長い一日の始まり
「旦那、どうやらハズレだったぽいな」
「そのようだな、やはり出てこんか」
ジゲンとデイダラはあたり一面真っ赤に染まった荒野で話していた。
そこには黒い甲冑に身を包んだ死体がゴロゴロと転がっていた。
デイダラは血のついた刀を振るうと鞘に戻す。
「まぁ二万だからね、名前も変えてるだろうし」
「すまんな」
「いいよ、俺っちからしてみれば帝国にいるって情報だけでも一攫千金さ」
「そうか」
「それよりも流石にやばいね」
「ああ、今日がもったのは奇跡に近いな」
「明日はさらにやばいだろーねぇ」
「全く骨が折れる」
「よく言うよ、俺っちよりはしゃいでたくせに」
「それを言うか」
ジゲンとデイダラは二人で笑い合うと日が沈み引いて行く兵を睨みつける。
「奴ら挟み撃ちにされてるってのに余裕だね」
「それはそうだろう、挟み撃ちとは言っても白虎の連中はタイランから一歩も出ない奴らからすればわしらなど水鉄砲での挟み撃ちしてるに過ぎんのだからな。その場にドンと構えてればいいだけだ」
「はぁあ、やんなるね!いくら刀の腕を磨いたって数には勝てねーってか」
「そうでもないさ、救国の将軍殿」
「やめてくれよ、ここに比べればどこの死地もチャンバラさ」
「違いないな」
「さて明日に備えて寝ますかね」
そう言うとデイダラはプラプラとしながら本体へ下がって行く。
青龍騎士団はダーズ荒野のど真ん中で孤立しているが、帝国の兵はここ数日の夜戦の結果から攻めて来ることはなかった。
完全に日が登ったころに青龍騎士団残滅を目標に帝国兵二万が動き出す。
そして同じ日の何時間か前、夜明けと共にデイブンから援軍二千が出撃、この中にジンとテンゼンを抜いた三十名が紛れ込んでいた。
「隊長、本当大丈夫かな?」
「トール、いつまでうだうだ言ってんなどうせやらなきゃみんな死ぬんだ、やってもらわなきゃならねーよ」
「ダリルはなんでそういつも能天気なのさ!」
「声がでけーよ!タコスケ!別に能天気ってわけじゃねーさ」
「ならなんだって言うんだよ」
「バカがよぉ、信じねーでどうすんだよ、あの小せー背中に俺らの命背負ってもらってんだろ?だったら信じるかねーだろうが」
「ぐっ」
ダリルの真っ直ぐとした目と話にトールは自分がひどく情けなく思い、下を向く。
「今は信じて進め。隊長がマジでやべえってなったらこの命投げ打って救えばいいだけの話だよ」
「ダリルってさたまにかっこいいの嫌になるよ」
「たまには余計だろう?!」
トールとダリルに話を聞きながら周りのジン中隊も心に決める。
一度失った命を救ってもらった恩人であり自分たちの隊長、さらには齢十二の子供だ。その命守れるなら自分など惜しくはないと。
援軍は半日の道のりをぞろぞろと進む。
等々動き出す、このタイラン防衛戦が始まってから一番長い一日が。




