油断
ジンの作戦は着々と進んでいた。
帝国兵への夜襲は成功し兵糧を焼くことに成功、その後点々と配置された兵糧を襲撃することにも多くの犠牲を出したが成功していた。
「団長、バドス大隊壊滅しました。右翼が押されています」
「そうか、ダンベ行ってやれ」
「御意」
「たくっ、先に逝っちまったかよ、あの猫背め」
そして今、青龍騎士団は帝国兵ニ万と正面から対峙していた。
「それにしても、団長二万とは正面から見るとすごいですね」
「ああ、わしも初めて見るな荒野一面人だらけとはなんとも蟻の大群みたいだな」
「おいおい旦那、そんな感想はいいんだよ、俺はいつんなったら出られるんだ?」
「ああ、すまんなデイダラこんな死地に招いちまって」
「いいさ、俺っちの目的のためなら死地だろうと地獄だろうと、あらよいさってね」
「そうか、なら行くか」
「お?」
「帝国の軟弱者じゃ落としきれねー状況に業を煮やして......ほれきた」
「団長!黒い甲冑に身を包んだ騎兵部隊が進軍してきます!」
「デイダラ、いくぞ」
「あそこにいんのか?」
「自分の目で確かめた方が早いだろう」
「たしかし!行くかぁあああ!」
(ジン、死ぬなよ)
青龍騎士団本隊は二万に対して、四千で戦線を支えていた。
一方ジンは。
「ねぇ、隊長?」
「なんだ」
「これいけるの?」
「トールはビビリすぎだよ」
「だけどさ」
ジン達は今帝国兵の甲冑を着てデイブンの碧城の前までやってきていた。
「大丈夫だ、堂々としていろバレやしない」
門の前まで行くと見張りの兵が上から声をかけてくる。
「その者!どこの所属だ!」
「第四師団所属のファーストだ!従軍中にザンバ将軍より密命を受けた!」
間髪入れずに答えたのはダイナだった。
「そうか!入れ!」
そう言うと門が音を立てて開く。
「おいおい、なんでこれで通れるんだよ」
「前線に三万も居て後方に敵兵がスパイとして堂々と正面から入るなんて思ってもいないんだよ」
「だからって通すか?」
「通すさ、人間は油断てやつに思ってるよりも弱い生き物だ」
ジンはそう言うと堂々とダイナの後についてデイブンへと入っていく。それに連れられてシンの中隊二八名とプラス一名が後に続く。
「いいか、入ったら各員すぐに行動しろ。ダイナお前は頃合いを見て離脱だ」
「「「「「了解」」」」」
全員が頷くとジンはすぐに前を向くのだった。
ジン達は入ってから怪しまれず進むことができると判断すると少しずつ散開して行く。結局残ったのは十人にも満たない数だった。
「何か少なくなっていないか?」
「ああ、あいつらはこの密命には関係ないからな少し休養を与えてやったんだ」
ダイナが予め考えて置いた答えを返答すると道案内の兵はそうかと頷く。
その反応に人間やろうと思えばやれるんだなとダイナは思う。
「さて、プルチル様はあの奥だ、俺が言伝を伝えてくるからここで待っていろ」
「了解した」
ダイナは言われた通りその場で待っていると道案内の兵がすぐに戻ってきた。
「来い」
ダイナはその兵の後をついて行く。
「お前が前線から密命を受けた兵か?」
「はっ!そうであります!」
「ふむ、それで密命とは」
「はっ!報告します!敵軍はタイランとダーズ荒野での挟み撃ちに出た模様ですが数日も保たないでしょう!ですがザンバ将軍が念のため援軍を要請するとのこと!」
「なるほど、相手が挟み撃ちならこっちも挟み撃ちと」
プルチル様と呼ばれた太った男は納得したように頷く。
「して、それはなぜ密命なのだ?」
「は?」
「ん?」
「あ、いえ!私にはわかりません!ザンバ将軍がこれは密命で伝えよと!もし伝わればプルチル様なら気付くとおっしゃっていました!」
「む?そうか、わかった下がって良い」
「はっ!」
ダイナはジンに習った帝国式の敬礼を取ると出口へと向かう。
「少し待て」
そこで呼び止められたため固まるダイナは少し震える声でなんでしょうかと振り返る。
「其方も疲れたであろう、ゆっくりと休養を取れ」
「はっ!ありがとうございます!」
こうしてなんとか一命を取り留めたダイナであった。




