無題
エピローグ
星の外側
世界は、誰も知らないまま続いていた。
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ゼロが消えてから、
十三年。
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新しい国境線。
新しい技術。
新しい争い。
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人類は、
相変わらずだった。
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だが。
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一つだけ、
変わったことがある。
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空。
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昔より。
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人々は、
空を見るようになった。
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宇宙を夢見るようになった。
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星の向こうへ、
何かがあると信じるようになった。
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もちろん。
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それは、
本当ではない。
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空の向こうに、
宇宙など存在しない。
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惑星も。
銀河も。
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全部。
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“世界を自然に見せるための景色”
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本当の世界は、
もっと狭く。
もっと歪で。
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人類が理解できる構造ではない。
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だが。
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それでも。
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人類は、
空を見上げる。
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夢を見る。
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その行為だけは、
何度世界を繰り返しても変わらなかった。
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シオン封魔国。
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山奥の小さな酒場。
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ヤクモは、
相変わらず酒を飲んでいた。
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見た目は変わらない。
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十三年。
百年。
千年。
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多分、
もっと。
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彼だけ、
時間から取り残されている。
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酒場の店主が笑う。
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「また星見てんのか」
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ヤクモは、
窓の外を見る。
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夜空。
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星。
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綺麗だ。
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作り物にしては。
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「まぁねぇ」
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小さく笑う。
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その時。
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空で。
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ほんの一瞬だけ。
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金色の光が、
流れた。
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ヤクモの手が止まる。
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誰も気づかない。
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だが。
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ヤクモだけは、
静かに目を細めた。
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「……おや」
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風が吹く。
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その瞬間。
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酒場の灯りが、
一瞬だけ揺れる。
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世界が、
ほんの僅か軋む。
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本当に。
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一瞬だけ。
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ヤクモは、
静かに笑った。
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懐かしそうに。
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呆れたように。
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そして。
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どこか、
少し嬉しそうに。
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「まだ、
見てんのかい」
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誰も返事はしない。
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だが。
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窓の外。
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夜空の星が、
ほんの少しだけ増えた気がした。
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遠い。
遠い。
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世界の外側で。
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何かが、
静かに笑った。




