだ他の味方だって前進していますよ?」


 周りを見ればちらほらと自軍の鎧に身を包んだ兵士達が戦っている。


「どうやら指揮系統に問題があったか」


 ジンの読みは正しかった。

 激戦が始まってすぐに指揮官と補佐が流れ矢で死んだ。

 全体は次の指揮官に指揮が移動するまでに混乱もあり時間を要した。

 この時間は情報が錯綜さくそうするには十分な時間だった。

 その結果、次の指揮官に指揮権が移動して情報を集めた時入り乱れる情報にどれが定かであるかわからなかった指揮官は右翼全体を後退させたのだ。


「だったら何で伝令が来ない!」


「どうやら混戦になってる最前線には伝令は届かなかったらしいな」


「どうやらって、俺たちはここで見殺しかよ!」


 怒りに任せて叫ぶダリルに第十七小隊と途中拾ってきた兵士から動揺を感じるジン。


「仕方ない、これ以上ここで孤立するのは本当に捨て駒になりかねない、引くぞ」


「引くと言ってもここは最前線です!

右翼本陣の援護もなしに引くのは容易なことでは」


 トールの指摘にジンは頷くがそれでもそれ以外の打開策はなかった。


「いいか、できるだけ部隊を拾いながら撤退。右翼本陣に合流する」


 ジンがそういうと他の兵士から文句が出る。


「待ってくれよ!俺らが死ぬかどうかって時に何で他の部隊の世話もしなきゃいけねーんだ!」


「いいか、まだ敵さんに知られちゃいないが、敵には右翼本陣が一時撤退したことが大々的に知られればこの最前線は掃討される、できるだけ多い方がいい、後ろを突くことの容易さは、蟻を捕まえるようなもんだからな」


 ジンの発言に兵士は押し黙ると意向に従うように頷く。

 彼も理解したのだ。本陣の援護なしに引くということは無防備な背中を自分達で守らなければいけないということだ。だったら的を少しでも多くしようと考えていると理解したのだ。


「このままここにいても、どうせくたばる。だったら自分の運信じて走るしかねーだろ」


「中央本陣に合流すればいいのでは?」


 トールが最もな発言をするがジンはそれに反論する。


「どうやら中央は左翼右翼と比べて相当後方にいる、この大規模な陣形は右翼と左翼で中央を孤立させる陣形だ、右翼が後退すればこの作戦は成り立たねー。多分この撤退は右翼の独断によるものだ」


「そんなことって」


「言いたいことはわかるがそれは後でいい!今は時を争う!いくぞ!」


 ジンはそう言うとすぐに撤退の指示を出すのだった。

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