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六、最後の奈良の旅 その1

このところしばらく沙希と会っていなかった私は

一日も早く会いたい気持ちになっていた。

だから「奈良で会いたい」という

彼女の言葉どおりにするため

かなり無理をして奈良行きの段取りをしたので、

奈良に泊まる翌日は朝早くの新幹線で戻らなければならない

スケジュールになってしまったのであるが、

どうしても会いたい私はそれでもいいと思っていた。

今回の彼女の希望は時間もあまりないこともあり、

奈良公園や奈良町あたりでゆっくりと過ごすことであった。


季節は冬になっていた。

近鉄奈良駅で待ち合わせた時の彼女は

いつもと同じような感じで微笑みかけてくれたし、

彼女の好きな柿の葉寿司で

昼食をとりながら

今日の午後に回るところの説明をしている時も

彼女の方はとりわけ深刻な話を

したそうな顔をしていなかったので私はほっとしていた。

その日は幸い天気も良く

わりあい過ごしやすい天候であったので

私たちは東大寺の方へ向った。


大仏殿に向かって歩き、

法華堂の方へ向おうとすると

彼女は先に戒壇院に行きたいと言った。

そこは彼女と初めて奈良に来た日に入ったお堂である。

冬の平日のお堂の中はひっそりとして

彼女はすぐに広目天の前に行った。

彼女は尊天と話をしているようであった。

私は10年前の彼女の姿を思い出していた。

戒壇堂を出て、二月堂、法華堂とまわり、

春日大社で参拝して、

奈良町を歩いているともう冬の日差しは傾いていた。


ホテルに着いて夕食をしていても

沙希の表情は変わらず、

その後少し飲んでから部屋に戻って

彼女といつものことになったときも

それは変わらなかった。

そして私がもう一度シャワーを浴びて眠ろうと

ベッドを起き上がろうとした時に

彼女は上半身を起こして口を開いた。

彼女の豊かな二つの胸が揺れたのを見ながら

ぼんやり私は話を聞いていた。

しかし話は世間話でもなければ、

行為の後の睦言でもなかったのである。



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